文研ブログ

放送博物館

放送博物館 2016年05月13日 (金)

#26 冨田勲さんのシンセサイザー

メディア研究部 中尾益巳

今月5日、作曲家でシンセサイザー奏者の冨田勲さんが逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。今回のブログでは、冨田さんとNHKとの関わりと、放送博物館で展示している冨田さんの貴重な“遺品”を紹介します。

冨田さんは、平成12年度(2000年度)NHK放送文化賞という賞を受賞しています。それまでに数多くの番組のテーマ音楽を作り、放送文化の向上に寄与した功績を讃えたものです。

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冨田勲さん(2001年3月  NHK放送文化賞受賞式)

では、そのたくさんのテーマ音楽の一部を見て(聞いて)みましょう。
まずは大河ドラマ。大河ドラマの第1作である「花の生涯」(1963年)をはじめ「天と地と」(1969年)、「新・平家物語」(1972年)、「勝海舟」(1974年)、「徳川家康」(1983年)と5本も。これは池辺晋一郎さんと並んで最多です。
ニュース番組では夜の「ニュースセンター9時」、朝の「ニュースワイド」など、毎日テレビから流れていた音楽も手がけました。
そして1963年から18年半続いた紀行ドキュメンタリー番組「新日本紀行」。番組の記憶はなくても、このメロディに聞き覚えのある方はたくさんいると思います。
http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010176_00000

そしてたぶん、誰もが一度は耳にしたことがある超有名な曲と言えば、これでしょう。
http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009020001_00000
1957年に始まった「きょうの料理」。なんと60年近くも放送され、今も続いています。これから先も不滅のメロディとなるでしょう。

NHKの番組だけでなく、手塚治虫原作のアニメ「ジャングル大帝」のテーマ曲や「たそがれ清兵衛」など山田洋次監督の映画音楽と、数多くの音楽を世に出して来た冨田さんですが、電子音楽の草分けとしても知られ、世界的に高い評価を受けています。
その第1作が、1974年に発表したアルバム「月の光・Snowflakes Are Dancing」です。まだ日本では電子音楽やシンセサイザーという言葉が一般的でなかった時代、巨大なアナログシンセサイザーを用いてクラシック音楽を演奏したこの作品は、アメリカを代表するヒットチャート、ビルボードのクラシック部門で1位となり、日本人として初めてグラミー賞にノミネートされました。
そしてその演奏に使われた貴重なシンセサイザー「MOOGⅢ」が、NHK放送博物館に展示されています。放送文化賞を受賞された方々のゆかりの品を展示するコーナーで見ることができます。
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冨田さんが使用した「MOOGⅢ」(NHK放送博物館)

無数のつまみによって電気的に音を作り、加工・調整していくこの機械。キーボードは展示されていないので、“楽器”には見えないかもしれません。しかしこの後、喜多郎(NHK特集「シルクロード」のテーマなど)やYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)などによって発展していく日本の電子音楽の原点となったのは、間違いなくこのシンセサイザーと冨田勲さんです。音楽史に欠かせない一品をぜひご覧ください。

なお、5月末にはNHKのテレビやFMで冨田勲さんの追悼番組が放送されます。最近は「初音ミク」ともコラボしていた冨田さんの、幅広い音楽の世界を味わうことができます。
http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=05692

                                                                     

NHK放送博物館

休館日    :原則として月曜日、年末年始
入場料    :無料
開館時間:9:30 - 16:30
所在地    :東京都港区愛宕2-1-1  

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(ホームページはこちら)  
                                               

 

放送博物館 2016年03月29日 (火)

#19 愛宕山の桜がそろそろ見頃です。

計画管理部(計画)東山一郎

NHK放送博物館が1月30日にリニューアルオープンしてから、早いものでもう2か月です。すでに2万人を超える多くの方々にご来館いただいています。

放送博物館がある愛宕山は、東京23区内にある自然の山として最も高く(標高25.7m)、1925年にラジオ本放送が始まった“放送のふるさと”ですが、実は桜の名所としても知られています。
ですから愛宕山に、そして放送博物館にお越しになるには、いま絶好の季節を迎えているのです。

そこで今回は「愛宕山の桜」にちなんで、放送博物館の所蔵資料から2点ご紹介しますね。
(残念ながら2点とも展示はしておりません。ごめんなさい。)  
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左の浮世絵は、三代目歌川広重による「
東京開華名所図絵之内 芝あたご下」で、明治初期の作品です。桜の名所としての歴史が意外に古いことがわかります。(山頂にある愛宕神社に登るこの階段は「出世の石段」と呼ばれ有名です。)
右は、昭和初期のJOAK
(東京中央放送局)の資料(絵葉書セットの表紙部分)です。ラジオ放送用の鉄塔が立つ愛宕山に、桜のデザインがほどこされています。

