EU(欧州連合)は,7月15日,加盟国のハンガリーとポーランドに対し,性的少数者の基本的権利が侵害されているとして司法裁判所への提訴も視野に法的な措置を開始した。
このうちハンガリーでは,6月,18歳未満に同性愛や性転換など,“出生時の性別から逸脱することを促す”コンテンツの提供を禁止する法案が議会で可決されていたが,これに対しEU議会は7月8日,非難決議を採択した。さらにEUの執行機関である欧州委員会は,コンテンツの自由な流通を定めた「視聴覚メディアサービス指令」や市民の基本的権利を定めた憲章などに違反しているとして法的措置に踏み切った。
ハンガリーでは,2020年12月に憲法が改正され,同性カップルが養子を迎えることが事実上できなくなるなどの動きが続き,2022年に予定される議会選挙に向けて,オルバン首相が保守層の支持を取り込もうとしているとの見方もある。商業大手RTL Klubは,「内容によってはファミリー向けの人気番組もプライムタイムに放送できなくなるおそれがある」と述べるなど,懸念が広がっている。
一方,ポーランドでは,2019年から複数の自治体が「LGBTフリーゾーン」を宣言し,LGBT排除を打ち出している。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は,「EUは,誰を愛するか,年齢,民族,政治的見解,信仰を理由に,一部の人が汚名を着せられることを決して許さない」と述べ,両国が2か月以内に返答しない場合にはEU司法裁判所への提訴も辞さない構えを示した。