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文研フォーラム

文研フォーラム 2017年02月03日 (金)

#64 テレビのネット同時配信 議論はどこに向かっていくのか?

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

2月2日(木)、NHKは今後の受信料制度の在り方について検討するため、
外部有識者による検討委員会を設置したと発表しました。
テレビ放送の内容をネットにそのまま配信する、いわゆる同時配信にかかる費用を
どのように負担してもらうのかなどについて議論してもらうとしています。

今NHKでは、災害時やオリンピックなどでは同時配信を行っていますが、
“常時”、つまりチャンネル丸ごとを配信することは放送法で認められていません。
しかし今後、人々がネット上で動画を視聴する流れが更に広がっていくとみられる中、
NHKでは、一昨年11月に始まった総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会(諸課題検討会)」において、
常時同時配信が出来るよう法律の改正を求め、議論が続いています。
そして今回、NHK自らも、法律が改正された場合を見据えた検討を開始することになりました。

NHKがこの発表を行ったちょうど同じ日、
総務省では、諸課題検討会とはまた別の会議の場で同時配信に関する議論が行われていました。
情報通信審議会(情通審)の「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」です。
この委員会は昨年11月に開始され、2日は第4回目の会合でした。

このように、総務省では今、2つの会議の場で同時配信について議論が行われています。
放送法に関わるNHKの問題を主に扱うのが諸課題検討会、
広く同時配信全般の課題の整理と解決の道筋について議論するのが情通審、と
2つの会議で議論を仕分けつつ、相互に連携をとって議論を積み上げていこうというのが総務省のねらいのようです。

そもそも大前提として、同時配信については、
欧米や韓国などの国々では数~10年前から一般的なサービスとして定着しているにも関わらず、
日本では、NHKだけでなく地上波民放においても、チャンネルを丸ごと同時配信している局がないという状況にあります。
(実験的試みはNHKとTOKYO MXで実施中。)
地上波民放はNHKとは異なり、制度的に同時配信を行うことは可能ですが、行っていません。
なぜ日本では同時配信が行われてこなかったのか、このことについては、
『放送研究と調査』2016年12月号の「「これからのテレビ」を巡る動向を整理するVlo.9でまとめていますのでご参照ください。

筆者は上記の総務省の2つの会議の傍聴や取材を続けていますが、
両会議で有識者から出されている意見は、
「テレビ離れが進む中、できるだけ早く同時配信については実施すべき」
「実施するならNHKと民放一緒で、できるだけ1つのプラットフォームが望ましい」
という趣旨が多くを占めています。
総論では、これらの意見に対する反対はあまりないのですが、
なかなかそこから先に議論は進まず、2つの会議とも足踏み状態が続いているように思います。

今後どのように2つの会議の議論は進んでいくのでしょうか。
常時同時配信の実現に向けて法改正を要望しているNHKと、
動画配信サービス全体のビジネスモデル像を構築する中で、
同時配信をどう位置づけていくのかを考えていきたい地上波民放とのアプローチの違いをどのように調整していくのでしょうか。
この他にも、権利処理や技術的要件などの課題も山積しています。
引き続き議論に注目していきたいと思います。

一方で、筆者は、放送と同じ番組をそのまま配信する同時配信というサービスが
テレビ離れをした人々に対するネットを活用したアプローチの答えとしてベストなのかどうかについては疑問を持っています。
これだけ多様な動画サービスがネット上に乱立する今、
同時配信のみをゴールとして議論を進めるのではなく、
同時配信も含めた、放送事業者のネット展開全体のあるべき姿を議論することこそが、
一見、遠回りのようにみえて、結果的に収れんしていく議論ができるのではないか――、そう思うのは筆者だけでしょうか。

文研では3月1日~3日、「文研フォーラム」で数々の報告やシンポジウムを実施しますが、
3日午後には、総務省の放送行政担当の大臣官房審議官との対論を企画しています。
同時配信についても、総務省の率直なご見解を伺う予定です。
この他、最新の世論調査の結果なども報告しますので、皆様のご参加をお待ちしています。

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(参加申し込みはこちらから↓)

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文研フォーラム 2017年02月01日 (水)

#63 本日申し込み開始!!ようこそ「NHK文研フォーラム2017」へ

計画管理部(計画) 吉田理恵

いよいよ今日から2月。本格的な春の訪れが待ち遠しいですね。さて突然ですが、今日(2月1日)は何の日でしょう???


