文研ブログ

メディアの動き 2023年04月14日 (金)

【メディアの動き】イラク戦争開戦20年,報道の教訓は

アメリカが,存在しない大量破壊兵器を理由にイラク戦争を開始してから,3月20日で20年を迎えた。

Watson Instituteによると戦争による死者(2021年9月集計)はイラク市民を中心に30万人近くに達した。

米メディアの大半は当時のブッシュ政権幹部や亡命イラク人の情報を検証せずに報じて開戦への世論づくりを後押しし,その後,報道の誤りを認めたが,その教訓が十分に生かされているか,疑問もある。

開戦前,大手メディアでは唯一,イラクの大量破壊兵器保有を打ち消す報道を続けたKnight Ridder社のワシントン支局長だったジョン・ ウォルコット氏は『Foreign Affairs』誌への寄稿で,当時のみずからの経験を振り返った。

この中で同氏は,報道を誤らないためには,政治目的に沿った情報を求める権力者ではなく,現実を把握している現場に近い軍関係者や専門家の声を報じることが必要だったと強調。

2022年にアフガニスタンから米軍が撤退した際に,その後の政権崩壊や混乱を予期できていなかったことに当時の教訓が生かされていないことがうかがえると指摘した。

『Columbia Journalism Review』のメディア評論執筆者 ジョン・オルソップ氏も戦争や安全保障に関わる報道が,相変わらず,イラク戦争時に誤った情報を流した国防総省や情報機関の幹部に依存している問題を指摘した。

ロシアのウクライナ侵攻では米メディアの多くが現地取材に基づく独自の報道を続けているが,ロシアやロシアと接近する中国との対決姿勢を強める政権幹部の情報に依存せず,両国の現実を客観的に伝えることができているのかも問われている。

  

メディアの動き 2023年04月14日 (金)

【メディアの動き】英BBC スポーツ解説者の政府批判 きっかけに混乱,不偏不党の議論に

公共放送BBCは,人気サッカー解説者のギャリー・リネカー氏が3月7日,Twitterで政府を批判したことを受けて番組を降板させたが,政府の圧力に屈したなどとの批判が相次ぎ,混乱が広がった。

この問題は,英仏海峡をボートで渡るなどして不法入国した移民には亡命申請を認めないとする政府の法案について,リネカー氏が,ナチスドイツに例えて批判したことに端を発した。

政府や保守党の議員から批判の声が相次いだ。

BBCは,公共放送として不偏不党を守るため,報道番組などの職員・スタッフには,政治的な発言を控えるようSNSの利用のルールを定めている。
同局は,知名度が高いリネカー氏にも遵守を求めてきており,同月10日,「SNSの使い方について明確な合意ができるまで」同氏の番組への出演を差し止めるとした。

しかし,この方針に反発するほかのサッカー解説者や司会者が出演をボイコットする動きが広がり,BBCはリネカー氏が司会を務める看板番組を90分から20分に短縮したほか,テレビやラジオの複数の番組が再放送やポッドキャストで編成の空白を埋めることになった。

混乱を受けてBBCのデイビー会長は3月13日に声明を出し,視聴者に謝罪するとともに,リネカー氏の番組への復帰を表明した。

さらに「BBCにとって不偏不党は大事なものだ。また表現の自由も守るべきもので,そのバランスは難しい」としたうえで,SNSの利用のルールがより適切で明確なものになるよう見直す方針を示した。

一方,BBCの記者のインタビューに対し,デイビー会長は自らの辞任は否定した。

調査あれこれ 2023年04月13日 (木)

「災害復興法学」が教えてくれたこと【研究員の気づき】 #473

メディア研究部 (メディア動向)中丸憲一

みなさんは「災害復興法学」をご存じだろうか。東日本大震災から約1年間に、被災地で弁護士が実施した4万件以上の無料法律相談がきっかけとなり生まれた。今回は、避難により命を守った後、「さらに生き抜くため」に必要な法律や制度に関する知識を与えてくれる、この新しい防災の考え方について取り上げたい。

【災害復興法学とは何か】
 3月13日。東日本大震災から12年が経過して間もないタイミングで、都内で講演会が行われた。講演したのは岡本正弁護士。東日本大震災から約1年間に被災地で弁護士が実施した4万件以上の無料法律相談の内容を分析し、その結果をもとに「災害復興法学」を創設した。

okamoto_1_W_edited.jpg講演する岡本弁護士

 「災害復興法学」とはどんなものなのか。岡本弁護士は以下の4つに分類している。
① 法律相談の事例から被災者のニーズを集め、傾向や課題を分析すること。
② 既存の制度や法律の課題を見つけ、法改正などの政策提言をすること。
③ 将来の災害に備えて、新たな制度が生まれる過程を記録し、政策の手法を伝承すること。
④ 災害時に備えて、「生活再建制度の知識」を習得するための防災教育を行うこと。

これを見て、私は「災害復興法学」を、「的確・迅速な避難により命を守る」という段階を無事に乗り越えた後、「さらに生き抜くため」に必要な法律や制度、知識を与えてくれるものだと理解した。

kouenkai1_2_W_edited.jpg講演会の様子

【大事なのは「生き残った後に必要な制度」を知ること】
 講演会で岡本弁護士は、まず、「被災した後の住まいや生活の再建に必要な知識」から話し始めた。▼生活再建の第一歩は「罹災(りさい)証明書」。▼通帳やカードなしでも預貯金は引き出せる。▼家の権利証がなくなっても権利はなくならない。▼保険証をなくしても保険診療を受けられる、など。ほかにも「被災後のローンについての知識」や「被災者生活再建支援金」、「災害弔慰金」の受給など、ポイントは多数あった。私は特に、「通帳やカード、権利証、保険証がなくてもなんとかなる」という部分が重要だと感じた。過去の津波災害では、いったん避難した後、貴重品を取りに戻ったり、自宅から持ち出すのに時間がかかったりして津波に巻き込まれ、命を落とすケースが相次いだ。こうした知識を知っておくだけで、「素早い避難」につながり命を守ることができる。その上で、必要な制度や知識を知っておくことで、被災後を生き抜くことができる。この内容は、岡本弁護士の著書「被災したあなたを助けるお金とくらしの話」に詳しい。

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【目を見張った“あるデータ”】
 次に、講演では、東日本大震災の被災地で弁護士が実施した無料法律相談の話に移った。紹介されたのは、岩手県陸前高田市と宮城県石巻市、それに仙台市青葉区のいずれも震災から約1年分のデータだ。

kouenkai2_4_W_edited.jpg講演会の様子

このうち津波で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市と宮城県石巻市については、マスコミも報道を続け、私自身も災害担当記者時代、何度も現地入りした。しかし、私が目を見張ったのは、仙台市青葉区で行われた無料法律相談のデータだ。仙台市のうち沿岸部は津波で大きな被害を受けたが、青葉区は最大震度6弱と地震の揺れは強かったものの、海に面していないため津波の被害は受けていない。だが、約1100人が弁護士に自分たちが直面する切実な問題を相談していた。

shiryou_5.jpg仙台市青葉区の相談内容 提供:岡本正弁護士

データを詳しく見ていく。それによると、▼借家をめぐるトラブルの「不動産賃貸借(借家)」が最も多く33.5%、次いで▼瓦や石垣、ブロック塀などの落下、倒壊による損害賠償をめぐるトラブルである「工作物責任・相隣関係(妨害排除・予防・損害賠償)」が15.6%などとなっている。

