放送界の動き

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

    英BBC新会長,「プロムス」での愛国歌合唱で方針転換

    BBCが,夏の音楽祭「プロムス」で歌い継がれてきた愛国歌「ルール・ブリタニア」と「希望と栄光の国」を2020年は合唱せず,オーケストラの演奏だけにとどめるとした問題で,ティム・デイビー会長は9月2日,一転,少人数で歌う方針に変更した。2つの曲には,植民地主義を賛美する歌詞が含まれていると批判が出る一方,合唱見送りの判断には,ジョンソン首相が「自国の歴史を卑屈に否定することはやめるべきだ」と述べるなど,反発も高まっていた。新しく会長に就任したデイビー氏は,着任の翌日に前会長の方針を覆し,議論に終止符を打とうとした。無観客で行われた最終日のコンサートをテレビで見た人は前年を40%下回った。

    英BBC政治番組の「顔」,保守系の新テレビ局へ

    25年にわたりイギリスBBCの政治番組のキャスターを務めてきたアンドリュー・ニール氏(71)は9月25日,2021年に放送開始予定の24時間ニュース専門局「GB News」の会長兼メインキャスターに就任することを明らかにした。ニール氏は,冠番組が打ち切られたことなどでBBCの経営陣との軋轢が伝えられていた。「GB News」には,BBCの報道姿勢を批判するビジネスパーソンも参加。立ち上げにはアメリカDiscoveryが主要な出資者になると伝えられている。

    フランス公共放送,共同視聴者アンケート

    フランス公共放送の5つの組織(France Télévisions, Radio France,France Médias Monde, TV5MONDE,INA)は9月7日,共有財産である公共メディアが市民の要望や期待を理解し,未来の公共メディアをともに作っていくために,共同で一般市民を対象にオンラインでアンケートを開始すると発表した。具体的な質問項目として,コロナ危機の対応や商業放送との差別化,将来の役割,多様性の反映や地域放送への期待など20を挙げている。アンケート結果は2020年末までにとりまとめるとしている。

    仏語国際放送TV5MONDE,無料動画配信サービス開始

    フランス語圏の公共放送などが運営する国際放送TV5MONDEは9月9日,無料動画配信サービス「TV5MONDEplus」を開始した。Netflixなど大手動画配信サービスが勢力を伸ばす中,フランス語文化圏のコンテンツでシェア拡大を目指す。サイトには,TV5MONDEに出資するFrance Télévisions,CBC/Radio-Canada,スイスRTS,ベルギーRTBFなどが放送したドラマやドキュメンタリー,映画など5,000時間分のコンテンツが今後1年で提供されると報じられている。

    独国際放送,世界の利用者2億4,900万人に

    ドイツの国際放送Deutsche Welle(ドイチェ・ベレ)は9月4日,同局のサービスの1週間の平均利用者数が2億4,900万人になり,前年比で過去最高の26%の伸びを記録したと発表した。同局は,4か年業務計画で2021年までに利用者数を2億1,000万人にすることを目標としていたが,これを上回った。利用者の内訳は,テレビが1億1,100万人,ラジオが4,900万人,インターネットサービスが8,900万人で,特にインターネットサービスの利用者が46%増えたことが大きく寄与した。

    スイス,2023年1月までにFMラジオ放送終了へ

    スイスの公共放送,商業ラジオ局,連邦通信庁などが参加する,ラジオ放送のデジタル移行に関する協議会「DigiMig」は8月27日,国民のデジタルラジオの利用が進んだことから,公共放送SRG SSRは2022年8月に,商業・非営利ラジオ局は遅くとも2023年1月までに全国でFMラジオ放送を終了すると発表した。2014年に公表されたDigiMigの計画では,2024年末までの放送終了を目標にしていたが,約2年前倒しになった。

    伊Rai Radio 2,「Visual Radio」を開始

    イタリアの公共放送RAIは,9月28日,新サービス「Visual Radio」を開始した。ラジオ音声に映像をつけたこのサービスは,娯楽中心のRai Radio 2のインターネット配信Rai Play Radio上で24時間視聴できる。今後,ほかのチャンネルでもライブイベントなどの番組にこのサービスを導入する予定。RAIは2017年6月からDAB方式によるラジオのデジタル化を本格的に進めている。この3年間で放送時間はおよそ71%増加した。