伊・RAI 受信料,政府が電気代と一括徴収する案の採用へ

刊行物『放送研究と調査』2015年12月号 掲載

イタリアのレンツィ首相は10月5日,2016年から公共放送RAIの受信料を値下げし,単独徴収方式から電気代と一括徴収する方式への移行を政府が検討していることを明らかにした。RAIの受信料制度は,テレビの保有に対して支払い義務が生じるが,不払い率が30%近くあり,額にして約5億ユーロ(約670億円)と推測される状況を解消し,公共放送の財源を確保することが長年の懸案であった。同首相は,受信料を全員が公平に負担することを目的として,1世帯あたり現行の年額113.5ユーロ(約1万5,000円)を2016年1月から100ユーロ(約1万3,000円)へ値下げし,テレビを保有する全世帯から電気代と一緒に徴収するとした。イタリア議会では10月から2016年の予算法(legge finanziaria)が審議されているが,予算法とともに審議され,収支の増減をもたらす現行法規の修正を行う安定法(legge di stabilità)の中に盛り込み,2016年1月からの施行を目指している。

受信料の電気代一括徴収案は,2014年秋の2015年安定法案の審議の際にも検討され,一律の金額ではなく世帯所得に応じて複数の額を設定する案や,受信料制度を廃止して公共放送の財源負担金制度へと移行する案なども検討されたが,別荘などは受信料支払いの義務はないため,煩雑な徴収業務が負担になるとする電力業界の強い反対もあり,速やかな実現は難しいとして,最終的に法案から削除された。国家統計局ISTATによると,国内のテレビ保有世帯は97%だが,このまま成立すれば,テレビを保有しない世帯は規定される方法で自己証明による申告をする必要がある。

広塚洋子

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