放送コンテンツのインターネット展開が進む中、放送事業者にとって大きな課題となっているのが、海賊版サイトなど著作権を侵害する違法コンテンツへの対策だ。NHKも、次々と現れる著作権侵害コンテンツへの対応に追われる状況が続いている。2018年2月には、若者などの利用が急増した漫画の海賊版サイトについて、作家たちが利用しないよう呼びかける緊急声明を出した。こうした問題を受け、2018年4月、政府は海賊版サイトに対する緊急対策をまとめたが、この中の、アニメや漫画などの特に悪質な海賊版サイトに行うとした、「ブロッキング」をめぐり議論が起こっている。ブロッキングとは、ユーザーが特定のサイトにアクセスしようとした際、プロバイダー等がその閲覧を遮断することを指すが、ユーザーのアクセスを監視することが、憲法で定められている通信の秘密の侵害にあたると指摘されている。国内ではすでに児童ポルノについて民間によるブロッキングが行われているが、当時の議論を見ると、人権などの侵害と通信の秘密の侵害のバランスについて慎重に議論していたことがうかがえる。また、実際のブロッキングの現場を取材すると、作業にかかるコストの負担などの課題が浮かび上がってきた。ブロッキングは放送事業者が直面する著作権侵害コンテンツに対して有効な撲滅の策となりうるのか。ブロッキングの先例から、今後議論が必要な点や実施する場合の課題などを整理した。
海賊版サイトは"ブロッキングすべき"か
~著作権侵害コンテンツ対策の課題を考える~
公開:2018年9月1日
メディア研究部 越智慎司
※NHKサイトを離れます