"ツイッターデモ"の歴史的高まりで,「検察庁法改正案」国会での成立見送り

"ツイッターデモ"とも呼ばれた抗議が相次いだ検察庁法改正案について,政府・与党は5月18日,通常国会での成立を見送ることを決めた。識者は,ネットの世論が現実の政治を動かしたのは日本では初めてと指摘する。

改正案は検察官の定年延長を可能にするもので,「検事長らの定年延長の判断を内閣や大臣にゆだね,検察の中立性や独立性を脅かす」などと反対の声が出ていた。こうした中,1人の会社員がTwitterに「#検察庁法改正案に抗議します」と投稿したのがきっかけとなり,俳優の小泉今日子さんなど著名人を含む多くの人が,同様のハッシュタグをつけてツイート。これに多くの人がquot;いいね"やリツイートで反応し,長期間「トレンド入り」した。こうした動きをテレビのニュース番組や新聞などが取り上げたことでより広く知られるようになり,抗議のツイートはさらに増えた。

このネット世論の高まりに野党が反応。国会審議でTwitterでの抗議を取り上げて,法案撤回を迫り,改正見送りにつながった。この間,現在のテレビ報道に飽き足らない映像制作集団「Choose Life Project」が,政治家や有識者を集めた「討論番組」を連日ネットで配信。その内容を既存メディアが伝えることもたびたびあり,大きな影響をもたらした。

一連のネット世論は表層的だと批判する声も一部にはある。しかし,ネットを通じて誰でも声を上げ,政治や既存メディアにそのときどきの民意を伝えるquot;新しい回路"が実現したことは画期的で,メディアのこれからを考えるうえで肯定的に評価したい。

谷 卓生

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