【被災後に直面した予想外のトラブルとは】
こうしたトラブルは、例えばどんな内容だったのか。岡本弁護士の著書「災害復興法学」から引用する。
まず、「不動産賃貸借(借家)」の事例である。
(一部中略)
「住んでいる築30年の一戸建ては、幸い、建物自体の損壊は、見た目上はほとんどなく、電気、水道、ガスといったインフラは思いのほか早く復旧した。ただ、風呂が壊れ今も使えない。4月半ばになって、大家から連絡がきた。『一戸建てはもう古く、地震や度重なる余震で修繕しなければいけない箇所が多い。もし完全に修繕するとなれば、200万円程度かかる。とても費用は出せない。1か月くらいのうちに出て行ってもらえないだろうか。』もし正式に退去請求があったら、どうしたらよいだろうか」
次に、「工作物責任・相隣関係(妨害排除・予防・損害賠償)」の事例である。
(一部中略)
「新築したばかりの2階建て一軒家の目立った被害が、瓦屋根の一部破損で済んだことは幸運だったのかもしれない。4月7日、そろそろ眠りにつこうかと思ったその瞬間。凄まじい揺れが襲ってきた。あの時と同じか、いや、それ以上か。大地震が再び宮城を襲った。その後も各地で余震が続く。4月11日の午後5時過ぎ。再び強い地震が襲った。庭先でドゴッという音。瓦が落ちた。2階の瓦屋根が、隣家のトタンでできたガレージの屋根に降りかかり、大穴を開けた。そして、白いセダン乗用車のフロントガラスを破損してしまったのだ。しばらくして隣人からガレージの修理見積書ができあがったので、全額を弁償してほしいとの連絡が入った。請求金額は80万円だった」

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岡本弁護士は、著書「災害復興法学」で、こうした事例について、▼当事者の言い分にはいずれも一定の理があり「100か0か」という一刀両断の解決が難しいこと、▼「被災者どうし」「ご近所どうし」の悩み事であることなどを特徴としてあげている。その上で、当事者間での「話し合い」で解決することが望まれる事案で、被災者どうしの紛争が頻発することは地域全体の復興を妨げかねないなどと指摘している。

【「災害復興法学」が教えてくれたこと】
 震災当時を思い返してみた。あの時、私は災害担当記者として、連日、被災地の取材に駆け回っていたが、目は常に沿岸部を向いていた。仙台市青葉区については、震災直後、東北最大の歓楽街、国分町が停電で真っ暗になっていたのに驚いたが、このほかは、沿岸部の被害が凄まじすぎて、内陸部に目を向ける余裕は正直言ってなかった。また、史上最悪レベルの原発事故や首都圏の計画停電、富士山直下を震源とする大地震など、経験したことのない異常事態が次々に起きる中で、内陸部に目を向け、すべてを伝えるのはかなり難しかったと思う。しかし、弁護士たちは、それに向き合い、話を聞き、一緒に悩んでいた。そこから見えてきたのは、借家だが長年住んできた家を失う人や、自宅に被害を受け、絶え間ない余震という自然現象による不可抗力で、思いもよらない新たな負債を抱えた人たちの苦悩だった。
 今、メディアが防災を取り上げるときに合言葉のように出てくるのが「自分ごととして考える」。これは、避難など命を守る行動を素早く起こすためのインセンティブとして使われることが多い。しかしこれに加え、災害を生きのびた後には生活をどう再建するかという課題に直面し、被害が比較的軽微で済んだとしても生活を脅かす予想外の事態が起きうる。この言葉は、そうした事態に備える上でも用いることができると感じた。 これらはすべて、「災害復興法学」が教えてくれたことである。

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 【中丸憲一】
1998年NHK入局。
盛岡局、仙台局、高知局、報道局社会部、災害・気象センターで主に災害や環境の取材・デスク業務を担当。
2022年から放送文化研究所で主任研究員として災害や環境をテーマに研究。

★筆者が書いた、こちらの記事もあわせてお読みください
#460 東日本大震災12年「何が変わり、何が変わらないのか」~現地より~
#456「関東大震災100年」 震災の「警鐘」をいかに受け止めるか

調査あれこれ 2023年04月11日 (火)

統一地方選挙で見えてきたもの~自公政権の経年劣化か?~ 【研究員の視点】#472

NHK放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

 3月21日に訪問先のインドからのウクライナ電撃訪問を果たし、ゼレンスキー大統領との対面会談を果たした岸田総理大臣。その1週間後の28日には令和5年度予算も成立し、胸を張って統一地方選挙の前半戦に臨んだはずでした。

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 しかし、41道府県議会議員選挙や9道府県知事選挙などの結果を見ると、目立ったのは自民党の底力よりも日本維新の会の勢いでした。報道各社の受け止めには「維新、全国政党化に弾み」「全国へ足がかり」といったものが目立ちました。

 確かに41道府県議選の結果集計を政党ごとの獲得議席で見ると、日本維新の会(大阪維新の会を含む)は前回4年前の2倍近くに増えました。これに対し自民党、公明党は前回と比べてほぼ横ばい、立憲民主党は増えましたが、共産党は減りました。

 ここから浮かび上がるものをどう見るかです。私は日本維新の会が近畿圏一円に勢力を拡大しているのは確かだが、全国政党への道のりはまだまだ険しいと見ています。大阪府知事、大阪市長、奈良県知事を押さえ、大阪府議会と大阪市議会で共に過半数を制しました。そして首都圏などでも議席を増やしていますが、全国を俯瞰して老舗の他党と比較すれば地域限定的です。

0411_2_W_edited.jpg 横山英幸 大阪市長   吉村洋文 大阪府知事

では、維新の会の勢いを見せつけた背景には何があるのでしょうか。他の国政野党が躍進できなかったのは確かですが、国政与党の自民・公明も地力の強さを感じさせるものがありませんでした。自民党と公明党が衆参両院で安定した勢力を維持するために連立を組んでから20年以上になります。その間に民主党政権の時期がありましたが、安倍長期政権を支えたのも自公の協力でした。

 こうして見てきた時、今回の選挙結果で私が最も注目したのは、大阪市議会で維新の会が初めて過半数を制したことです。これまで公明党は維新の会の市長が進める大阪市政の運営に協力する立場をとり、それによって衆議院選挙の際に大阪府と兵庫県の6つの小選挙区で維新の会との競合を避けて議席を確保してきました。

 地方選挙の結果を受けて、この関係が崩れると国政で何が起きるかです。自民党幹部の一人は「公明党が近畿で小選挙区議席の確保が難しくなると、他の地域で自民党に小選挙区議席を譲ってくれと迫ってくるかもしれない」と警戒感を口にします。

 公明党幹部に取材すると「国政の安定のために、我々が候補者を立てない多数の小選挙区で自民党の候補者を応援しているのだから、もう少しこちらに小選挙区議席を回してくれてもいいはずだ」といった本音が漏れてきます。

