国際放送をめぐって対立深める米・ロ

アメリカとロシアの2大国が,互いに相手国の国際放送機関を政府の意向を受けた「代理機関(Agent)」と位置づける動きをみせ,対立を深めている。

この問題は,アメリカ司法省が2017年9月に,ロシアのテレビ国際放送RTの米国内の関連会社などに対し,「外国代理人登録法(FARA)」に基づいてロシア政府の代理機関として登録することを要求したことに始まる。その背景には,2016年のアメリカ大統領選において,RTなどがロシア政府の意向に沿うように選挙に影響を及ぼしたとする情報当局の判断がある。代理機関として登録されると,外国政府との関係や財務内容などを公開する義務が生じる。RTは当初,米側の要求を拒否していたが,11月10日になって,登録を拒むと銀行口座凍結などの罰則が適用されかねないとして,やむなく登録に応じた。

しかし,この事態にロシア側は反発を強め,11月25日には,急遽「外国メディア登録法」を成立させ,ロシア政府が外国メディアを外国政府の代理機関と認定することができるようにした。これに先立ち,ロシア法務省は,アメリカの政府系国際放送機関のラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー(RFE/RL)やボイス・オブ・アメリカ(VOA)の現地支局などに対し,アメリカへの対抗措置として,アメリカ政府の代理機関と認定する可能性があることを通告していた。

この問題では,その後アメリカ議会がRTの記者証をはく奪し,ロシア議会もアメリカメディアの取材を禁止する措置を検討するなど,報復措置の連鎖が続いている。

斉藤正幸

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