放送界の動き

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

    韓国,テレビでのセクハラ告発で道知事が辞任

    韓国の有料放送向け総合編成チャンネルのJTBCが3月5日,アン・ヒジョン(安熙正)忠清南道知事の秘書へのインタビューで,アン知事の性的暴行疑惑を報道,アン知事は翌日,知事職を辞任し政治活動を中断することを明らかにした。この問題はJTBCの番組『ニュースルーム』に出演したアン知事の政務秘書であるキム・ジウンさんが明らかにしたもので,2017年6月から8か月間にわたって,ロシアやスイスなどの海外出張の際やソウルなどで,アン知事から4回にわたって性的暴行を受けたと述べた。これに対してアン知事は当初,合意によるものだったと釈明したが,その後,自らのFacebook上で謝罪し,知事職を退いて一切の政治活動を中断すると表明した。JTBCは1月にも女性検事に対する上司のセクハラ疑惑を番組内のインタビューで暴露しており,視聴者の信頼度を一層高めている。

    韓国KCSC,性犯罪関連放送ガイドラインを明確化

    韓国の放送通信審議委員会(KCSC)は3月20日の小委員会で,性犯罪に関する放送内容についての現行のガイドラインをより明確・詳細に定めることを決めた。委員会では,扇情的で刺激的な映像資料を使用した,2017年放送の総合編成チャンネルの報道番組5件について審議したが,現行の放送ガイドラインに不備があるとの指摘が出され,今後,制裁の基準を決める詳しいガイドラインが必要だとして,性犯罪関連の番組に使用される資料・画面・イラスト等の審議基準を細部にわたって設けることを決めた。2015年に新設された「放送審議規定」第30条には,性的暴行・家庭内暴力などが正当化されるおそれがある内容の放送は禁止すること,性的暴行等を必要以上にリアルに表現しないことなどの条項があるが,制裁の基準にあいまいな部分が多いと指摘されていた。

    台湾,中華テレビの報道局長を新社長に選出

    台湾の公共放送グループの一員である中華テレビの理事会は3月8日,1月に解任した社長の後任の選考を行い,これまで台湾日報の編集長や中央通信社の副編集長を歴任したジャーナリストで,報道局長の荘豊嘉氏を賛成多数で社長に選出した。中華テレビの理事会は1月,1年前に任命したばかりの郭建宏社長を,「指導力の欠如」などを理由に解任する動議を可決,これに対し郭社長が,解任は政治的理由によるものとして,陳郁秀理事長を名誉毀損で台北地裁に訴えていた。その選考では,陳理事長派とされた社長候補2人は落選,陳氏の運営に対する批判が少なくないことを示す形となった。

    エジプト,BBC支局閉鎖求める裁判が4月実施へ

    BBCが報じたエジプトの人権問題に関するリポートに対し,エジプトの情報省(SIS)が「虚偽の内容」と反発している問題で,BBCに対してエジプトでの事業免許停止と支局閉鎖を求める裁判が,カイロ緊急国家裁判所で4月10日から始まることになった。このリポートは2月23日に報道されたもので,反体制派の投獄や拷問,行方不明が多発しているとして,被害者とされる人の家族へのインタビューなどを伝えていた。これに対しSISは,被害者やその家族の写真・ビデオ以外の情報がないなどと反論,エジプトの弁護士は,BBCが虚偽のニュースを報じ,エジプトのイメージを歪めようとしているとして訴えを起こした。BBCのウェブサイトでは3月30日現在,リポートはそのままで,この問題に対するコメントも掲載されていない。

    トルコ,親大統領派企業がCNNトルコなどを買収へ

    CNNトルコなどの放送局や新聞社を所有するトルコのドアン・ホールディングス(Dogan Holdings)が,同社のメディア部門をエルドアン大統領に近いとされるデミロレン・ホールディングス(Demiroren Holding)に売却するとした合意が3月21日,明らかになった。トルコでは2016年のクーデター未遂以降,多くのテレビ局や新聞社が閉鎖を余儀なくされているほか,ジャーナリストの拘束も相次いでいる。買収されるメディア部門は,CNNトルコのほか,トルコで最大の発行部数を誇る日刊紙ヒュリエットも発行しているが,今回の買収が,現政権に批判的ともみられてきたCNNトルコやヒュリエット紙の報道にどのような影響を与えるのか,注目される。