 一票の格差是正のため、去年の暮れに公職選挙法が改正され、衆議院の小選挙区の線引きを変更した10増10減の新しい区割りが次の総選挙から導入されます。これに備える中で、公明党は都市部での議席確保のために自民党との調整が整わなくても独自の候補を新たに擁立する動きを進めています。

 今回、日本維新の会が示した勢いの背景には、こうした自民党と公明党の連立与党内でのきしみ、言いかえれば「自公政権の経年劣化現象」が垣間見え始めたことがあるのかもしれません。

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 日本維新の会の馬場代表は、9日夜の記者会見で「公明党との関係はリセットする」と述べ、独力での党勢拡大を目指す考えを表明しました。今後の政治の動きの中で、台風の目になりそうなことは確かです。

 そこで岸田内閣です。統一地方選挙前半戦の終盤4月7日(金)から投開票日9日(日)にかけてNHK月例電話世論調査が行われました。

☆あなたは岸田内閣を支持しますか。それとも支持しませんか
  支持する   42%(対前月+1ポイント)
  支持しない  35%(対前月-5ポイント)

先月と比べて支持しないが5ポイント減ったのが目立ちますが、支持するは横ばいに近い変化で一気に上向く勢いはありません。41道府県議選の獲得議席で、与党の自民党と公明党がほぼ横ばいだったのと似ています。

 岸田総理は4月23日に行われる統一地方選挙後半戦と5つの衆参補欠選挙を乗り越えて5月19日~21日のG7広島サミットに臨み、6月の国会会期末の頃には先々を見据えた政局判断の時期を迎える腹積もりだという見方があります。

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 ただ、岸田総理の足元で一気に上向く勢いが出ていないという点には注意が必要になるでしょう。5つの衆参補欠選挙の結果にもよりますが、年明け以降、盛んに強調している「異次元の少子化対策」も財源の裏付けが不透明なため、国民の多くが喝采をもって迎え入れるという状況にはなっていません。

 特に若い世代には「先にいろいろな手当ての給付を受けても、結局、後で政府に回収されるだけではないのか」という素朴な疑問や懸念があるようです。岸田総理は令和6年度の予算編成に向けて6月に示す骨太の方針で「少子化対策の大枠を示す」と繰り返していますが、その大枠で国民が納得するのかどうかは不透明です。

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 岸田総理大臣の自民党総裁任期は来年9月までですので、先々のことを考える時間は十分にあります。とはいえ衆議院の10増10減の新しい区割りが国会で決まった後、「新しい民意の下で政治を行うべきだ」という声は政党関係者の間で次第に強まっています。

 岸田総理が自らを支える与党内の様子、そして野党各党の動きを見ながら、衆議院の解散・総選挙のタイミングを、いつ、どう判断するのか。これが次第に具体的な政治テーマになってきたようです。

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NHK放送文化研究所 研究主幹 島田敏男
1981年NHKに入局。政治部記者として中曽根総理番を手始めに政治取材に入り、法務省、外務省、防衛省、与野党などを担当する。
小渕内閣当時に首相官邸キャップを務め、政治部デスクを経て解説委員。
2006年より12年間にわたって「日曜討論」キャスターを担当。
2020年7月から放送文化研究所・研究主幹に。長年の政治取材をベースにした記事を執筆。

おススメの1本 2023年04月10日 (月)

『にほんごであそぼ』コンサートのはじまり ~坂本龍一さんと作った福島コンサート~ #471

計画 久保なおみ

『にほんごであそぼ』は、Eテレで放送中の子ども向け言語バラエティー番組です。2003年に放送を開始して、今年で21年目になりました。 『にほんごであそぼ』では放送開始から10年目を迎えた2012年に初めて公開収録を行い、それ以来毎年、全国各地でコンサートを開催しています。 このコンサートを始めるきっかけとなったのが、先日亡くなられた坂本龍一さんにご出演いただいた特番でした。私は番組の立ち上げから19年間、 制作を担当していましたので、坂本龍一さんに感謝を込めて、この最初のコンサートについてご紹介します。

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『にほんごであそぼ』は、日本語の豊かな表現に慣れ親しむことによって、子どもたちの心に日本語の宝石の原石を埋めたいと願って始めた番組でした。日本に古くから伝わる名文・名句を多く取り上げ、テレビ番組として初めてグッドデザイン大賞を受賞するなど、話題になったりもしたので、大人にも広くご覧いただいています。放送が始まった頃、坂本龍一さんが『にほんごであそぼ』のファンと言ってくださっているという話を、レコード会社の方から伺ったことがありました。 そこで10年目の特番を作るにあたって、ダメもとでご出演を依頼したところ、12月末の2日間だけなら日本での時間がとれるというお返事をいただきました。当初はスタジオでの収録を考えていましたが、『にほんごであそぼ』立ち上げ時のプロデューサーで当時はNHKエデュケーショナルの取締役だった中村哲志さんから「せっかく坂本さんに出ていただけるのならば、コンサートぐらい大きなことをやらなくちゃ!」とアドバイスされ、無謀にもコンサートを提案することにしました。それまで『にほんごであそぼ』は、NHKの玄関ホールでの小規模なコンサートは行ったことがありましたが、公開収録は経験がなく、全くゼロからのスタートでした。

まずは会場の確保です。現在の『にほんごであそぼ』コンサートは自治体との共催で、事業部が候補として取りまとめた自治体と調整を行うのですが、最初のコンサートは、自分で会場を探さなければなりませんでした。『にほんごであそぼ』10年目に、その場所でやる意味。真っ先に思いついたのが東日本大震災の“復興支援”でした。『にほんご』の力で、子どもたちに元気を届けたい。坂本さんもいち早く被災地に思いを寄せていらっしゃいましたし、『にほんごであそぼ』の関係者にも福島から通っている人がいたので、出演者・スタッフ一同、福島のことが常に念頭にありました。そこで事業部に相談し、福島県内でコンサートが可能な会場を紹介してもらいました。

次はスタッフ集めです。脚本はコンサートのプロに書いていただきたいと思い、憧れていた井出隆夫さんにお願いに行きました。井出さんは『おかあさんといっしょ』の数々の名曲を作詩され、人形劇『にこにこぷん』や、コンサートの脚本も手がけていらっしゃいました。私は『おかあさんといっしょ』の担当になったとき、倉庫に保管されていた『にこにこぷん』の脚本を初回から最終回まで読みあさったほど、井出さんの大ファンでした。井出さんは突然の依頼に目を丸くしていらっしゃいましたが、素人の無謀な挑戦を応援してやろうと思われたのか、快く引き受けてくださった上に、舞台監督まで紹介してくださいました。
コンサート会場のPA(音響)や、照明、制作進行も、昔『おかあさんといっしょ』コンサートを担当していたスタッフを中心に、信頼できる仲間を集めました。やや平均年齢が高めな現場で、抜群の安心感がありました。

出演にあたって坂本龍一さんが希望されたのは、次の2点でした。
① おにぎりでも何でもいいから、番組に出ているようなかぶり物をしたい。
② 番組のレギュラー出演者である、 野村萬斎さんとコラボレーションしたい。
『にほんごであそぼ』の衣装・セットデザインを担当しているひびのこづえさんのデザインは、 とても 自由で楽しいので、坂本さんはぜひ、自分も面白いかぶり物をしたいと希望されたのでした。 ひびのさんは、舞台上で大きな面積を占める黒いピアノに負けないぐらい大きなものを着せたいと考え、 福島の郷土玩具“赤べこ”をモチーフにしたかぶり物をデザインしてくれました。
坂本さんはとてもご満悦で、満面の笑みでかぶってくださいました。

