『日本の素顔』の制作技法

第2回 複数の技法の孵卵器として

公開:2020年5月1日

本稿は『日本の素顔』(1957~64)がスタートした57年11月から、60年4月までに制作・放送されたテクストを分析して、その制作技法を明らかにするものである。多数のテクストの量的分析、その結果を踏まえて行う個別のテクストの質的分析から、この時期の『素顔』が、先行したラジオの録音構成や、記録映画・テレビジョン映画の影響を受けつつ、テレビドキュメンタリー(TD)として基本的な複数の制作技法を生みだしていることがわかる。個々別々の現実に共通する社会問題を見出し、それについて議論を展開していく技法は、現代のTDで言えば『NHKスペシャル』や『クローズアップ現代』といった番組に受け継がれ、個別の現実を個別のままに、その非言語的な感触まで大事に表現しようとする技法は、『鶴瓶の家族に乾杯』や『ドキュメント72時間』といった番組に受け継がれている。これらの制作技法の検討に関連して、1960年に吉田直哉が提出した「テレビ・ドキュメンタリー」概念、また、いわゆる「素顔論争」についても新たな視点から考察したい。

メディア研究部 宮田 章

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