NHK,「差別を助長する」との批判を受け,"米抗議デモ解説アニメ"を削除し謝罪

NHKは,6月9日,国際ニュース番組『これでわかった!世界のいま』(7日放送)で使用したCGアニメーションについて,描き方が配慮に欠けたものだったとして,同日夜の『ニュース7』やウェブサイトで謝罪するとともに,番組公式アカウントでTwitterに投稿したアニメを削除,番組の見逃し配信を停止した。

アニメは,アメリカで拡大する黒人差別への抗議デモに関する特集の中で放送された。黒人が置かれた厳しい状況を経済格差のデータをもとに約1分20秒の動画にまとめたものだが,格差への不満からデモ中に暴れているような筋骨隆々の黒人男性の姿を描いたことなどに,「黒人の描写に偏見がある」「差別を助長する」といった声がSNSなどで上がり,ヤング駐日米国臨時代理大使も「侮辱的で無神経」とツイートするなど,批判が相次いだ。

NHKは14日放送の同番組で「黒人の描き方については,人権や多様性に対する認識」が甘く,「尊厳を傷つけてしまうこと」になったと改めて謝罪したが,アメリカ研究者などからは,アニメだけでなく,放送内容自体がデモの実態や背景にある制度的な「人種主義」を正確に伝えていない,問題の理解を歪めている,との抗議や批判が寄せられている。

今回の問題を受けてNHKは,人種や民族などのイメージ映像や画像は安易に作成せず,差別的な表現にならないよう注意を払うことなどを職員・スタッフらに指示した。番組内容のさらなる検証を行い,こうした指示がどのように実行されるかを,視聴者に十分説明していく必要があると考える。

谷 卓生

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