放送アーカイブ活用と肖像権ガイドライン 過去の映像に写る顔は公開できるか

ー メディアの未来に向けた考察 ー

公開:2022年2月1日

放送アーカイブ活用が進まない要因の1つに肖像権の問題(人物が写る映像の公開の適否)がある。この問題解決に向けて,本稿ではデジタルアーカイブ学会が公表した「肖像権ガイドライン」を,放送アーカイブの実例にあてはめ,検討する。
【第Ⅰ章】いわゆるテレビでの「顔消し」「ボカシ」の多用に警鐘を鳴らすBPO委員長の意見を出発点に,個人情報保護意識の高まり,インターネット社会の暴力性など,テレビを取り巻く今日的課題を示す。
【第Ⅱ章】主に6つの要素を「総合考慮」して判断するという最高裁が示した侵害基準を中心に,肖像権がどのような法的保護を受けているかを解説する。
【第Ⅲ章】実務者向けのフローチャートとポイント計算によって「総合考慮」の「見える化」を目指した肖像権ガイドラインの内容,策定プロセスを詳述する。
【第Ⅳ章】ガイドラインを放送アーカイブにあてはめる検証に先立ち,留意点を確認する。
【第Ⅴ章】本稿の中心。放送アーカイブの9つの番組を実例として取り上げ,ガイドラインをあてはめ,公開の目的と必要性,独自に配慮すべき事項などを検討し,公開の適否を判断する。総括として,放送アーカイブでの判断フローの試案を示す。
【第Ⅵ章】提言として,一般公開では,注釈・解説などの充実や,オプトアウトに対応できる体制構築について,また,限定的な公開の必要性とそのための方策について述べる。

メディア研究部 大髙 崇
五常(ごじょう)総合法律事務所 数藤雅彦

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