取材中の入社1年目記者逮捕めぐる,北海道新聞の検証記事に批判集中

北海道新聞の入社1年目の記者が6月22日,旭川医科大学の学長選考会議を取材中,立ち入り禁止となっていた大学の建物に入った疑いで大学職員に常人逮捕された。この問題で同社は7月7日の朝刊と電子版に「社内調査報告」とした検証記事を掲載。建物に入らないよう求めた大学側の要請が現場の記者たちに十分共有されていなかったことや,建物に入るよう指示された記者が自分の判断でスマートフォンを使い会議の様子をドアの隙間から無断で録音したこと,逮捕に至った際のやりとりなどを説明した。そのうえで,情報共有や取材手法,記者教育の点で問題があったとし,指導すべき上司の関与が不十分だったとした。

これに対し,メディア関係者が記事やSNSで次々と批判の声を上げた。新聞労連は同月12日に声明を発表,「現場に責任を押し付けるばかりか,自らの責任逃れが滲んでいます」「このような不十分な中身の報告書を看過できません」と非難した。とりわけ強調されたのは,業務指示に従い取材中に逮捕された入社直後の記者を,社として守ろうという姿勢が欠けているという指摘だ。北海道新聞だけ記者を実名報道したことや,検証記事が電子版では会員登録しないと読めないことも批判に輪をかけた。一方,新聞労連は,法を侵してまで取材するのはおかしいという意見は承知しているとしたうえで,過剰な取材規制が背景にあったことは見落とせない,ともした。

寄せられた批判に北海道新聞はどう答えるのか。問われているのはメディアのありようそのものである。

上杉慎一

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