 ①テレビ放送開始記念日
 ②「おんな城主直虎」ゆかりの井伊直政の命日
 ③プロ野球キャンプイン


 
クイズの答えは最後にご覧いただくとして、今日はもう1つ!
NHK文研フォーラム2017」申し込み開始日でもあるのです(タイトルですっかりネタばれしていますが)。

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ところで「文研フォーラム」って??!!われわれ放送文化研究所が年に1度、総力を挙げてお送りしている、研究成果の発表やシンポジウムです。今年は、ちょうど1か月後の3月1日(水)から3日間、東京・千代田放送会館にて開催します。
今回のテーマは、「いま考える メディアのちから、メディアの役割」。放送やメディアをめぐる環境、そして人々の意識も大きく変わる今、改めて足元を見つめ直し、そのうえでメディアは何ができるのか、何をすべきなのかを、ご来場の皆さまと一緒に考えたい。そうした思いを込めました。内外のメディア関係者や研究者、ドキュメンタリー制作の巨匠の方々、パラリンピアンの方など、豪華なゲストをお招きし、文研の研究員とともに考えます。
具体的なプログラムはこちら
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(クリックするとPDFファイルが開きます)

初日の「東京2020オリンピック・パラリンピックへ」を皮切りに、2日め以降も、アメリカ大統領選でのテレビメディアの取り組みや、テレビドキュメンタリーの“作家性”を考える制作者研究BBCのEU国民投票報道などなど、そしてラストの「これからのテレビを考える」まで、さまざまな角度と切り口で、メディアの現在と将来に迫ります。

「あ、これ参加してみたいな」というプログラムはありましたか?そんなあなた、今すぐこのページを開いて、「申し込み」ボタンをポチっとクリックしてください。お申し込みは先着順。定員に達したプログラムは受付を終了してしまうので、お早めに!
さあ、ぜひご一緒に、放送そしてメディアの現在と将来に、思いを馳せてみませんか?文研一同、首を長くしてみなさまのお越しをお待ちしております。

最後に冒頭のクイズの答え。正解は①②③全部でした!!

文研フォーラム 2016年07月29日 (金)

#38 東日本大震災から5年 NHK文研フォーラム

メディア研究部(メディア動向) 山口 勝

「震災アーカイブ」をご存じですか?
地震、津波、原発事故という未曽有の東日本大震災をきっかけに、災害を記録し教訓を広く未来に伝えようと、震災の写真や資料などをデジタルで収集・保存・公開する取り組みが広がりました。誰もがネットからアクセスすることができます。
あの日から5年を迎えた3月、私は、NHK文研フォーラム「東日本大震災から5年 “伝えて活かす“震災アーカイブのこれから」と題したシンポジウムを企画しました。『放送研究と調査』7月号に報告とその後の熊本地震をめぐる防災とメディアの動きをまとめました。

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NHK文研フォーラムの様子。
2枚目は、NHK NMAPS。アーカイブされた災害データを可視化するデジタル地球儀。防災・減災報道に欠かせない。

東北地方沿岸の被災地では、所によって10mを超えるかさ上げ工事が進み、風景が一変しています。過去と現在を結び、未来を考える復興に、震災アーカイブの資料は欠かせません。また震災の様子をネットで見るだけでなく、震災学習用のアプリやリアルタイム情報と統合した防災情報伝達に、アーカイブのデータを利活用する動きも始まっています。

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NPOみらいサポート石巻が制作した「石巻津波伝承ARアプリ
今話題の“あのゲーム”同様、その場に行くと、震災当時の映像や画像などが再生される。