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野村萬斎さんとのコラボレーションの題材は、お正月の放送にふさわしい「もちづくし」を考えました。 古典狂言の「業平餅(なりひらもち)」と、萬斎さんが舞台で演じた井上ひさし原作の「藪原検校(やぶはらけんぎょう)」の早物語、 そして『にほんごであそぼ』でたびたび取り扱っていた侭田亀治郎の「糯尽(もちづくし)」。この3作品を組み合わせて構成しました。
また、坂本さんのピアノと萬斎さんの狂言をつなぐ役割として、尺八奏者の藤原道山さんに出演を依頼しました。道山さんは、 坂本さんとも萬斎さんとも共演の経験があり、邦楽と洋楽を自在につなぐ希有な存在として活躍していらっしゃる方です。

「藪原検校」の著作権申請などを行い、材料だけをそろえて演出は白紙のまま、コンサート会場の福島県文化センターに向かいました。コンサート前日、会場で対面した坂本さんと萬斎さんは、すぐにいろいろなアイデアを出しあいながら「もちづくし」の方向性を決めていきました。少し煮詰まったときには道山さんがヒントを出し、異なる分野で活躍される皆さんが、楽しみながら即興のパフォーマンスを作っていく様は、まさに圧巻でした。坂本さんに「ややこしや?」と問いかける萬斎さん。おもむろに立ち上がってピアノの中に手を入れ、弦をはじきだす坂本さん。ドラムのようにピアノの脇をたたくなど、あらゆるパーツで音を奏でていらっしゃいました。合間に入る伸びやかな道山さんの尺八と合わせ、ぜいたくな時間があっという間に過ぎていきました。

本番前、「どこかに『戦場のメリークリスマス』を入れていただけますか?」と坂本さんにお願いしたところ、 「なんだかちょっと照れくさいなあ」とおっしゃっておられましたが、「業平餅」への導入に、ちゃんと入れてくださいました。 あの美しい旋律に会場はどよめき、「もちづくし」に魅了されていました。

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『にほんごであそぼ』から坂本さんに依頼したのは、名文への作曲でした。候補となる名文・名句をいくつかお持ちしたところ、コンサートで初めて聴く曲ばかりでは、観客が楽しめないだろう…ということで、『にほんごであそぼ』でおなじみの曲と、坂本さんが作曲する新曲を交互に演奏する「組曲」の形をご提案いただきました。そうしてできたのが、以下の組曲です。

    序曲
①「こころよ」 詩:八木重吉 作曲:うなりやベベン
②「すずめのこ」 俳句:小林一茶 作曲:坂本龍一
③「雲」 詩:山村暮鳥 作曲:うなりやベベン
④「やせがえる」 俳句:小林一茶 作曲:坂本龍一
⑤「でんでらりゅうば」    長崎のわらべうたより    編曲:おおたか静流
⑥「なせばなる」 和歌:上杉鷹山 作曲:坂本龍一
⑦「私と小鳥と鈴と」 詩:金子みすゞ 作曲:バナナアイス
⑧「道程」 詩:高村光太郎 作曲:坂本龍一
    終曲

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演奏は、NHK交響楽団のピックアップメンバーと、藤原道山さん。歌は、番組レギュラーのコニちゃん(小錦八十吉さん)、うなりやベベンさん、おおたか静流さん、子どもたち。全員で初めて合わせたのは本番前日の夕方という、かなり無謀なスケジュールでしたが、さすが皆さんそれぞれの道の第一人者。子どもたちも、とても頑張ってくれました。

他にも、オペレッタ『セロ弾きのゴーシュ』や、神田山陽さんの講談、「寿限無」早口リレー、おおたか静流さんと福島大学附属小学校合唱部の皆さんが歌う四季の童謡、全国の子どもたちから募集した俳句に曲をつけた「元気でいこう!ごもじもじ」など、盛りだくさんのコンサートでした。

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会場には祖父母と一緒に三世代で来てくださった方も多く、たくさんの笑顔や拍手をいただいて、ほんとうにやって良かったと思いました。

コンサートのあと、井出さんが坂本さんに声をかけておられました。「僕、山川啓介の名前で「時間よ止まれ」を書いたんですけど。素晴らしいアレンジを、ありがとうございました」と。井出さんは、子どもの歌は本名の井出隆夫、大人の歌は山川啓介と、ペンネームを使い分けていらっしゃいました。坂本さんはYMOを結成される前に、矢沢永吉さんの「時間よ止まれ」のレコーディングに参加していたそうなのです。「ずっと御礼を言いたいと思っていました」とおっしゃる井出さんに、坂本さんは「そうでしたか!僕も若い時で。こちらこそ、ありがとうございました」と微笑んでいらっしゃいました。

10年目特番への坂本龍一さんの出演が実現しなかったら、『にほんごであそぼ』がコンサートを行うことはありませんでした。コンサートを作るきっかけとなり、ライブで作る楽しさを教えてくださった坂本さんに、心から感謝しています。
その後、岩手・宮城でも復興支援のコンサートを行ったあと、『にほんごであそぼ』のコンサートは全国各地の魅力を発信する内容へと形を変え、今も続いています。コンサートは、お客さまの反応を生で感じることのできる特別な現場で、出演している子どもたちにも、番組スタッフにも、番組を作っているだけでは得られない貴重な経験をさせてくれました。

福島への移動を含め、過密なスケジュールの中でも、終始穏やかな笑顔で子どもたちを見つめてくださった坂本さん。リハーサルのあと、萬斎さんと一緒に「うちも!」と共感したのは、「子どもが寝るのに間に合いたくて急いで帰ったのに、『お父さんが帰ってくると子どもが興奮して起きちゃうから、寝るギリギリの時間には帰ってこないで』って言われちゃうんだよ」というお話でした。
坂本龍一さんのご冥福をお祈りするとともに、子どもたちのために作ってくださった曲が、これからも歌い継がれていくことを願っています。

文研では、番組に関する調査・研究を幅広く行っています。
こちらもぜひお読みください。
NHK幼児向けテレビ番組の変遷|NHK放送文化研究所
『いないいないばあっ!』が生まれるまで ~ワンワン誕生秘話~ | NHK文研

調査あれこれ 2023年04月06日 (木)

調査からみたコネクテッドテレビの利用実態 ~テレビ画面で何を、どのように見ている?~【研究員の視点】#470

世論調査部(視聴者調査)平田明裕


地上波や衛星放送などの番組が楽しめるこれまでのテレビに、インターネットを接続することでより多くの動画コンテンツを視聴することが可能となりました。今後、インターネットに接続されたテレビ(コネクテッドテレビ)が普及し、テレビ画面でネット動画を視聴する人が広がると、テレビ画面の利用は変わるのでしょうか?今回は、「メディア利用の生活時間調査」の結果からテレビ画面で動画を視聴する人(以下「テレビ動画視聴者」。全体の6%)に焦点をあて、テレビ画面の利用実態や視聴状況を分析しました。

