漫画やアニメなどを無断でインターネットに公開する海賊版サイトの対策をめぐり,文部科学省の文化審議会は,2月13日,著作権侵害コンテンツをダウンロードした際の違法化の対象を,静止画や文章などすべての著作物に広げることを求める報告書をまとめた。
違法ダウンロードは,現在,音楽と映像が対象だが,全著作物を対象とすることについて,報告書は,著作物の被害実態などを踏まえ,一定程度の合理性が認められるとした。ただし,「被害実態等の評価についても様々な捉え方があり得る」などとして,法整備にあたっては,ユーザー保護などのために対象の範囲を設定することが望ましいとしている。
こうした動きに対し,著作権や個人情報保護など幅広い分野の専門家から反対や懸念の表明が相次いでいる。2月8日には,漫画家や研究者など約100人が国会内で反対集会を開催。日本マンガ学会会長で漫画家の竹宮惠子氏が,「資料を集めるための画像の保存が違法にならないか不安」などと訴えた。
報告書は,対策全般を検討する政府の有識者会議の要請を受けたものだが,肝心の有識者会議は,議論が紛糾しストップ状態。対策の1つである違法ダウンロードの対象拡大に注目が集まったが,問題になった「漫画村」のようなストリーミング配信は含まれない。一方,多くの人が日常的に行っている静止画の保存が著作権侵害で違法となる可能性もはらんでおり,文化審議会の報告書は,コンテンツの規制をめぐり,新たな問題を生み出した。