一方で、集中復興期間の5年を前に、資金難などから補助金で作られたアーカイブや企業アーカイブの閉鎖が相次いだのも事実です。シンポジウムでは「利活用」と「持続性」をキーワードに、震災アーカイブの「」を見つめ「これから」を展望しました。アーカイブの担い手は、大学、自治体、国、メディア、NPOなどです。では、使い手、ユーザーは誰なのでしょうか。「誰が、何のために、どう使うのか」。「見る」だけでなく「使う」ことで持続されるデジタルアーカイブの世界。利活用を進めるためにオープン化することはできるのか。公共放送から公共メディアへの進化を見据えるNHKにとっても、インターネット時代の公共性やメディアの役割を考える上で重要な議論が展開されました。
パネリストは、今村文彦 東北大学災害科学国際研究所所長、小野史典 多賀城市地域コミュニティ課長、諏訪康子 国立国会図書館主任司書、渡邉英徳 首都大学東京准教授、倉又俊夫 NHKアーカイブス部チーフプロデューサー、コメンテーターは、吉見俊哉 東京大学大学院教授、司会・報告は山口勝が務めました。
また、4月の熊本地震をうけたメディアの動きについても加筆しました。

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熊本地震(前震)直後の、Yahoo!防災速報アプリの画面。
NHKニュース映像(ライブ)のタブがあった。

ネットの世界の変化は早く、6月20日には、NHKニュース防災アプリの提供が始まっています。
「放送研究と調査」8月号のメディア・フォーカスもご覧ください。

文研フォーラム 2016年06月17日 (金)

#31 OTTシンポジウムの"採録"はOTT?

メディア研究部(海外メディア研究) 柴田 厚


_MG_9466.JPG文研では、研究員が論文や報告を書くほかに、学会やシンポジウムに参加したり発表したりすることも重要な仕事です。今年3月に開いた「NHK文研フォーラム」では、いまが旬のテーマ、“OTT(over-the-top)サービス”を取り上げ、海外のゲストなどを招いて、シンポジウム『OTTはメディア産業をどう変えるか』を行いました。

OTTとは、視聴者・ユーザーがテレビ番組や映画など好きなコンテンツを、好きな時に、好きな場所で、好きなデバイスで、インターネット経由で視聴できるものです。つまり、テレビや映画の最大の弱点だった“再現性”を担保した新しいサービスです。日本では去年、Netflixがサービスを開始して話題になりました。

シンポジウムは、とりあえず無事終了しました。私は、もろもろの事前準備、当日の司会などで疲れましたが、次はそれを文章化する“採録”です。当日、会場にお越しいただけなかった方にも、議論の中身や情報、知見を共有していただくためです。私は当初、「シンポの内容を“書き起こし”して、それを再構成すればいいだろう」くらいにタカをくくっていました。

しかし、実際に作業を始めてみると、それでは全く立ち行かないことがわかりました。パネルディスカッションは常に論理的に進むわけではありません。質問に対する答えが思わぬ方向に行ったり、発言が尻切れトンボになったり、議論が予想外のところで盛り上がったり沈滞したりと、ハプニングの連続です。書き起こし文をそのまま原稿化しても意味が通らないことが、遅ればせながらわかりました。おまけに、パネリスト3人のうち2人が英語圏の人という言葉の問題もありました。

作業中は「シンポの実施だけで充分なのに。採録原稿なんて余計だ…」と思っていました。しかし、難渋の末に出来上がった原稿を読んでみて、「やっぱり採録をやって良かった」と思いました。それは、“ライブ”のシンポジウムの場では理解できなかったり、落ちてしまったりしていた大切な情報や論点を拾い集め、整理し、文字に残すことができたからです。会場に来られなかった人に共有してもらうことはもちろん重要ですが、一番得をしたのは、私自身かもしれません。シンポジウムだけだったら、このテーマをこれほど深く考えることはなかったでしょう。

そして、これって、一種のOTTじゃん…」と思い至りました。つまり、生のシンポジウムに来られなかった人にも追体験してもらえる点、そして時間をおくと新しい発見もあるという点において、です。

