米FCC,メディア所有の規制を大幅に緩和

米FCC(連邦通信委員会)は11月16日に開かれた委員会で,1社が同じ地域で新聞と放送局を所有することなどを禁じた1975年の"クロスオーナーシップ(相互所有)規制"の撤廃など,メディア所有に関する諸規制を緩和することを3対2の多数決で可決した。

これまでアメリカでは言論の多様性を確保するなどの目的で,同一市場でのテレビ局と新聞の相互所有や,テレビ局とラジオ局の相互所有が制限されてきたが,今後は,こうしたメディアの所有に関する規定や細かいルールが緩和される。今回の決定を受けて,FCCで多数を占める共和党系委員やNAB(全米放送事業者協会)は「メディアの経営改善と競争力の強化に規制緩和が不可欠だ」と歓迎している。しかし,民主党系委員を中心とする反対派は,地域のメディア企業の統合が容易になることで一部の大手メディア企業の寡占が進むことに懸念を示していて,トランプ大統領寄りのメディア企業Sinclair Broadcast Groupによる地上放送局の大型買収を実現させるとの政治的思惑が働いたのではないかと疑う声も出ている。

規制緩和に積極的なFCCのA.パイ委員長(共和党系)は「時代遅れの放送関連のルールをデジタル時代に即した内容にする」と意気込んでいて,12月の委員会でも全米で所有できるメディアの上限の引き上げや,オバマ政権下に導入された「インターネット中立性規則」の撤廃など,さらに規制の緩和を提案したい意向を示している。このため,アメリカではメディアのありようをめぐる議論が,通信事業者やインターネット業界も巻き込んで加熱することが予想される。

藤戸あや

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