比大統領と対立の商業放送最大手が放送停止

フィリピンの商業放送最大手ABS-CBNは,国家電気通信委員会(NTC)から5月5日にテレビ・ラジオの放送停止命令を受け,翌6日に放送を停止した。同局が以前からドゥテルテ政権に批判的な報道を行い,大統領も威嚇めいた発言を繰り返していたことなどから,命令は懲罰的だとして,人権団体や野党議員から批判の声が上がっている。

停止の直接の理由は放送免許の期限切れ。議会下院は更新に必要な法案について審議していたが,新型コロナウイルスの影響で停滞し,審議終了前に免許が切れた。政府は以前,免許が切れても暫定的に放送を認める姿勢を示していただけに,衝撃が広がった。同局は7日,命令の一時差し止めを最高裁に申し立てた。ネット配信は停止命令を受けていない。

今回の措置に対し,アムネスティ・インターナショナルのフィリピン支部は声明を発表し,命令は「メディアの自由への非道な攻撃」と非難した。また,野党議員からは,「議会を無視した恣しい意的命令だ」との意見が出た。さらに,市民が,情報源と娯楽を奪われたことに対する憤りをネット上に多数投稿した。

下院は13日,緊急議会を開き,ABS-CBNに,当面5か月間の暫定放送許可を与えることを決めた。今後上院での審議・可決を経て,大統領が法案に署名すれば,放送再開が可能となる。大統領府の報道官は,暫定的放送再開という手段は,現時点では問題解決に向けた最良の選択肢だとし,大統領が署名を拒否しない意向であることを明らかにした。

地元メディアは,暫定的放送の再開はほぼ確実な状況だと報じている。

佐々木英基

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