いまテレビ局が躍起になっているのは、感動する番組や重要な報道を、一過性で終わらせず、より多くの人に共有してもらうための仕組み作りです。生(ライブ)で体験することが理想ですが、それができなかった人にも何とか届けることが、作る側と見る側の両方のメリットになるからです。

我々、文研の研究員が日々行っている「原稿を書く、文字に残す」という仕事も、いつでも立ち戻って見直すことができ、時の経過が新たな視点を生み出す(かもしれない)という意味で、実は“OTT”と同じだということを、今回の採録作業で改めて認識した次第です。いまさらながらで、お恥ずかしい話ですが…。

「そんなに言うなら、どんな原稿か読んでみるか」と思っていただければ、このブログは成功です。「なんだ、この程度のデキか?」というご批判は覚悟の上で、興味がおありの方はぜひ
『放送研究と調査6月号』をご覧ください。
(ウェブ上では、7月に文研ホームページで全文を公開します。)

文研フォーラム 2016年03月11日 (金)

#15 文研フォーラム報告② 「放送100年史」「新・アクセント辞典」「震災アーカイブ」

メディア研究部 中尾益巳

前回に続き、先週開催された「NHK文研フォーラム2016」の報告です。2日目、3日目から3つのプログラムについて簡単にお伝えします。

2日目
C ワークショップ まだ先?既に準備期間?「放送100年史を構想する」
フォーラムの7つのプログラムの中で唯一、ホールではなく会議室で行われた少人数のワークショップでした。ラジオ第一声の放送開始から100年経つ2025年にどのような手法で歴史をまとめ発表するのか、9年前の今から考えようという、先の長いプロジェクトの第一歩です。
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まず問題提起として、東京大学大学院情報学環の松山秀明特任助教がNHKや民放各社がこれまで発行してきた放送史を振り返り、100年史のいくつかの選択肢を示しました。それに対しコメンテーターの丹羽美之准教授はコンテンツ重視の「文化史、社会史としての放送史」を提案。社史研究家の村橋勝子さんの「社史はその会社が関わる領域のディープな資料集」という専門家ならではの言葉も奥深いものでした。さて9年先、放送はどうなっているのでしょうか?
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 新・NHKアクセント辞典 ポイント解説! ~改訂から見える“放送のことば”~
今年、アナウンサーやナレーター必携の「NHK日本語発音アクセント辞典」が18年ぶりに大改訂されます。どこがどう変わるのかを、改訂の中心となったメディア研究部 放送用語・表現グループの塩田雄大が解説すると、 “ことばおじさん”こと元NHKアナウンサーの梅津正樹さんが、新しく採用されるアクセントに疑問や反論をぶつけ、予想外の熱い論争が繰り広げられました。ラジオやナレーションの場で辞典(アプリ)を欠かせないユーザー代表・秀島史香さんは両者の間に入りながらも、日本語の面白さを改めて感じていたようです。なお、このプログラムは後日、動画で公開する予定です。お楽しみに!

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3日目
G 東日本大震災から5年 “伝えて活かす”震災アーカイブのこれから
3日間のフォーラムの最後は、震災から5年を迎えた今だからこそ語り合うシンポジウム。大学や自治体、国会図書館そしてNHKなどで写真や映像のデジタルアーカイブを担当している専門家が集まり、「持続性」と「利活用」をテーマとして語り合いました。
登壇者は全部で7人もいましたが、話が分散することはなく、記憶を未来につないで再びの災害を防ぐためにアーカイブを使っていこうという目的は一致。熱のこもった発言が続きました。特に首都大学東京の渡邉英徳准教授はアーカイブをグラフィカルなデータコンテンツとして見せる手法を紹介。観客の関心を集めていました。このシンポジウムは後日、文研の月刊誌「放送研究と調査」でもお伝えする予定です。
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3日間の参加者数はのべ1,312人となりました。これは近年ではかなり多い数字です。会場でのアンケートでも非常に好評でした。ご参加いただいた皆様、改めて御礼申し上げます。上述したように、いくつかのテーマはこれから「放送研究と調査」や動画でご紹介していきますので、ご来場されていない方もぜひご覧ください。

