独連邦憲法裁判所,放送負担金制度に合憲判決

ドイツの連邦憲法裁判所は7月18日,受信機の有無にかかわらず,すべての世帯と事業所から「放送負担金」を徴収するドイツの公共放送の財源制度について,合憲であるとの判決を下した。ただし同裁判所は,別荘の所有者に負担金を別途課している点だけは違憲だとして,ドイツの放送行政を所管する16州に対し,2020年6月末までに共同で是正するよう求めた。

放送負担金制度については,2013年に制度が導入された直後から多数の提訴が行われ,これまで連邦行政裁判所や州の憲法裁判所などが合憲判決を出していたが,連邦憲法裁判所の今回の判決をもって,制度の合憲性が最終的に確認されたことになる。

連邦憲法裁は今回,4件の提訴をまとめて取り扱い,次のように論点を整理した。第1に,「放送負担金は税金であり,州にはそのような税金を導入する権限はない」とする訴え。第2に,「単身世帯も複数人からなる世帯も一律の額の負担金が課せられるのは,単身世帯の負担が大きく,憲法で保障された法のもとの平等に反する」とする訴え。第3に,「別荘の所有者に対して自宅とは別に別荘に対しても支払い義務を課すのは,平等の原則に反する」という訴え。最後に,「事業所の支払い義務について,事業所の従業員数と営業用の自動車の台数に応じて額が決められるのは,事業所と車の数が多い企業の負担が大きく,平等の原則に反する」という訴えである。

第1の訴えについて憲法裁は,ドイツの税法上,税金とは使途を決めずに徴収するもので,個々の公共サービスの対価ではないとしたうえで,放送負担金については,「公共放送のサービスを利用しようと思えばいつでもできる」という利益に対して受益者が支払う対価であり,それゆえ税金ではなく,州が立法権限を持つ公的な負担金であるとして,訴えを退けた。

第2の訴えについて,憲法裁は,単身世帯が複数人の世帯より1人あたりの負担は大きくなることを認めつつ,その格差は憲法の許容範囲内だとした。憲法裁はさらに,ドイツの公共放送は単身者が1人で負担する額に見合う価値のあるサービスを提供しているとし,負担は著しく不均衡にはなっていないとした。

他方,別荘の所有者が自宅とは別にもう1件分の支払いを課される点については,憲法裁は,公共放送のサービスは同時に1か所でしか利用できないにもかかわらず,2件分の対価徴収をすることは不平等で違憲であるとし,是正を求めた。

第4の訴えに関して,憲法裁は,事業所と営業用自動車はともに,住居と並んで公共放送のサービスを利用できる典型的な場所であり,事業所の所有者はそれによって事業に役立つ情報を入手したり,従業員や顧客に娯楽を提供するという,放送をプライベートで利用する場合とは異なる利益を得られる,とし,徴収対象にすることは正当だとした。そのうえで,別荘の場合と異なり,複数人による利用によって事業所の所有者の利益も増えると想定できるため,事業所数,従業員数,自動車の台数に応じた額の負担金を課すことは正当で,平等原則に違反していないとした。

公共放送のARD,ZDF,ドイチュラントラジオ,州政府の代表は,「放送負担金制度の合憲性が最高位の裁判所によって確定された」として判決を歓迎した。

杉内有介

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