香港,行方不明だった書店幹部が「テレビでの罪の“自白”は強制されたもの」と表明

香港で中国政府に批判的な書籍を発行する書店の幹部5人が,2015年10月から相次いで行方不明になった事件で,8か月ぶりに香港に戻った林栄基氏が2016年6月16日に記者会見し,テレビで罪を認めた自白について「決められたセリフを言うよう強制された」と証言した。

この事件は,香港の銅鑼湾書店の幹部5人が,2015年10月から12月にかけて,タイや広東省,香港で相次いで行方不明になったもので,その後2016年1月には,タイで失踪した桂民海氏が中国中央テレビ(CCTV)で,また2月には林氏ら3人が香港フェニックステレビで,それぞれ罪を認めて懺悔する“自白”の様子が放送され,彼らが中国当局に拘留されていることが判明した。

その後,6月14日に釈放され香港に戻った林氏は16日夜,記者会見し,行方不明になってから8か月間の経緯について語った。それによると,林氏は2015年10月,広東省深圳の友人に会いに出かけようとしたところ,香港から中国本土への通関の際に拘束され,手錠と目隠しをされて車で浙江省の寧波に連れて行かれ,24時間監視つきの取り調べを受けた。その後,2016年2月にフェニックステレビで自らが「中国本土に禁書を持ち込んで販売した」と罪を認める供述をした点については,「事前に原稿が用意されていた。その内容を記憶して話さなくてはならず,間違えたら撮り直しをさせられた」と述べ,テレビでの“自白”は強制された意に反するものだと証言した。

また,自らが釈放された経緯については,中国政府が禁書としている書籍の購入者リストを香港から取ってきて中国当局に提出するのが条件だったと述べた上で,「自分が拘留されている間,香港の人々の多くが自分達の釈放を求めるデモをしていたことを知って感動し,香港の言論の自由を守るために本当のことを言おうと決意した」と説明した。さらに林氏は,香港から失踪し,その後帰還した実質上の経営者の李波氏について,「電話で話をしたが,中国当局に拉致されたという内容のことを言っていた」とも証言した。

林氏の証言内容について,李氏や他の既に釈放された2人はいずれも否定したが,林氏は「彼らは中国本土に親族がいるので本当のことが言えないだけで,彼らを責めるつもりはない」と述べている。

中国では最近,言論の自由や民主化を主張するメディア関係者が中国当局に拘束され,CCTVなどで罪を“自白”する事案が続出している。2014年5月には,それまで行方不明だった当時70歳の女性ジャーナリストの高こう瑜ゆ氏が,刑事拘留の中でCCTVの番組に登場,顔にモザイクがかかった状態でのインタビューで,国家機密漏えいの罪を認めたと報道された。また,中国政府に批判的なアメリカのニュースサイト「博訊」の北京駐在員の肩書を持つ向南夫氏も同月,同様にCCTVのインタビューで,政府当局による土地の収用や警察の暴力に関する虚偽の記事をサイトに投稿した罪を認めたと報道された。今回の事案は,一連のテレビでの罪の“自白”の信ぴょう性に重大な疑念を投げかけるものとなった。

この問題について香港の親中派メディアは林氏を攻撃する内容の報道をしているが,中国本土では,銅鑼湾書店事件に関する報道はほとんどなされていない。

山田賢一

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