そんな愛宕山の桜の、最新情報はこちら。今日のお昼に撮影した写真です。
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左が放送博物館入口前の桜
五分咲きくらいですかね。
右側は愛宕神社側の桜です。こちらはまだまだこれからという感じです。

放送博物館入口前の桜は満開になるとこんな感じです。(写真は、「NHK放送博物館60年特別展」で展示中のもの)
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今週末、来週くらいが、桜の見頃かと思いますので、ぜひこの機会に愛宕山に足を運んでみてください。そして、愛宕山と放送の歴史が盛りだくさんの放送博物館をあわせてぜひご覧ください。入場無料です。(「NHK放送博物館60年特別展」は3階企画展示室で開催中! )

なお、文研が刊行している「放送研究と調査」4月号(今月号から表紙のデザインが変わりました!)では「リニューアル!NHK放送博物館」の特集記事を掲載しています。元NHKディレクターの相田洋さんが展示を観覧しながら語る放送史エピソードも興味深いので、こちらもお読みいただけると嬉しいです。

放送博物館の所在地や開館時間は下記のとおりです。
                                                                                                                                                            

NHK放送博物館
休館日    :原則として月曜日、年末年始
入場料    :無料
開館時間:9:30 - 16:30
所在地    :東京都港区愛宕2-1-1 

       0128-chizu.gif
(ホームページはこちら)  
                                                                                                        

放送博物館 2016年02月02日 (火)

#4 放送博物館リニューアル! 主な展示をご紹介

メディア研究部(メディア史研究) 村上聖一

約1年かけてリニューアルを進めてきたNHK放送博物館が1月30日(土)にオープンしました
写真は当日午前9時半のオープン直前の様子です。小雨が降るあいにくの天気になりましたが、
開館を待ちかまえる人たちが並んでいました。
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フロアごとの展示構成は、放送博物館のホームページをご確認いただくとして、
今回は展示からいくつかピックアップしてご紹介しましょう。

1階の入口を過ぎてやや進みますと、大きな絵巻物のような画面が目に入ってきます。
これは、放送の歴史をイラストで紹介する「放送歴史絵図」です。
1928年に始まったラジオ体操、1964年の東京オリンピックなど、タッチパネルに触れると画像や映像が映し出され、
当時の放送の様子を知ることができます。
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2階は、「テレビドラマの世界」「オリンピックの感動を伝える」「NHKと音楽」「子ども番組がいっぱい」
4つのテーマで構成されています。写真は紅白歌合戦を紹介するコーナーです。
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子ども番組のコーナーには、おなじみの(懐かしの?)キャラクターが並んでいます。
右は1982年から1992年まで放送された「にこにこ、ぷん」。
『おかあさんといっしょ』の中で最も長く活躍したキャラクターたちです。
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2階には放送体験コーナーもあります。
ここでは、ニュースや気象情報がどのように放送されているのかを、
キャスターやディレクター、気象予報士といった役割を分担しながら、体験することができます。
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3階は歴史展示のコーナーです。
過去の映像がちりばめられた「ヒストリーゲート」をくぐり、コーナーを巡っていくことで、
1920年代から現在に至るまでの90年余りの放送の歴史を振り返ることができます。
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展示では、ラジオ放送の草創期に使われていたマイクや、
1945年の「玉音放送」の収録の際に使用された録音盤など、貴重な資料が並んでいます。
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また、家庭へのテレビの普及が進んだ1960年代のお茶の間を体感していただけるようなコーナーも設けました。
こうした「体感」コーナーをあちこちに配置しているのも、今回のリニューアルで変わった点です。
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今回はごく一部しかご紹介できませんでしたが、
放送の多様な歴史を反映して、展示はバラエティに富んだものになっています。
ぜひ一度ご覧ください。

放送博物館の所在地や開館時間は次のとおりです。
                                                                                                       

NHK放送博物館
休館日    :原則として月曜日、年末年始
入場料    :無料
開館時間:9:30 - 16:30
所在地    :東京都港区愛宕2-1-1 
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(ホームページはこちら)  

 

                                                                                                        

放送博物館 2016年01月29日 (金)

#3 愛宕山の放送博物館、リニューアルオープン!

計画管理部(計画)東山一郎

去年2月からリニューアル工事を行ってきたNHK放送博物館(東京都港区愛宕)が、
いよいよ1月30日(土)にオープンします。
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今回のリニューアルでは、歴史展示(3階)とドラマ・音楽などのテーマ展示(2階)を見やすく一新し、
3万点を超える資料から厳選した500点余りを展示するとともに、 “体験”型の展示を充実させました。
館内のホールも“究極のテレビ”8Kスーパーハイビジョンを体感できる「愛宕山8Kシアター」に生まれ変わりました。
放送の過去・現在・未来を幅広い世代の方々に感じ取っていただければと考えています。

展示がどのように変わったかは、まずは博物館で実際にご覧いただくことにして、
きょうは放送博物館と愛宕山の歴史を簡単にご紹介します。
0129-1-2.jpg 東京放送局(愛宕山)局舎模型

