三浦春馬さん死亡報道で,WHOの「自殺報道ガイドライン」違反相次ぐ

7月18日,若手の人気俳優,三浦春馬さん(30)が死亡したニュースは,テレビや新聞,ネットメディアで大きく報じられた。その伝え方をめぐって,自殺の連鎖を防ぐためにWHO(世界保健機関)が作成した「自殺報道ガイドライン」に違反するものが相次いだ。

WHOの「ガイドライン」は2000年に公表され,厚生労働省のウェブサイトにも翻訳が掲載されている。その中では,メディアが「やってはいけないこと」として,「自殺の報道記事を目立つように配置しない」「過度に繰り返さない」「自殺に用いた手段について明確に表現しない」「自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えない」ことなどが示されている。しかし,各社の第一報は,これらの点に配慮しない形の報道が数多くみられた。また,「やるべきこと」のトップに示されている「どこに支援を求めるか」という「相談窓口」に関する情報を伝えなかったメディアもあった。

こうした事態を受け,自殺の予防に努める民間団体「いのち支える自殺対策推進センター」は,同日,メディア各社に「ガイドライン」をふまえた報道に徹するよう呼びかけた。こうした動きもあって,その後,抑制した報道に変わったメディアがある一方,センセーショナルな見出しをつけるスポーツ紙など,報道を「過度に繰り返」す状況もみられた。

今回の一連の報道で,「模倣自殺」を防ぐための「ガイドライン」の趣旨がメディアに十分浸透していないことが改めて露呈した。各メディアはこの状況を深刻に受け止め,改善策を講ずるべきだと考える。

谷 卓生

※NHKサイトを離れます