文研フォーラム 2016年03月08日 (火)

#14 文研フォーラム報告① 「OTT」&「これからのテレビ」

メディア研究部 中尾益巳

3月1日から3日まで、東京・千代田区の千代田放送会館で
「NHK文研フォーラム2016が開かれました。会場にお越しいただいたみなさま。本当にどうもありがとうございました。全部を紹介するのは無理ですが、いくつかのプログラムについて内容を簡単に報告したいと思います。
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1日目
A OTTはメディア産業をどう変えるか~欧米最新事情、そして「グローバル戦略」について考える~
このプログラムは、文研メディア研究部海外研究グループの3人の報告と、海外事業者のパネリスト2人のプレゼンテーション、そして内外のコンテンツ配信事情に詳しいITジャーナリスト、西田宗千佳さんのコメントで進行しました。ほんのエッセンス、印象的な一言を綴ります。
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【文研・柴田厚(アメリカ担当)】
アメリカでは3大OTT(Netflix、Hulu、Amazon)の他にCBS、HBOなど既存の放送事業者が運営するOTTも増え、今後「協力と競合」が進んでいくだろう。(詳しくは『放送研究と調査』3月号に掲載されています)

【文研・田中孝宜(イギリス担当)】
NetflixとAmazonが進出したが、その前から公共放送BBCのiPlayerをはじめ商業放送ITV、衛星放送SKYなど放送事業者独自のOTTが普及しているため、それほど影響はない。

【Amazon Japan ジェームズ・ファレル氏】
映像コンテンツ配信だけでなく、DVD、本やマンガなどの書籍、番組関連グッズ販売などを合わせたサービスをできるのがamazonの強み。妖怪ウォッチの配達用BOXも人気。

【BBC Worldwide デビッド・ウィーランド氏】
iPlayerは定着。16~24歳でテレビ放送の視聴者は16%減少している。若い視聴者のためにBBC3(若者向けチャンネル)はオンライン配信のみでtwitterやInstagramとリンク。

【文研・山田賢一(中国担当)】
ネット動画サイトの誕生は早く2004年から。現在大手3社と放送事業者の配信サービスなどが競合しながら自主制作、課金化、モバイル化が進行。

【西田宗千佳氏(ITジャーナリスト)】
2020年に注目。災害の多い日本で放送はなくならない。しかし今の10代20代が大人になったらテレビはドミナントな存在ではなくなる。

B 「文研調査で探る動画利用者像」
  「これからのテレビ」はどこに向かうのか?~2030年を見据えて~

まず世論調査部の塚本恭子が、「10代から50代までの男女がネットの動画サービスをどのように見ているか」の最新調査結果を報告しました。中にはこんな興味深い発見も。

20代は「通勤通学中」「昼休みなど」「食事中」「寝る前」などの場面ごとに動画を使い分けている。通勤通学中に見るのは、細切れや音声だけでもOKな「音楽動画」や「数秒の投稿動画」など。
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続いて月刊誌「放送研究と調査」で「『これからのテレビ』を巡る動向を整理する」を不定期に連載しているメディア研究部の村上圭子が発表。昨年大きく動いたVODサービスのまとめや、今年の展開が予想される同時配信サービスや4K・8Kに関する最新状況を報告しました。そのいくつかの項目については、2月号に掲載した「Vol.7」がPDFとして全文公開されているので
こちらをご覧ください。
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後半は放送行政を担当している総務省大臣官房審議官の吉田眞人氏を迎え、今後の展開について聞きました。参加者からの質問を含め、なかなかはっきりと答えにくい内容もありましたが、次の世代の人たちに役に立つことを進めて行きたいというスタンスで話していました。詳しくは後日、村上のブログでお伝えします。
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次回は2日目、3日目のプログラムからご紹介します。

文研フォーラム 2016年02月23日 (火)

