最高裁,NHK受信料債権(基本権)で,20年の消滅時効を認めず

NHKの受信料が20年以上滞納された場合,民法168条1項前段の適用により消滅時効が完成し,受信料債権として請求できなくなるかどうかについて争われた訴訟で,2018年7月17日,最高裁は,受信料債権には同条項の規定は適用されないとの判断を示し,時効による消滅を否定した。

NHKの受信料は,放送法の規定により受信設備設置者とNHKとの間で締結される受信契約による受信料債権(基本権)に基づき,定期に発生する支分権として,定められた金額を支払うというもの。この定期に発生する支分権としての受信料債権の消滅時効については,2014年9月5日の最高裁判決で,民法169条により5年との判断が示されている。では,支分権のもととなる受信料債権(基本権)は時効で消滅するのかが本件で争われた点である。

本判決では,受信料債権は,一定の金銭を定期に給付させることを目的とする債権であり,定期金債権にあたるとしつつも,その消滅時効に関する民法168条1項前段「定期金の債権は,第一回の弁済期から二十年間行使しないときは,消滅する。」の適用を否定した。

仮に,同条項を適用するとした場合,受信契約を締結している者が将来生ずべき受信料の支払い義務についてまで免れることとなり,2017年12月6日に最高裁判決で示された,公共放送の財源を受信設備設置者に広く公平に負担させることによってまかなうため,受信契約の締結を義務づけた放送法の趣旨に反するというのが,その理由である。

山田 潔

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