米軍「星条旗新聞」紆余曲折の末,存続決まる

長い歴史を持つ米軍のStars and Stripes(星条旗新聞)は廃刊される方針だったが,議会や大統領の反対で存続が決まった。9月10日,Military.comが伝えた。

星条旗新聞は1860年代の南北戦争中に発刊され,政府から予算を受けるものの編集権は独立し,世界中に展開する米軍関係者に紙面とオンラインで届けられている。しかし,2020年2月,国防総省は予算の配分見直しなどを理由に同年9月末での廃刊を発表した。同紙にかかる費用は,年間の国防予算7,400億ドル(約81兆円)のうち,1,550万ドル(約17億円)。この発表に対して,超党派の上院議員15人がエスパー国防長官に「予算は微々たるもの。それ以上に,米国の出版・言論の自由を体現する歴史的にも重要な新聞だ」と存続を求めた。

一方,トランプ大統領もTwitterで自分の政権では廃刊は認めないと発信したが,これについてNew York Timesなどは,軍関係者の歓心を買うためではないかと報じた。トランプ氏は2018年のフランス訪問の際,第1次世界大戦で戦死した米軍兵士が眠る墓地を訪れることを拒否し,「彼らは負け犬だ」と発言したと最近報じられたことで軍関係者から批判を受け,大統領選挙への影響を懸念していた。これまでメディアを「敵」と公言してきた大統領が,政府や軍を批判的に報道することもある星条旗新聞を突然,擁護することには違和感があると,現地メディアは伝えている。結果として新聞が生き残ることについて,同紙の元記者は「最前線で紙の新聞を読んでいる兵士に,外国勢力は妨害電波を出したりネット干渉したりできない」と述べた。

柴田 厚

※NHKサイトを離れます