 テレビ動画視聴者 時刻別のテレビ画面利用(30分ごとの平均行為者率の積み上げ・月曜)
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 このグラフは、テレビ動画視聴者が1日の中でテレビ画面をどのように利用しているかを表したものです。0時から24時までの時刻別の行為者率(利用している人の割合)を積み上げたグラフになります。朝の時間帯にテレビ画面で見ているのは「リアルタイム」が圧倒的に多く、7時台は16%に達している一方で、「動画」は1%とほとんど見ていません。その後、午後の時間から夜間にかけて「動画」が増加して21時~22時には23%に達し、「リアルタイム」と同じくらいネット動画を見ていることがわかります。このように、朝の時間帯は「リアルタイム」が中心で、夕方から夜間にかけても「リアルタイム」が増加する一方で、夜間の遅い時間帯は「動画」の視聴が増えていくなど、テレビ動画視聴者は、時間帯によってテレビ画面で何を視聴するか、選択している様子がうかがえます。

 では、テレビ動画視聴者は具体的にどのような状況で、テレビ画面で動画を見ているのでしょうか?ほかのことをしながらテレビを見る「ながら」視聴と、テレビを見る行動だけの「専念」視聴に分けて時間量をみたのが、次のグラフです。「ながら」(51分)と「専念」(57分)は同じくらい、つまり、ほぼ5対5でした。「リアルタイム」の割合(「ながら」「専念」は6対4の割合)ほどではないですが、自分で選んで視聴する「動画」でも、「ながら」視聴が半数近くになる様子がみえてきました。

 テレビ動画視聴者 動画(テレビ)の時間量 ながら・専念(全員平均時間の積み上げ・月曜)
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 では、テレビ画面で動画を見ながら、どのような行動をしているのでしょうか?次のグラフはテレビ動画視聴者が動画視聴と同時に行っている行動をみたものです。最も多いのは、「食事」(21%)で、「SNS(スマホ)」(17%)、「身のまわりの用事」「家事」「会話おしゃべり」(いずれも14%)が続きます。スマホよりも大きい画面で離れて見ることも可能となり、食事、身のまわりの用事、家事をしながら動画を見たり、スマホ携帯でのSNS利用や会話・おしゃべりなどコミュニケーションしながら動画を見たりするなど、家の中でのさまざまな生活シーンで動画を視聴していることがうかがえます。

テレビ動画視聴者 動画(テレビ)との重複行動 行為者率(1日)(上位5項目・月曜)

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 ここまでみてきましたように、テレビ画面で動画を視聴する人は、朝の時間帯はリアルタイムのテレビを見る一方で、夜の遅い時間帯はYouTubeやAmazonプライム・ビデオなどの動画コンテンツを見るなど、時間帯によってリアルタイム視聴とネット動画視聴を使い分けています。また、スマホよりも大きい画面で離れて見ることも可能となり、食事中やスマホでSNSをしながらなど、家の中でのさまざまな生活シーンで動画を視聴している様子がみえてきました。テレビにインターネットを接続したコネクテッドテレビという新しいメディア環境により、人々は、自分の嗜好(しこう)や生活シーンに合わせて、好きなコンテンツを好きなように見ることができるようになりつつあるのかもしれません。今回のテレビ動画視聴者は全体の6%とまだ少数派ですが、今後、コネクテッドテレビが普及しテレビ動画視聴者が増加すると、こうした視聴スタイルが広がっていくのではないかと考えられます。

放送研究と調査2023年3月号」では、そのほかに、テレビ動画視聴者はスマホ携帯やPCタブレットで動画をどのくらい見ているかについても分析しています。ぜひご覧ください!

調査あれこれ 2023年04月05日 (水)

#469 中高生の学校生活、どんな感じ? ~第6回「中学生・高校生の生活と意識調査」から~

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子

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 いよいよ新年度がスタート!新たな友だちや先生との出会いに、期待と不安の入り交じった気持ちでいる中高生の皆さんも多いのではないでしょうか。新しい教科書やノートで心機一転、「勉強頑張るぞ~」と張り切っている人もいるかもしれませんね。
 ところで、いまどきの中高生は、学校や先生、勉強についてどんなふうに感じているのでしょうか。
 文研が昨夏、全国の中高生を対象に実施した世論調査1)の結果をみると、学校が『楽しい(とても+まあ)』と答えたのは、中学生、高校生ともにおよそ9割を占めています。楽しい理由として、「友だちと話したり一緒に何かしたりすること」を挙げた中高生は7割台に上ります。

学校は楽しいか
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 学校といえば、部活動を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「部活動に入っている」と答えたのは、中学生が8割、高校生が7割。このうち、部活動に『満足している(とても+まあ)』という人は、中高ともに9割近くでした。
 それでは先生に対しては、どう思っているのでしょうか?担任の先生が、自分のことを『わかってくれていると思う(よく+まあ)』と答えたのは、中高ともにおよそ8割。身近な担任の先生が自分を理解してくれていたら、安心して学校生活がおくれそうですね。

担任の先生は、自分のことをわかってくれているか
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 さて、勉強についてですが、「一生懸命勉強すれば、将来よい暮らしができるようになると思う」中高生は7割台に上ります。多くの子どもたちが、勉強を頑張れば、豊かな将来が期待できると考えているようです。また、自分の将来に『期待している(とても+ある程度)』という中高生は6割台で、明るい将来展望を思い描いている様子がうかがえます。

「一生懸命勉強すれば、将来よい暮らしができるようになる」と思うか
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 ただ、進学意向についてみると、子どもたちが考える将来像は、親の状況によって少し異なっているようです。 進学の最終目標について尋ねたところ、親の学歴や生活程度2)が高いほど「大学・大学院まで」進学したいという中高生が多くなっています。

進学の最終目標(父親の学歴別)
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進学の最終目標(父親の生活程度別)
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 日本は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均と比べて教育費に占める家計負担の割合が高く、特に高校生・大学生のいる家庭の家計に教育費が重くのしかかっています。学費の負担ができずに大学進学をあきらめる子どもたちが相当数いることも指摘されています。子どもたちの将来が、親の学歴や経済状況によって左右されることがないように、格差の是正や教育費用の負担についての議論を高めていくことも必要ではないでしょうか。

中学生・高校生の生活と意識調査2022の結果は、こちらから!↓↓↓
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/20221216_1.html


1) 第6回「中学生・高校生の生活と意識調査2022」

2) 生活程度については、父母を対象にした調査で、「上」から「下」まで5段階で尋ねているが、このうち「上」と「中の上」を「上」、「中の中」を「中」、「下」と「中の下」を「下」としてまとめ、分析を行った。

メディアの動き 2023年03月31日 (金)

#468 "不偏不党"と"表現の自由"で揺れるBBC 

メディア研究部(海外メディア)税所玲子

世界の「公共放送の母船」とも形容されるイギリスBBC。その看板スポーツ番組に、解説者として出演するサッカー・イングランドの元主将のギャリー・リネカー氏が、政府の移民政策の批判を約890万のフォロワーを持つ個人アカウント上でツイートし、同局のジャーナリズムの原則の1つである「不偏不党」と「表現の自由」をどう両立させるのか大論争になっています。