#11 文研フォーラム紹介⑥ 「放送100年」についてワークショップを開くわけ 

メディア研究部(メディア史研究) 宮田 章

いきなり偉い人の格言ですみませんが、「歴史は現在と過去との対話である」という言葉があります(イギリスの歴史家E・H・カー)。
過去の出来事を語るという営みは、必ず、それが語られる時代(=現在)の影響を受けるという意味です。
たとえば、結婚に至った恋愛を、家族がうまくいっている時に回想する場合と、
そうでないときに振り返る場合とでは回想の内容とその意味づけに違いが出てくるでしょう。
そもそも過去を振り返ろうとする意欲そのものが、現在の状況に影響を受けるといってよいかもしれません。
3月2日の午前10時から予定されている文研フォーラムのプログラム
まだ先?既に準備期間?「放送100年史」を構想する は、
2025年に来たるべき「放送100年」の節目に、私たちは放送の過去とどういう対話をするのだろうか、
そのことを少し早いかもしれないけれど放送91年目の今から考えていこうというワークショップです。
NHKは、これまで放送40年、50年、また20世紀から21世紀への変わり目のタイミングで、
それぞれ放送史を振り返る大部の書籍を発行しています。
各書の序文ではその当時のNHK会長が放送を取り囲んでいたそれぞれの「現在」について言及しています。
このブログは案外めったにない機会かもしれないので、
ここに歴代三人の会長が踏まえた三つの「現在」を並べてみることにしましょう。

「わが国における放送が開始されてから、四十年の歳月を迎えようとしている。今日に至るまでの放送の歩みをふりかえると、その間、放送事業は多くの起伏曲折の移りかわりをとげているが、今や放送史上でも空前の隆盛発展をみるに至ったのである。」
(『日本放送史』序 前田義徳会長 1965年)


「五十年の歩みを顧みると、放送はラジオからテレビ、FM、カラーテレビへと、メディアとしての進歩を遂げながら、報道に、教育・教養に、娯楽に、広く国民生活とかかわりあい、社会事象に関連しつつ発展し、今や、衛星中継時代から放送衛星の開発、あるいは新技術による可能性の追求が進められている。」
(『放送五十年史』序 坂本朝一会長 1977年)

「「デジタル新世紀」とも言われる21世紀は「デジタル放送」の本格化で幕を開けました。衛星放送に続いて地上波テレビもデジタルに切り替わります。テレビは高画質・高音響のハイビジョン、多チャンネル、双方向という画期的な特性を発揮することになります。・・(中略)・・パソコンと携帯電話の急速な普及やブロードバンドの導入によって、テレビ受信機以外にも多様な端末でテレビ番組が見られるようになり、視聴者の皆さんからの発信も可能になります。」
(『20世紀放送史』序 海老沢勝二会長 2001年)

『日本放送史』『放送五十年史』『20世紀放送史』の各史書は、
それぞれ上記のようなその時の「現在」とそれに至る「過去」との対話でした。
『日本放送史』ではまだ現れず、『放送50年史』で初めて前景化する技術革新とそれに伴うメディア環境の変化への言及が、
『20世紀放送史』ではほぼ全面化しているのが私には印象的です。

2025年に現れる「現在」とはどんな状況なのでしょう。
9年後の未来を現時点でつぶさに予測することは困難です。
ただ今年の文研フォーラムの他のプログラムからもうかがえるように、技術革新とそれに伴うメディア環境の変化は今まで以上に急速かつ激烈です。
もしかすると、2025年における「現在と過去との対話」の中では、
これまで91年積み重ねてきた放送の「過去」の意味が根本的に変わる可能性さえあるかもしれません。

「放送100年史」を構想する3月2日のワークショップは、そんな急速な変化の時代だからこそ「過去との対話」を大事にしようという意思表示です。
べつに始終とは言いませんが、たまには「過去」と対話して自分を意味づけないと「現在」はやせてしまいます。
やせたからだで、激烈な変化の波にもまれた時、私たちは自分を見失ってしまうかもしれません。
実際私など、既にずいぶん長い間「失われた○年」を過ごしている気がします。
(まあ私事はともかく)100年という時期的な節目は、放送の現在と過去とを結び直す良い機会であることは間違いありません。
9年後の「現在と過去との対話」を少しでも実のあるものにするために、
今から準備するのも悪くないと考えてこのワークショップを開こうと考えました。
ここでは何だか内面的な話になってしまいましたが、ワークショップそのものはもう少し具体的、実務的な話になる予定です。
諸々ご了解の上、ご興味を持っていただければ幸いです。

