放送界の動き

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

    中国,ネット動画のユーザーが9億超える

    中国ネット視聴番組サービス協会は10月12日,2020年の「中国ネット動画発展研究報告」を発表し,国内のネットで動画を視聴する人が6月末現在で9億100万人に達したことを明らかにした。報告書によると,「ショート動画」を利用する人が87%と最も多く,6月末現在で1人あたりの利用時間が110分と,今や「インスタントメッセージ」を上回る時間をショート動画の視聴に費やしていた。また,「ライブ配信」の利用者は5億6,200万人に達し,このうちネット通販のライブ配信を見て商品を買った人が3億900万人と,eコマースが最も成長率の高いサービスとなった。

    台湾,中天テレビの免許更新で公聴会開催

    台湾の独立規制機関であるNCC(国家通信放送委員会)は10月26日,中天テレビのニュースチャンネルの免許更新にあたって公聴会を開催し,同局の政治報道の偏りなどについて8時間余りにわたって議論した。中天テレビは食品メーカー「旺旺」の蔡衍明オーナーが経営する「旺旺中時媒体集団」の中核となるチャンネル事業者で,旺旺が中国ビジネスで多額の利益を上げる中,報道が中国寄りと指摘されている。公聴会では,2018年の高雄市長選挙の際,野党国民党候補を扱った比率が90%に達し,与党民進党候補の5.7%を大きく上回ったなどと批判が出たが,中天は2020年上半期には顕著に改善しているなどと反論した。NCCは免許更新の可否を免許期限の12月11日までに決定する。

    フィリピン,ABS–CBNの番組,提携企業が放送

    フィリピンでは,政権に批判的な報道をしていた商業放送最大手のABS–CBNの免許が更新されず,5月に放送停止となったが,10月10日,提携するメディア企業がABS–CBNの番組の一部を地上波などで放送した。今回提携したのは,政権に多大な影響力を持つキリスト教福音派の指導者エディ・ビリャヌエバ氏所有のZoe Broadcasting Networkで,視聴者からはABS–CBN制作のコンテンツの復活を歓迎する声が上がっているが,ニュースや「TV Patrol」などの主要な報道番組は含まれていない。

    マレーシア,議会取材を一部メディアのみに制限

    ムヒディン首相への辞任の圧力が高まっているマレーシアで10月16日,新型コロナ対策を理由に,11月2日から始まる議会期間中の国会内での取材を,国営放送RTMなど15メディアのみとすることが発表された。政権に批判的なメディアの排除がねらいとの見方もあり,同国のジャーナリスト団体NUJは,「報道の自由と政府の透明性の原則の観点から,メディアの選定は再考されるべき」との声明を出した。

    預言者の風刺画めぐり,中東で反発のツイート相次ぐ

    イスラム教の預言者の風刺画をめぐり,フランスのマクロン大統領が「表現の自由を守る」と発言しイスラム圏で反発が広がる中,中東の衛星テレビ局 Al Jazeeraは10月31日,同大統領との単独インタビューを55分間にわたり放送した。この中で大統領は「風刺画に動揺するのはわかる」と述べ,イスラム教徒に寄り添う姿勢も示したが,エジプトでは「我々は騙されない」と反発のツイートが相次ぎ,クウェートなどではソーシャルメディアでフランス製品の不買運動を呼びかける投稿が急増した。アルカイダ系過激派「アルシャバーブ」は「フランスは我々の行動の自由も受け入れる必要がある」とテロ攻撃を示唆する声明を出した。

    ソマリアで公共メディア発足,「テロ封じ込め」が課題

    東アフリカのソマリアで10月6日,従来は国営だったマリア・ナショナル・テレビ(SNTV)とラジオ・モガディシュなどが公共メディアとして新たにスタートした。公共メディアの発足は8月に施行された改正メディア法で規定されたもので,SNTVは「今後は政府に批判的な意見も取材し,バランスのとれた報道を行うことができる」としている。ソマリアの公共メディアにとって最大の課題はテロの封じ込めへの世論形成だが,政府に批判的な意見を同国の過激派「アルシャバーブ」と結びつけ,報道の自由を抑え込もうとする動きが強まっており,公共メディアの対応に関心が集まっている。