極右政権誕生で変質するブラジル公共放送

南米ブラジルでは2019年1月に元軍人のボルソナロ大統領が率いる新政権が発足したが,それに伴い,公共放送が大きく変質しようとしている。

ブラジルの公共放送機関EBC(ブラジル・コミュニケーション会社)は4月10日,同局が運営するテレビチャンネルTV Brasilと連邦政府の広報テレビチャンネルNBRを統合し,新編成のTV Brasilとして放送を開始した。新チャンネルでは,大統領の動静を伝えるニュースや軍の広報番組なども放送されることから,公共放送は政府の宣伝機関になるのではないかとの危惧の声が上がっている。

EBCは2007年,左派の労働者党(PT)政権下で,政治的・商業的圧力からは距離を置いたヨーロッパ型の公共放送の導入を目指して設立された。EBCは政府交付金や広告料などを財源に,TV Brasilのほか,複数のラジオ局や通信社なども運営している。しかし,EBCは左派政権下で設立されたこともあり,当初から左派の広報機関だと批判する声があったほか,巨額の政府予算を投入する割には視聴率が限定的で,予算の無駄遣いだとする批判も出ていた。

ボルソナロ大統領は,就任以前からEBCの解体や民営化を唱えるなどEBCに批判的だったが,今回,政府の放送と公共放送を統合することで,予算の削減と放送内容の改編の両方を一挙に実現したともいえる。しかし,ブラジルの公共放送法では,放送内容についてはEBCが政府から独立して自主的に決めることと規定されている。そのため,今回のチャンネル統合は違法だとして撤回を求める動きも出始めている。

斉藤正幸

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