放送アーカイブを広く公開・活用する上で大きな障壁となっているのが「権利者不明問題」である。放送番組はたくさんの著作物によって成り立っているが、権利者と連絡が取れないために権利処理ができず、再利用を断念するケースが多く発生している。デジタル・ネットワーク技術の普及によって大量に情報が流通する現在、この権利者不明問題は放送アーカイブ活用に限らず、あらゆるジャンルの著作物利用に共通の悩みとなって久しい。こうした中、2018年春の国会でTPP関連法案が成立し、著作権保護期間が従来の50年から70年に延長されたことで、権利者不明問題が長期化・深刻化する懸念が高まっている。
この論考では、放送アーカイブ活用を促進する視点から、シリーズで権利不明者問題の解決に向けた糸口を探してゆく。前編では、法改正の内容や国際的な動向、放送アーカイブの権利処理の現状をリポートする。