ロンドンの観光名所、オックスフォード・ストリートから数分のところにあるBBC本部の玄関脇には2.5メートルのジョージ・オーウェルの像があります。1941年から2年間、BBCの対外宣伝放送に携わった作家の横には、「もし自由に意味があるとするとすれば、それは相手が聞きたくないことを告げる権利のことだろう」との言葉が刻まれ、「権力監視」と「表現の自由」をうたっています。

BBC1_W_high.jpg BBC本部の前にあるジョージ・オーウェルの像

もう一つ、BBCのDNAと呼ばれるのが「不偏不党」(impartiality)です1) 。伝統的な二大政党の時代には左右のバランスをとることとも理解されていましたが、政治・社会が多軸・多様な今、「どの立場にもくみせず、偏見のない状態をいう」とBBC関係者は説明しています 2)。この原則は、国王からの「特許状」に明文化され、いかなる勢力にも偏ることなく、事実に基づいた報道を目指す その姿勢が、信頼の源となってきた、とBBCの職員は胸を張ります。

BBC2_W_high.jpg「不偏不党」が明記されているBBCの特許状 
(BBCのホームページより)

今回の論争のきっかけとなったリネカー氏のツイートは、3月7日、イギリス政府が打ち出した移民政策についてのやりとりの中で起きました。英仏海峡を小舟で渡り入国を試みる移民が後を絶たず、政府は対策としてこうした手段で入国した人には亡命申請を認めないという法案を発表しました。
これに対し、難民を自宅に受け入れるなどの支援を行っているリネカー氏は、「1930年代のドイツが使ったのと変わらない言葉で、最も弱い立場の人たちに向けられた残酷な政策だ」と厳しく批判したのです。

BBC3_W_high.jpg問題となったリネカー氏のツイートを伝える英Daily Mail紙 
(Daily Mail ホームページより)

これに対し、与党・保守党の議員から批判の声が上がり、首相官邸の報道官も「受け入れられない」と述べました。一方、ネットでは支持の声が広がりました。

実はリネカー氏の「不規則発言」は今回が初めてではありません。EU離脱や保守党へのロシアからの献金を批判するツイートを繰り返し、ネット時代にあった「不偏不党」のあり方を模索するBBCにとって、その苦悩を象徴するような存在でした。

BBCは、2010年代からソーシャルメディア(SNS)での活用を進めてきました。取材者個人が批判されたり、いわゆる炎上事件が起きたりするリスクは認識しながらも、ネット空間での視聴者との対話が、これからは避けて通れないと判断したのです。

しかし、格差、移民、ポピュリズムなどの課題を抱えたイギリスは、2016年のEUからの離脱を問う国民投票をきっかけに対立が噴出します。国のあり方をめぐる論争は、自分が何を大事に思うのかという「価値」を際立たせ、記者たちは右からも左からも「偏向だ」と批判されることが増えていきます。

そして2019年、難航するEU離脱交渉を終わらせることを公約に掲げて総選挙に勝利したジョンソン首相は、交渉の行方を追及するメディアにいらだち、対決姿勢を強めます。BBCの受信許可料の不払いに対し刑事罰を科す制度の見直しを試みたり、Channel4の民営化計画を打ち出したりするなど揺さぶりをかけました3)

BBC4_W_high.jpgBBCデイビー会長就任を伝えるBBCニュース
「不偏不党を守らないスター出演者の解雇も辞さず」

そんな緊張が漂う中、2020年9月に会長に就任したティム・デイビー氏は、「不偏不党」の徹底を最重要課題に掲げます。当時、欧米では、#MeToo運動や黒人の人権擁護の運動が広がっていましたが、デイビー会長は、報道や社会番組に関わる者は、政治志向を推察される言動はもとより、キャンペーンへの参加も許さない姿勢を打ち出し、SNS利用のルールを厳格化しました。キャスターや記者の中には、管理を嫌い他局に移る人も少なくありません。またSNSでの発信を当然と考える若い職員の間には不満がくすぶっていると伝えられています。

ただ、リネカー氏は、BBCの職員ではなく、フリーランスとして番組に出演しています。リネカー氏は、自分はガイドラインの対象でないと考えていたと主張しています。一方、BBCからすれば、135万ポンド(約2億2000万円)と局で最高報酬を得、抜群の知名度を持つリネカー氏には特別な責任が伴うとの考えがあったようです。

リネカー氏がツイートの削除を拒否したことを受けて、ついにBBCは10日、「SNSの利用について、明確な方針の合意が得られるまで」番組の一時降板を要請したと発表しました。

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リネカー氏を支持する出演者による番組ボイコットを伝える新聞各紙
(BBCのホームページより)

ところが、このBBCの決定に、リネカー氏を支持する他のサッカー番組の司会者や出演者による番組ボイコットが起きました。また一部の選手が、試合後のBBCのインタビューを拒否する考えを選手組合に伝えたため、プレミアリーグは、すべての選手と監督が、リネカー氏を降板させた番組のインタビューを見送る方針を示しました。

土曜日のイギリスは、朝から晩までテレビやラジオでサッカー番組が組まれています。しかし11日は、多くの番組が放送できなくなり、テレビでは文化系番組の再放送で、ラジオではポッドキャストの放送で編成の空白を埋めることを余儀なくされる、異例の事態に陥りました。

BBC6_W_edited.jpgシャープ理事長に対する議会での聴聞の様子を伝えるBBCニュース

この大混乱は、BBCにとって最悪のタイミングで起きました。
今年1月、シャープ理事長がジョンソン元首相の約80万ポンドのローンの保証人の仲介に関わっていたことが発覚。シャープ氏は、ジョンソン氏のロンドン市長時代やスナク首相の財務相時代のアドバイザーを務めていました。保証人の仲介は理事長の選出のさなかの出来事だっただけに 「お友達人事」との批判を浴び、選出のプロセスが適切だったか外部調査が進められていました。
13日には、議会下院でリネカー氏の問題と不偏不党について、文化相に対する緊急質問が行われ、 野党からは、「権力に対しモノを申した人物を降板させるのはおかしい」「BBCへの信頼を傷つけたシャープ氏こそ辞任すべきだ」などの声があがりました。

混乱の収拾を図るため、デイビー会長はリネカー氏と話し合い13日、番組に復活させる方針を示すとともに、SNS利用のルールを見直す考えを示しました。声明の中でデイビー会長は、視聴者に謝罪するとともに「BBCは、特許状で不偏不党を誓っている。まだ表現の自由も同じように大事だと考えている」と述べ、2つの価値のはざまで苦悩していることをあらわにしました。

 BBC7_W_edited.jpgデイビー会長へのBBC記者によるインタビュー動画
(BBCホームページより)

ところでこの騒動をBBCの報道部門は、過去の自局のスキャンダルの時と同様に、客観的に報じています。出張先のアメリカでデイビー会長へのインタビューを行った特派員が、「視聴者はリネカー氏でなくあなたの不偏不党に疑問に投げかけている。政府や与党・保守党、右派のメディアの圧力に屈したのではないか」「BBCにとって不偏不党と同じく信頼も大事だ。その信頼を失った今、辞任すべきではないか」と問う様子を収めた動画は、全編、ネットで公開されています4)

