19歳の「特定少年」,殺人罪などで起訴,少年法改正で多くのメディアが実名報道

山梨県甲府市で50代の夫婦が殺害され,住宅が放火された事件で,4月8日,19歳の男が殺人や放火などの罪で起訴された。同月1日に施行された改正少年法で,18・19歳の「特定少年」の起訴後の実名報道が可能になり,多くのメディアが被告の男を実名で報道した。

起訴状などでは,男は2021年10月の未明,甲府市内の住宅に侵入し,50代の夫婦をナイフで殺害したうえ,次女にけがを負わせ,住宅に火を放って全焼させた罪に問われている。

男の起訴を受けて,テレビでは,NHKと在京キー5局がいずれも実名で報道し,民放の多くは顔写真も放送した。新聞は,朝日,毎日,読売,産経,日経が実名で報じ,産経は顔写真も掲載した。実名報道にあたり,各社とも事件の重大性や社会的な影響を考慮した,などの“おことわり”をつけていた。一方,東京新聞は,「健全育成を目的とした少年法の理念を尊重」し「法の改正後もこの考え方(筆者注:匿名報道)を原則維持します」と匿名で報じていた。

各社のウェブサイトでの報道は,顔写真の掲載を見送ったり,実名を報じた記事の公開範囲を限定したりするなど,放送・紙面とネットで対応を分けた社もみられた。

事件・事故の報道では,各社とも実名報道を原則としている。真実性の担保,国民の「知る権利」への奉仕,というのだが,メディアへの信頼の低下が叫ばれる中,そうした主張だけでは,視聴者・読者の理解を得るのは難しいだろう。「特定少年」の実名報道は今なおさまざまな議論があり,より丁寧な説明が求められている。

柳澤伊佐男

※NHKサイトを離れます