放送界の動き

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

    台湾,公共テレビが「台湾語チャンネル」開局

    台湾の公共テレビは7月6日,台湾の人口の7割を占める福建系住民の母語である台湾語(ホーロー語)で放送するチャンネルを正式に開局した。台湾では,中国での内戦に敗れた蔣介石が台湾に渡って以降,現地の住民に北京語(中国語)の使用を強制し,現在に至るまでテレビやラジオ放送などで公式に使われる言語は北京語となっている。台湾語チャンネルは現在の民進党政権のもとで設立の機運が高まり,文化部が初年度に4億台湾ドル(約14億円)の予算を計上することで開局に至った。今後は公共テレビの第2チャンネルで,毎日24時間,台湾語での放送が行われる。

    台湾NCC,"中国の指示"疑惑でテレビ局を調査

    台湾の国家通信放送委員会(NCC)は7月18日,メディアグループ「旺旺」傘下の中天テレビなどがニュースの編集にあたって中国政府の指示を受けていたとの報道を受けて,グループのテレビ局2社に対し聞き取り調査を行った。この報道は17日付のイギリスのFinancial Timesが,中天テレビなどの記者の証言として,中国政府の国務院台湾弁公室から毎日,ニュース編集部の幹部に電話があり,編集に関する指示を行っていると伝えたもので,NCCは中天テレビに加え,同じ旺旺系列の中国テレビの2社に対して説明を求めたが,両社はともに中国の介入はないと疑惑を否定した。

    韓国地上放送視聴シェア,下落続くもKBSが首位維持

    韓国の放送通信委員会(KCC)は7月17日,国内280の放送事業者が運営するチャンネルを対象に調査した2018年度の「視聴シェア(占拠率)算定結果」を発表した。それによると,地上放送3局の視聴シェアは前年度に比べていずれも低下し,KBSが24.9%(前年度比–1.9ポイント),MBCは12.1%(同–0.3),SBSは8.5%(同–0.1)だった。地上放送の視聴シェアは,2011年に大手新聞4社がケーブルテレビ・衛星放送向けの総合編成チャンネルを開始したことなどにより下落傾向が続いているが,KBSは4年連続で首位を保った。

    インド,ケーブルテレビのデジタル化完了

    インドの電気通信規制庁は7月10日,2019年1~3月期の業界動向報告を発表し,ケーブルテレビのデジタル化が全国で完了したと明らかにした。インドではケーブルテレビのデジタル化が2011年に法律で義務づけられ,全国を4つの地域に分け段階的に移行を進めてきたが,都市圏以外では移行が遅れていた。インドでは,ケーブルテレビがテレビの主要な視聴形態となっており,情報放送省に登録されているMSO(Multi System Operator)と呼ばれるケーブルテレビ統括運営会社は,2019年3月時点で1,469社となっている。

    豪内相,機密文書の報道めぐり捜査継続を強調

    オーストラリア連邦警察(AFP)が2019年6月,国家機密が漏洩した疑いがあるとして,公共放送ABCの本部などを家宅捜索した。これについてダットン内相は7月12日,「警察には捜査する義務がある」と述べ,捜査を継続する考えを強調した。ABCは2017年7月,豪軍の機密文書をもとに,アフガニスタンに派遣された兵士が民間人を殺害していたなどと報じ,家宅捜索を受けたが,報道の自由が脅かされるとして捜査の中止を求めていた。政府の対応に対する国際的な批判が高まる中,豪議会の情報と安全保障に関する両院合同委員会は,警察の捜査などが報道の自由に与える影響について調査を開始し,10月に結果を報告するとしている。

    豪通信メディア庁,銃乱射事件報道で課題も指摘

    ニュージーランドで2019年3月,モスクが銃撃され,51人が死亡した事件で,豪放送局の報道に放送基準違反がなかったかを調べていた豪通信メディア庁(ACMA)は7月22日,「報道には明確な公益性があった」などとして,違反には問わない方針を明らかにした。この事件では,テロ行為などの罪に問われているオーストラリア人の被告が,銃撃の様子を自らFacebookでライブ配信した。豪メディアの多くは,銃撃の瞬間を見せないよう動画を編集したうえで放送に使用していた。ACMAは報道の妥当性を認める一方,動画を短時間に繰り返し放送するなどの行為があった点については,今後,放送業界全体で検討すべき課題だと指摘した。