(文研フォーラムの
このワークショップは定員に達し受付終了しました)

 

文研フォーラム 2016年02月19日 (金)

#10 文研フォーラム紹介⑤ "伝えて活かす" 震災アーカイブシンポジウム

メディア研究部(メディア動向)山口 勝

こんにちは、メディア研究部の山口勝です。
3月3日(木)のNHK文研フォーラム震災アーカイブの利活用と持続性を考えるシンポジウムを開きます。
東日本大震災からまもなく5年。
地震、津波、原子力。未曽有の大災害を記録し、教訓を広く後世まで伝えるため、
「あの時」の写真や映像をインターネット上で見ることができる
震災アーカイブが、
これまで、行政や企業など様々な機関によって作られてきました。

その中には、撮影時間や場所の情報によってタグ付けされ、
デジタルマップやタイムラインから検索することができるデジタルデータベースもあります。
また、WEBでの閲覧にとどまらず、アーカイブに納められた写真や動画、証言をアプリで呼び出し、
現在と当時の様子を比べながら被災地を歩くものや、
気象などのリアルタイムデータとデジタルマップ上で重ね合わせて、災害を予測し、防災・減災に活かしたりするものなど、
デジタルならではの新たな活用も始まっています。

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NHK東日本大震災アーカイブス~証言WEBドキュメント~ 
http://nhk.jp/311shogen/
東日本大震災の津波の映像や人々の証言が、WEBGIS上にマッピングされいつでも見ることができる。
津波浸水地域や火災地域、地図や航空写真、震災前と後など自由に選択することができ、防災教育のツールとしても活用可能。
画面は、実際に生徒の避難誘導を行った学校の先生の証言動画で、その際の行動経路(避難行動)も確認できる。

一方で、企業や補助金でつくられたアーカイブの中には閉鎖されたものもあります。
時の経過によって新たな価値や役割が生まれるアーカイブ。
災害教訓を伝えるつづけることの大切さとそのための知恵、そして防災・減災にアーカイブを活かすメディアの役割とは?
大学、自治体、国、メディアでアーカイブを作り活用している識者が集い
震災アーカイブの「これから」を考えます。

申し込みは、
こちらからどうぞ

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文研フォーラム 2016年02月17日 (水)

#9 日本人はますます早起きに? 国民生活時間調査2015 結果公表!

世論調査部 重森万紀

ブログ初登場、世論調査部の重森です。
文研・世論調査部では、テレビ視聴やメディア利用に関するもの、社会の動きに関するものなど各種の調査を実施しています。
これらの調査について詳しくは、おいおい、ご説明してまいりますが、
本日は、世論調査部が実施する調査のなかで、最も大規模な調査と言える「国民生活時間調査」についてお話しします。

まず、国民生活時間調査とは?
日本の国民のみなさんが、1日のなかで、何時にどのような行動をとっているかを調べる調査です。
無作為に選んだ調査対象の方に、日々の行動を、何時から何時まで●●した、と線を引いてもらいます。
1週間、ずっとひとりの方に書きこんでいただくのは、ご負担が大きすぎますので、
月曜火曜にお願いする方、火曜水曜に、…と、2日ずつ、ひとりの方にお願いしています。
結果、すべての曜日について2回ずつのデータが集まってくるように設計しています。

0216-1.gif<調査票の見本(一部)>

集まってきたデータからは、
たとえば「平日の午前6時に寝ている人は全国民の%いる」とか、
「全国民を平均すると、平日1日に仕事をしている時間は時間である」、
というようなことだけでなく、年層や職業別にも人々の行動の特徴がわかります。