日本で放送が始まったのは、1925(大正14)年3月22日。
当初は東京・芝浦の仮放送所からラジオ放送が行われていましたが、
ほどなく同年7月には愛宕山で本放送が始まり、愛宕山は“放送のふるさと”と呼ばれるようになりました。
(ちなみに、港区にある愛宕山は標高25.7m。東京23区内の自然の山では最高峰です)


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左の写真は開局当時の東京放送局です。
2本の大きな鉄塔に挟まれた建物には、JOAKの文字が見えます。
この愛宕山では、2・26事件(1936年)の際には放送局が襲われるかもしれないということで、
騎兵隊に警護されるといった出来事もありました(写真右)。
愛宕山からの放送は、1939年に東京・内幸町の放送会館に移転するまで14年余り続きました。

戦後、この旧JOAK局舎は占領軍に接収されましたが、
占領終結後の1955年2月、文研が目黒から移転してきました。
そして文研が約1年間かけて準備し、翌年3月に開館したのが放送博物館です。
写真は開館直後の展示室の様子です。
開局当時の建物が生かされ、アーチ型の間仕切り壁や小さな窓が時代を感じさせます。

hidari.jpg migi.jpg

この東京放送局の旧局舎が建て替えられて、現在の建物になったのが1968年のことです。
リニューアル後も、放送博物館はこの建物を生かして展示を行っていきます。
20160129-7-1.jpg 1968年竣工時の放送博物館

0129-7-2.jpg  現在の放送博物館

放送博物館の所在地や開館時間は次のとおりです。
リニューアルオープンは1月30日(土)午前9時30分です。どうぞお越しください!
                                                                                                        
NHK放送博物館
休館日    :原則として月曜日、年末年始
入場料    :無料
開館時間:9:30 - 16:30
所在地    :東京都港区愛宕2-1-1 
       0128-chizu.gif
(ホームページはこちら)  

                                                                                                        


来週のブログでは、リニューアルオープン後の放送博物館の様子をお伝えするとともに、
展示からいくつかピックアップしてご紹介します。
 

文研フォーラム 2016年01月20日 (水)

#1 文研ブログ、始めます! 

メディア研究部・中尾益巳

みなさん、はじめまして。文研ブログです。

と言っても、このブログを読んでいるどれだけの方が
この「文研」についてご存知なのかわからないので、まずは自己紹介をします。
文研の本名は、NHK放送文化研究所。実は誕生はかなり古く1946年。
太平洋戦争が終わった翌年に作られ、今年でちょうど70年を迎えます。
そしてその文研が何をやっているのかと言うと…
非常に多岐に渡るのでこの場で全てを説明することは不可能です。
と言うか、それをお知らせするためにこのブログを作った訳なので、
皆さんにはこのブログをボチボチ読んでいただきながら
「ブンケンってどんな人がどんなことやってるの?」ということを知っていただければ幸いです。
で、とりあえず、皆さんにお知らせしたいことが3つあります。

その1)このホームページが新しくなりました!

文研の設立70周年を記念して?という訳ではないのですが、結構リニューアルしています。
と言ってもこれまでこのページをご覧になった方はそれほど多くはないかもしれませんが・・・。
遅ればせながらスマホ対応にしたり(まだ一部ですが)、
検索の仕方を改善したりと、ちょっと使いやすくなっていると思います。
そしてそのリニューアルの目玉として?新しく作ったのがこのブログです。

その2)NHK放送
博物館が新しくなります!

文研NHK放送センターのある渋谷ではなく、港区愛宕にあります。
そしてその近くの愛宕山(自然の地形の山としては東京23区内で最高峰 標高25.7m!)
頂上にあるのがNHK放送博物館
博物館.jpg
かつて初期のラジオ放送所だったこの地では、
放送の歴史や古くからの機材、番組ライブラリーを公開してきましたが、
このほど展示を一新し、1月30日にリニューアルオープンします。
博物館ホームページはこちらですが、このブログでも見どころをご紹介していきます。

その3)文研フォーラムが開かれます!

文研が行っている放送やメディアに関する研究や世論調査などの成果は
月刊誌「放送研究と調査」(通称“月報”)や「NHK放送文化研究所年報」(もちろん“年報”)で
発表しています。このほか毎年春には公開の研究発表会を開いています。
それが「文研フォーラム」です。
フォーラム2016ロゴ.png
開催は3月1日(火)〜3日(木)で参加無料です。2月2日から参加受付が始まります。
詳しくはこちらをご覧ください。プログラムの内容はこのブログでもご紹介。
発表やシンポジウムの担当者が見どころをPRしますので、
興味を持った方は是非お申込み下さい。

このブログ、文研の研究員が交代で書き、週2回を目処に更新していきますが、
みんなが忙しい場合は、一応ブログ編集長の私、中尾が担当します。
ではこれからどうぞよろしくお願いいたします。