 BBC8_W_edited.jpg BBC外観

誰もがネットを通じて自由に発信できるようになり、多様性が重視される今の社会で、不偏不党はどう実践されるべきか。問題をきっかけに議論が 広がっています。

BBCの元報道局長で、現在、ネットメディアTortoiseを率いるジェームズ・ハーディング氏は、BBCのラジオ番組で、「公金で支えられる放送局が提供するニュースや情報は公平でなければならないが、政治的な問題の判断は個人に委ねられるべきだ。すべての作家、監督、音楽家、スポーツ解説者、科学者、経営者のオピニオンを管理するのは無理がある」と行き過ぎた管理に疑問を呈します。
また外部規制監督機関・放送通信庁(Ofcom)の元会長のパトリシア・ホジソン氏も「BBCのブランドを傷つけないように表現の自由を行使すべきで、そのことによって、視聴者の多様な意見を尊重することにもつながるのではないでしょうか」と述べています5)

一方、偽情報や誤情報が飛び交う時代だからこそ、正確で信頼できる情報が必要で、それを担保する情報の多様性や不偏不党は譲れないとの主張も聞かれます。BBCのデイビー会長はもちろん、元会長のマーク・トンプソン氏も、かつて「不偏不党がなくなるくらいなら、BBCがなくなった方がよい」とまで言い切りました。

BBCの歴史の編さんに携わったウェストミンスター大学のジーン・シートン教授は、「そもそも不偏不党は不完全なものだ」といいます。放送が始まった100年前を振り返り、「当時世界は“新しいメディア”によって、大企業の利益が国民の利益よりも優先されたり、海外のイデオロギーによって世論が影響を受けたり、戦争の宣伝によって政府やメディアに対する国民の不信が高まったり、国民が分断されることが懸念されていた。そうした懸念を克服するために国民の声を反映する場、議論の出発点となる情報が必要だったのだ」と説明します6)

この言葉は、今の時代にも、そのまま当てはまると思います。

日本のメディアが未曾有の災害によって変化したと言われるように、BBCは戦争や政権交代など社会の変化の中で生じる影響から、編集権の独立をいかに守るかという組織防衛の歴史の中で成長してきました。

激動のメディア環境の中で、これまで試され、再構築してきた ジャーナリズムの原則にBBCが向き合い続けることで、ネット時代の不偏不党の姿が見えてくることを期待しています。そして、それは、世界の公共放送にも示唆に富むものになるでしょう。


1)Impartialityは「公平公正」の訳も使用される。本ブログでは、BBCが「予断を持たないバイアスのない状態」との説明を受け、検察官が任務遂行にあたって用いる不偏不党の概念に近いと考え、同訳を使用している。

2)BBCの編集方針に関する議会証言 https://committees.parliament.uk/oralevidence/3201/pdf/h / 編集指針Editorial Guideline で求めるのはDue Impartialityとされ、問題に相応(due)の対応を求めている。意見が対立する問題について同じ秒数を配分する必要はなく、1つの番組でなく放送全体で判断されるものだと説明されている。また21世紀の不偏不党のあり方について検討したBBCの報告書“From Seesaw to Wagon Wheel”(2007)では、不偏不党は、正確性やバランス、公平性、客観性、透明性など様々な要素が組み合わさってできるものだとした上で、「視座の広がり」も重要で「より多くの意見を取り入れることで実現される」と強調している。https://www.johnbridcut.com/documents/seesaw_to_wagon_wheel_report.pdf

3)いずれの政策も、途中で見直しとなり、実現されなかった。

4)Gary Lineker: BBC director general Tim Davie’s interview in full https://www.bbc.com/news/av/uk-64928580

5)Press Gazette, BBC to review social media rules for all staff in bid to resolve Gary Lineker row, March 13 2023

6)Jean Seaton, History of the BBC: impartiality https://www.bbc.co.uk/historyofthebbc/100-voices/inventingthefuture/impartiality/

メディアの動き 2023年03月27日 (月)

#467 平成の放送制度改革を振り返る

 メディア研究部(メディア史研究)村上聖一

  平成(1989年~2019年)の約30年間、インターネットが普及し、放送と通信の融合が進展していく中で、放送制度にも大きな見直しが迫られました。この間、制度改革をめぐってどのような議論が行われ、どのような結論に至ったかについては、『放送研究と調査』で2回にわたってまとめましたので、以下より、ぜひお読みいただければと思います。ここでは、簡単にその内容をご紹介します。

▶ 『放送研究と調査』2023年1月号
  平成の放送制度改革を振り返る(1)放送・通信融合と法体系見直し

▶ 『放送研究と調査』2023年2月号
  平成の放送制度改革を振り返る(2)番組規律をめぐる議論

  従来の制度で問題になったのは、放送と通信が融合する中で、テレビや電話といった業態別の縦割りの法体系では、新たなサービスの創出に支障があるのではないか、という点でした。これについては、2000年代に入り、官邸主導の政策形成が進む中、総務省や放送事業者に加えて、IT戦略本部といった新たなアクター(行為主体)が政策形成に参入しました。そして、以下の図にあるように、縦割りの法体系からレイヤー型(横割り型)の法体系に転換し、規制の緩和を図るべきといった改革案が浮上しました。

2001年の法体系見直しのアイデア
kiseikaikaku.jpg(IT戦略本部IT関連規制改革専門調査会資料)

  これに対して、以下の図は、2010年に実現した放送・通信関連法の再編後の法体系です。この図を見ると、新たなアイデアが採用され、レイヤー型の法体系に移行したと言うことはできるでしょう。一方で、先のアイデアが提示されてから実際の法改正に至るまでに、10年近くの期間がかかったこともわかります。また、図からは読み取れませんが、改正内容を詳しく見ますと、放送での完全なハード・ソフト分離といった改革は見送られ、規制の見直しを含め、法改正は、既存の放送事業者の経営に大きな影響を及ぼさないものとなりました

2010年の放送・通信関連法の再編
soumusho.png(平成27年版情報通信白書)

  改革の中身が変化していった背景には、制度を抜本的に見直すアイデアは新たなアクターによって打ち出されたものの、それが具体化される段階で、所管官庁(総務省)や放送事業者といった従来の政策共同体が大きな影響力を持ったという点があります。そして、そうした政策共同体を中心に検討が進む中で、改正内容が次第に漸進的なものになっていった面があります。

  さらに、平成期の制度改革をめぐって指摘できる問題はこれだけではありません。放送制度の見直しでは、法体系の再編に加えて、メディアが多様化する中でのコンテンツ規律(番組規律)の見直しも重要な課題になりますが、制度の見直しにあたっては、その2つが切り分けられ、異なるアクターによって別々に議論されたということも指摘することができます。そして、コンテンツ規律をめぐる議論は、放送・通信融合への対応というよりも、番組をめぐる個別の問題が発端になって起きることが多く見られました

  例えば、1997年放送法改正でなされた番組審議機関の機能強化では、それに先立って起きた番組をめぐるさまざまな不祥事が存在していました。また、2010年の法体系の再編の際には、通販番組を含め、放送番組の種別の公表を義務づける規制強化がなされましたが、これもその直前の通販番組に対する批判がきっかけでした。

  しかし、放送制度の目的が、究極的には、「放送による表現の自由の確保」や「健全な民主主義の発達」(放送法1条)にあることを考えれば、法体系の見直しにしても、番組規律の見直しにしても、そうした目的を踏まえた上で、双方をどのように組み合わせれば政策目標の達成につながるのか、といった観点からの議論がより求められていたのではないかと指摘することができます。

