英,BBC新理事会へガバナンス移行

2017年1月に発効した第9次特許状の下でBBCの統治システムが変更されることになり,4月3日,これまでの監督機関BBCトラストが廃止され,BBC内に新たに設置された理事会に監督機能が移行した。

BBC存続の基本法規に当たる特許状はほぼ10年ごとに更新され,そのたびにBBCの組織統治の枠組みも見直しの対象となる。前回の特許状では,BBC内部に設けられた監督機関BBCトラストと業務執行責任を担う執行役員会のツーボード制でガバナンスが行われたが,新特許状では,BBCトラストを廃止し,新たに,業務執行を監督する単一の理事会を設置する一方,外部の放送通信の規制監督機関Ofcom(Office of Communications)がBBCを規制するシステムに変更されることになった。

新理事会は,理事長を含む10人の非執行理事とBBC内部から会長を含む4人の執行理事の,合わせて14人で構成される。2016年10月からメンバーの選考が行われ,新理事長に,BBCのガバナンス改革案をまとめた金融界出身のクレメンティ氏が指名されホール氏がBBCの会長職を継続するなど,人選が進められてきた。

これまでに決まった新理事会のメンバーは以下の通りである。
〈理事長〉
デヴィッド・クレメンティ(元イングランド銀行副頭取)
〈会長〉
トニー・ホール(BBC会長)
〈非執行理事〉
サイモン・バーク(小売店経営)
タニ・グレイ・トンプソン(元パラリンピック選手)
イアン・ハーグリーブズ(元放送局勤務,カーディフ大学デジタル・エコノミー教授)
トム・イルビー(サイバーセキュリティー会社経営)
ニコラス・セロタ(テート美術館館長)
〈地域担当非執行理事〉
スコットランド:スティーブ・モリソン(制作プロダクション代表,エディンバラ大学学長)
イングランド:アシュリー・スティール(企業経営者)
ウェールズ:未定
北アイルランド:未定
〈BBC執行理事〉
アン・ブルフォード(BBC副会長)
ティム・デイビー(BBCワールドワイド社長)
ケン・マックアリー(BBC地域局担当局長)

BBC執行理事の人数が4人に限定されることになったため,だれが選ばれるのかが注目された。ホール会長とブルフォード副会長が理事会に入ることは事前に予想されていたが,有力候補とされていた報道局長のハーディング氏,ラジオ・教育局長のパーネル氏,コンテンツ局長のモア氏はいずれも選任から漏れた。しかし理事会の会合には定期的に出席でき,会長直属の局長という立場に変化はない。

また,ウェールズ担当の非執行理事については,政府メディア担当相が選定した候補を,ウェールズ議会が選考に地元の意見が反映されていないとして拒否権を発動し却下したため,調整が難航している。

任期については,ホール会長とブルフォード氏に対しては定められていないが,執行理事のうち,デイビー氏とマックアリー氏については2年となっている。その他の非執行理事は2~4年の任期となっている。

田中孝宜

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