高潮・内水氾濫危険情報の新設

~緊急時コミュニケーションを考える(上)~

公開:2017年12月1日

2015年の水防法改正によって、都道府県は高潮によって大きな被害が出るおそれがある海岸に「高潮特別警戒水位」を設定し、「高潮氾濫危険情報」を発表することになった。本稿では、高潮氾濫危険情報と既存の情報の切迫度を「潮位」、「発表のタイミング」、「発表時の避難行動」の3つの角度から比較し、緊急時コミュニケーションの視点から考察した。考察の結果は以下の通り。
■潮位からみた切迫度:高潮氾濫危険情報の特別警戒水位は、おおむね高潮警報の「基準潮位」より低く、予想最高潮位よりさらに低い。従って、潮位から見た切迫度は高潮氾濫危険情報の方が高潮警報より低い。高潮特別警報の予測潮位は高潮警報の予想最高潮位以上となるので、高潮氾濫危険情報の切迫度は高潮特別警報よりもずっと低い。
■発表のタイミングからみた切迫度:高潮警報や高潮特別警報はリスクを予測して事前に警戒を呼びかけるものである。一方、高潮氾濫危険情報は実況情報で、氾濫発生がより差し迫った段階で発表される。発表のタイミングからみた切迫度は、高潮氾濫危険情報の方が高潮警報や高潮特別警報より高い。
■発表時の避難行動からみた切迫度:高潮警報や高潮特別警報よりも高潮氾濫危険情報が発表される時点の方が暴風になっている可能性がはるかに高い。暴風の中で立ち退き避難するのは非常に危険であるから、発表時の避難行動からみた切迫度は、高潮氾濫危険情報の方が高潮警報や高潮特別警報より高い。

メディア研究部 福長秀彦

※NHKサイトを離れます

全文を見る PDF(896KB)

英文サマリー