調査結果は“ ひっぱりだこ ”
この調査のさらにすごいところは、5年に1度、1960年から継続して実施していることです。
長いスパンで、国民の生活の変化を捉えることができるのです。
このほかに生活時間に関する調査は、
少子・高齢化対策,文化施策評価等の各種行政施策立案の基礎資料を得ること”を主な目的とした、
総務省統計局の「社会生活基本調査」がありますが、
多岐にわたる生活行動を長期にわたって調査しているものは、日本ではこの二つ以外にありません。
そのため、NHKの 国民生活時間調査結果は、非常に多くの企業や機関で研究やマーケティングのために利用されています。
ちなみに、生活時間研究は、ひとつの分野を築いており、40か国以上の大学、統計局、政府機関、メディア、民間研究所などが会員となっている
「国際生活時間学会 International Association for Time Use Research」という学会も存在するんですよ。

0216-2.png<1963年から発行されている解説本>
  文研の図書室から借りて撮影しました。

さて、それでは、今回の結果からわかったことは!?
今回のデータからわかったことの、ほんのサワリですが…
 平日の朝の「早起き」が一層進み、「早寝」人も増加。
   そして、長く続いていた睡眠時間の減少傾向が止まりました。
 多くの年層で平日のテレビ視聴時間が減少しました。(涙)
 男性の家事時間は少しずつ増加していますが、男女差は…いまだ大きい。
 長時間(10時間を超えて)働いている人の割合は有職者の23%。
    この数字は、2000年以降ほぼ変わっていません。

などなど。

報告書には現在の国民の生活に関する発見が満載です。ぜひ、コチラへ!

また文研フォーラム3日目でも詳しく発表。
時の研究家・織田一朗さんも登場して、日本人と時間の知られざる関係について語ります。
お申し込みは
こちらへ。
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文研フォーラム 2016年02月12日 (金)

#8 文研フォーラム紹介④ 調査で気づいた「川と自分」

メディア研究部(メディア動向)福長秀彦

来月1日から始まる文研フォーラムまであと2週間余りとなりました。
私は去年9月に起きた鬼怒川の氾濫について、フォーラム2日目に同僚と二人で研究発表をします
私のパートは「放送研究と調査」2月号に書いた調査報告がモトになります。

調査をしていて一番ビックリしたのは、河川の用語の分かりにくさでした。
堤防決壊の原因究明に当たっている国の調査委員会を傍聴しましたが、
テイナイチガワテイタイカブセンクツが…」などという耳慣れない言葉が次々と交わされて、
最初はサッパリ分かりませんでした。
後で調べてみると、「テイナイチガワ」とは「堤内地側」で、川とは反対側の堤防で守られている土地側のこと。
「テイタイカブ」とは「堤体下部」で堤防本体の下の部分、
「センクツ」は「洗掘」で川の水によって堤防の斜面が削り取られることでした。

難解な用語と悪戦苦闘を続けるうちに、ふと自分が昔から川のそばで暮らしてきたことに気がつきました。
これまで特に意識したことは無かったのですが…。

子供の頃は、東京都と神奈川県の境を流れる多摩川の堤防のすぐ近くに家がありました。
河川敷は子供たちにとって格好の遊び場でしたし、上流に向かって堤防を歩くピクニックをしたものです。
大雨が降った時にこっそり川を見に行って、普段とは違う、荒れ狂ったような様相に息を呑んだこともありました。
NHKに就職し、福井放送局や高知放送局で勤務しましたが、いずれも川沿いに住んでいました。
福井では桜並木の堤防で小学生になった子供たちとサイクリングしたり、水鳥を観察したりするのが楽しみでした。
そして、今暮らしている東京の自宅も、氾濫を繰り返してきた神田川と善福寺川の合流地点近くで、
孫と川辺を散歩したりしています。

古くから馴染んでいたのに、川のことをよく知りもせず、知ろうともしていませんでした。
でも、今は違います。堤防や治水の歴史など川のことをもっと深く知って、
コミュニケーションの研究者として分かりやすく伝えたいと思っています。

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