スイス国民投票で,7割超が受信料制度廃止に反対

スイスでは3月4日,「受信料制度を廃止すべき」とする国民発議について是非を問う国民投票が行われ,国民の71.6%が発議を否決,またすべての州でも否決という結果になり,受信料制度の存続が決まった。

直接民主制のスイスでは,誰でも憲法改正案を提起できる国民発議の制度があり,10万人の署名を集めると国民投票が行われ,国民と州の過半数の賛成で可決となる。発議をした団体「No Billag」は,右派政党スイス国民党の若手議員が中心となり結成したもので,受信料制度は国民の自由を侵害するものだとして,「受信料の支払い義務を法律で定めてはならない」という条項を憲法に追加すべきと提起していた。一方,連邦政府は,「スイスの4つの公用語(ドイツ語,フランス語,イタリア語,ロマンシュ語)でサービスを行う公共放送SRG SSRを維持する手段は受信料しかない」と,受信料制度の存続を訴えていた。

スイスの現行の受信料制度では,テレビとラジオまたはパソコンを所有する世帯は,年額451.1スイスフラン(約5万円)の受信料を支払う義務がある。2019年からは,受信機の有無にかかわらず全世帯に支払い義務のある新制度に切り替わり,年額は365スイスフランに値下げされることが決まっていた。

マルシャンSRG SSR会長は,同日,投票結果を歓迎しつつも,「SRG SSRは変わらなければならない」とし,年間1億スイスフランの経費削減を行う,受信料収入の50%を報道番組に使う,国内映画・ドラマ制作への投資を増やす,などの施策を発表した。

杉内有介

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