ベストセラー『君たちはどう生きるか』,ドラマ化で著者遺族が出版社に抗議

80年余り前に発表された文学作品で,2017年に刊行された漫画版と新装版がベストセラーになった『君たちはどう生きるか』。この作品が,著作権者(原作者・吉野源三郎の遺族)の許諾を得ずにドラマ化され,放送されたとして,遺族が出版元・マガジンハウスに抗議したことが,2月14日発売の週刊誌報道で明らかになった。

遺族が問題視したのは,2018年5月放送のTBS系のバラエティー番組『教えてもらう前と後』。この中で,思春期の少年が困難を乗り越えながら成長する作品のストーリーがドラマ化された。原作で雪合戦の場面を野球に変更するなど,一部に独自の演出も。番組を制作した毎日放送によると,ドラマ化にあたり,遺族への権利処理は,マガジンハウスがすると約束。その条件のもとで制作を進めたという。放送後,遺族から許諾していないと連絡を受けた際も同様の説明を行い,その後,毎日放送には遺族側からの連絡はないという。

放送局が書籍などをもとにドラマを制作する際,出版元が交渉窓口となっているために,著作権者の意思を直接確認できないケースはしばしばある。むろん,著作権者と出版社との契約内容を詮索することもできない。今回のように,放送局と出版社との合意があったにもかかわらず,放送後,著作権者から異議が出ることは,今後も十分にあり得るだろう。著作権者とのトラブルで再利用が難しくなり,番組を「お蔵入り」させないためにも,著作権者(原作者)の意思が番組制作者にしっかりと伝わる環境作りが改めて求められている。

大髙 崇

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