STAP細胞のNスペ,「名誉毀損の人権侵害」

BPO放送人権委員会は2月10日,STAP細胞に関する論文を検証したNHKの番組について,「名誉毀損の人権侵害が認められる」と決定,再発防止に努めるよう「勧告」を出した。

この番組は2014年7月に放送された『NHKスペシャル調査報告 STAP細胞 不正の深層』で,論文を執筆した理化学研究所元研究員の小保方晴子氏が「極めて大きな人権侵害があった」とBPO人権委に申し立て,審理入りしていた。NHKは「申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論していた。

審理の結果,同委は「真実性・相当性が認められず」と判断,「名誉毀損の人権侵害が認められる」と決定した。判断について,「元留学生作製の細胞を申立人が何らかの不正行為により入手し,これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘したと受け取られる内容となっている点が問題」としている。

さらに「申立人を追跡し,エスカレーターの乗り口と降り口とから挟み撃ちにするようにしたなどの行為には放送倫理上の問題があった」と取材手法についても言及し,「過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し,再発防止に努めるよう勧告する」としている。

NHKが同委判断として最も重い人権侵害で勧告されたのはこれが初めて。NHKは「BPOの決定を真摯に受け止めますが,番組は関係者への取材を尽くし,客観的な事実を積み上げ表現にも配慮しながら制作したもので,人権を侵害したものではないと考えます」としている。

関谷道雄

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