NHK広島の企画「ひろしまタイムライン」,"差別を助長"との批判を受け,謝罪

「日本が戦争をしていた1945年にもしSNSがあったら」という設定でNHK広島放送局が企画した「1945ひろしまタイムライン」をめぐり,企画の公式アカウントによるTwitterへの投稿が「差別を助長している」などと,多数の批判が寄せられた。同局は8月24日,「配慮が不十分だった」と「おわび」の文書をウェブサイトに掲載した。

「1945ひろしまタイムライン」は,若い世代に身近なメディアであるSNSを使い,戦争や原爆に関心を持ってもらおうと企画された。現代の高校生らが被爆者の日記・手記などを参考に当時の混乱した状況を「追体験」「想像」し,「自分たちの言葉」で,2020年3月から日々ツイートしている。今回,問題となったのは,「当時の中学生が見聞きしたことに基づいて」とNHK が主張する8月20日のツイートで,列車内で「朝鮮人の群衆」が暴力的な振る舞いをしたなどと記されている。これに対し,日本による植民地支配など,当時の「朝鮮人」が置かれた状況について説明がないのは差別を助長すると,研究者や市民から多くの批判や抗議が寄せられた。そうした懸念が現実化し,韓国人や朝鮮人に対する差別的なリプライも多くみられた。また,個々のツイートに“日記原文”との違いが明記されていないため,歴史的資料の扱いとしては適切でないと,企画自体の限界を指摘する声もあがっている。

戦争や原爆について,リアリティーをもって考えてもらおうという意欲的な取り組みが,なぜこのような事態をもたらしたのか。丁寧な検証とさらなる改善が必要だろう。

谷 卓生

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