  放送制度は、令和に入ってからも見直しが続いています。そこでは、近年の情報空間の変容を踏まえた上で、放送政策の目標を改めて確認し、制度のあり方を体系的・総合的に検討していくことが求められていると思います。

 

メディアの動き 2023年03月23日 (木)

#466 テレビのジェンダーバランス~国際女性デーのメディア発信から日常の放送・報道を見直すことを考える~

メディア研究部 青木紀美子・小笠原晶子・熊谷百合子・渡辺誓司

 3月8日は国連が定める「国際女性デー」。2023年もこの日をはさみ、さまざまなメディアで女性の政治参加、働きやすさ、からだのこと、差別の問題など、女性やジェンダーの課題を考える多くの特集や連載が組まれました。

#自分のからだだから

 ハッシュタグ「#自分のカラダだから」(1)では、女性の健康な生き方につながる情報を発信するため、NHKと在京民放6局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ、TOKYO MX)が連携しました。このうちNHKは、Eテレ 「u&i」の『なんでずる休みするの? ~生理』」や特集ドラマ『生理のおじさんとその娘』をはじめ、ドラマや情報番組、報道番組などで幅広く関連するテーマを取り上げています。フジテレビでは男性も加わり、アナウンサー8人が性別に関わる「決めつけ」について考える記事も特集ページ「"私"を生きる~live My life~」(2)に掲載しました。朝日新聞の「ジェンダーを考えるThink Gender」(3)や東京新聞の「ジェンダー 平等 ともに」(4)は、社会が生む性差や性差別について問いかけています。
 こうした特集は、日常的には取り上げることが少ない、あるいは光があたりにくいテーマや課題などについて、シリーズにしたり、ハッシュタグでひもづけたりすることで、読者や視聴者の注意を引き、関心を広げる可能性があります。女性の視点を伝える発信が多いことは、メディアが社会の多様性を反映するという観点からも、男性を含めより多くの人に「気づき」のきっかけをつくるという観点からも歓迎したいことです。一方で、国際女性デーの前後というタイミングを利用しないと伝えられないことがあるのだろうか、常日頃から女性の課題を取り上げ、女性の視点を反映することはできているのだろうか、という懸念も抱きます。
 私たち文研の多様性調査チームは、テレビの番組に登場する人物のジェンダーバランスを継続的に調べ始めています。2021年度の調査(5)ではNHKと在京民放キー局の女性と男性の割合は、番組全般をみるとおよそ4:6、夜9-11時台の主要ニュース番組ではおよそ3:7で男性の割合が高く、年齢層でみると女性は若い年層が多く、男性は中高年層が多いという結果になりました。ニュースに登場する女性は街頭のひとことインタビューなどでは男性と同数に近い一方、肩書ある立場から発言することは男性に比べて大幅に少ないといった偏りがあることもわかりました。
 この傾向はその後、少し変わったのでしょうか?下の図は集計中の2022年度の調査結果です。テレビ番組全般については6月の1週間、NHK総合とEテレ、在京民放キー局のあわせて7チャンネルの登場人物についてメタデータ(6)に記録がある人について集計したものです。女性の割合は2021年度に比べて1ポイント増えていました。

番組全般の出演者

 夜の主要ニュース番組については6月と11月の月~金曜日に登場した人物を調べたものです。女性の割合は番組全般とは逆に1ポイント減っていました。ニュース番組は10日分、番組全般は1週間分の数字なので、増減はどちらも誤差の範囲で、大きな傾向は変わっていなかったというべきかもしれません。より詳しい集計内容については、追ってこちらのブログや文研が出版する『放送研究と調査』でご報告します。

夜のニュース番組 登場人物

 ちなみに日本の総人口をみると、女性は半数以上を占めています。労働力人口でみても、女性は全体の 45%近くを占めています。(7)多くの女性は仕事と子育ての両方の負担を担い、社会を支えています。しかし、非正規雇用の割合が高いということもあって、コロナ禍では解雇や育児負担などでより大きな影響を受けたことがわかっています。ところが、テレビに映し出される世界には女性が少なく、女性の視点が十分には反映されていない可能性を上記のデータは示唆しています。『放送研究と調査』2023年2月号の「"コロナ特別休暇"制度の報道は子育て世帯に届いたのか?(8)のために行ったアンケート調査では、仕事と育児を両立する女性、男性のいずれもがテレビニュースは「多様な意見を届けていない」、「子育てや生活情報が少ない」と感じていることが明らかになっています。
 世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ報告(2022)で日本は調査対象146か国中116位。イギリスのエコノミスト誌が行った「女性の働きやすさ」についての調査では、今年も主要29か国のうち28位でした。メディアが女性の姿や声を反映せず、ロールモデルを示さないことなどでジェンダー・ギャップを固定化し、再生産していないか、考える必要があります。

日本の人口

 2月のブログ記事「北欧メディアに学ぶジェンダー格差解消のヒント(9)では、アイスランド国営放送編集長ソーラ・アルノルスドッティルさんの「人々にとって何がニュースなのかを再定義する必要があるのです」という問題提起を伝えています。『放送研究と調査』の連載「メディアは社会の多様性を反映しているのか➂(10)では、アメリカのメディアが組織・人材とコンテンツの多様性向上をめざしている背景にメディアとしての存続への危機感があることも紹介しました。
 国際女性デーにあわせて組まれた特集や連載、その中で取り上げたテーマや課題、女性の視点が、日常のテレビ番組、新聞記事、メディアの発信内容や価値判断の基準を見直す手がかりになっていくとよいのではないか、と私たちは考えています。それは男性も含めメディアの取材・制作現場にいる人、編集方針を決める権限を持つ人たちの新たな気づきのきっかけになり、問題意識の共有につながるのではないでしょうか。国際女性デーの前後はこうしたメディアの課題を考える機会でもあります。


(1)#自分のカラダだから ──メディア連携で女性の体・心・生き方について考えるコンテンツを集中発信!(NHK、民放各局)
https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=37744
(2)"私"を生きる~live My life~(FNNプライムオンライン)
https://www.fnn.jp/subcategory/live_My_life
(3)ジェンダーを考えるThink Gender(朝日新聞)
https://www.asahi.com/special/thinkgender/?iref=kijiue_bnr
(4)ジェンダー 平等 ともに(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/tags_topic/womensday
(5) 連載 メディアは社会の多様性を反映しているか①
調査報告 テレビのジェンダーバランス(『放送研究と調査』2022年5月号)
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20220501_7.html
(6) エムデータ社のメタデータ記録を利用
(7) 令和3年版働く女性の実情(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/21.html
(8) "コロナ特別休暇"制度の報道は子育て世帯に届いたのか?~「共働き子育て世帯のメディア接触調査」の結果から~(『放送研究と調査』2023年2月号)
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20230201_4.html
(9) 北欧メディアに学ぶジェンダー格差解消のヒント
https://www.nhk.or.jp/bunken-blog/100/480010.html
(10) 連載 メディアは社会の多様性を反映しているか③ 将来に向けた危機感を問うアメリカの事例と専門家の提言(『放送研究と調査』2023年1月号)
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/oversea/20230101_4.html