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文研フォーラム 2023年12月18日 (月)

見逃し配信は12月24日まで! 文研フォーラム2023秋~アーカイブから考える公共メディアの使命と仕組み~#518

メディア研究部(メディア情勢)大髙 崇

今年10月4、5日に開催した文研フォーラム2023秋では、多くの皆様にご参加&ご視聴いただき、誠にありがとうございました。
現在、3つのプログラムの模様を見逃し配信していますが、12月24日には公開終了の予定です。当日に参加できなかった、もう一度見てみたい、あるいは「何それ、知らない」という方も、残り1週間ですので、ぜひご覧ください!

私は、5日(2日目)のプログラムC 「アーカイブは放送界を救うか ~フランス・INAから未来を語る~」と題したシンポジウムに登壇し、発表と司会を務めました。

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動画はこちらからご覧になれます。
※動画公開は2023年12月24日で終了します

INAとは、世界最大規模の放送アーカイブ機関として知られる、フランスの国立視聴覚研究所のこと。フランスで放送するすべてのテレビ・ラジオ番組を毎日収集・保存(なんと今までの累計2,580万時間!)、そして、公開・活用などを担っています。
私は今年6月にINAを訪れ、現在の取り組みを視察し、各部門の責任者へのインタビューを行いました。シンポジウムでは、その成果を発表しています。
INAは、国立図書館をはじめとした国内各地の図書館等で、研究目的であることを条件に、原則すべての放送アーカイブを自由に閲覧できるようにしています。さらに、アーカイブを活用して、新たな放送番組やSNSのショート動画など、独自コンテンツの制作も行っています。制作部門の編集長、バイエさんの言葉がとても印象的でした。
「アーカイブの重要な注意点は、ノスタルジーに陥らないこと。『昔はよかった』で終わらせてはいけない」
アーカイブは、現在の出来事の背景を伝え、未来を切り開く多くの可能性があるという信念を、力強く語ってくれました。

INAのような広範で多様なアーカイブ展開を、日本で実現できるのか。図書館や博物館などで過去の番組をもっと見たい、教育や研究の資料として利用したいなどの声は、日本でも多く寄せられていますが、そうした声に十分応えられていないのが現状です。その主な理由として、著作権法、放送法などの制度設計での日仏の違いがあげられます。なぜ日本ではこの課題の解決が難しいのでしょうか。
シンポジウムの討論は、日本での放送アーカイブ活用・公開促進に向けた、熱いセッションとなりました。アーカイブの利活用、法制度に詳しい3人のゲスト登壇者の印象深いお言葉から、ほんの"さわり"だけ紹介します。

橋本阿友子さん(弁護士)「日本の著作権法の最終目標は『文化の発展に寄与する』こと。著作物の利用が進むような仕組みを作らないと著作物を創るモチベーションが下がり、文化が廃れることになる」
井上禎男さん(琉球大学教授)「学術利用だからといって全部オープンにしてよいのか。おそらくそうはいかない。INAのような機関がない日本の場合は、放送事業者として公開するものをチェックすることも使命になると思う」
伊藤守さん(早稲田大学教授)「新たな仕組みの議論のための、新たなフィールドを作らないと、INAのような目覚ましい進展は難しい。そのための口火を切ることを、NHKに期待したい」

放送アーカイブの利活用促進は、放送業界だけで解決できるものではなさそうです。文化をどう発展させるか、社会全体として、もっと大きな枠組みでの議論の必要性が浮かび上がりました。
その議論には、皆さんもぜひ参加いただきたく、だからこそ、まずは!(笑) ・・・
プログラムの模様、どうぞご覧ください!!

文研フォーラム2023秋では、このほか以下の2つのプログラムが開催されました。
プログラムA メディアの中の多様性を問う ~ジェンダー課題を中心に~
プログラムB デジタル時代のニュース 課題と処方箋 ~ロイター・デジタルニュースリポート2023から~
いずれも、いまメディアが問われている課題と向き合った、真剣な議論が展開されています。
こちらも同じく12月24日に配信終了予定です。
師走のお忙しい中とは思いますが・・・お見逃しなく!!

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あわせて読みたい
大髙 崇「放送アーカイブ『公共利用』への道」 (放送研究と調査2023年10月号)
宮田 章/大髙 崇/岩根好孝「アーカイブ研究の現在・2023」 (放送研究と調査 2023年4月号)
大髙 崇/谷 正名/高橋浩一郎「放送アーカイブ×地域」 (放送研究と調査 2022年12月号)
大髙 崇「『絶版』状態の放送アーカイブ 教育目的での著作権法改正の私案」 (放送研究と調査 2022年6月号)

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NHK放送文化研究所メディア研究部 主任研究員 大髙 崇 
番組制作、著作権契約実務を担当したのち、2016年から現職。
主な研究テーマは、放送アーカイブ活用と、それに関する国内外の法制度。 

文研フォーラム 2023年02月16日 (木)

#455 未来を担う中高生の「いま」を探ります! コロナ禍のネット時代を生きる中高生 ~第6回中学生・高校生の生活と意識調査より~

世論調査部(社会調査)村田ひろ子

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  スマホ操作が苦手な私をよそに、中学生の娘は、学校の提出物の確認、遊びの日程調整、“盛れる”プリクラ機の情報収集など、実にスマートにSNSを使いこなしています。その一方で、「体育の授業で倒立ができない!」「流行の“シースルー前髪”が決まらない!」「TikTokのダンスが踊れなくて友だちの輪に入れない!」など、ないないづくしの自信喪失の毎日・・・。大人からみれば、「なんでそんなことを気にするの?」と疑問に感じることも、彼女にとっては一大事のようです。
  こんなイマドキの中高生の生活ぶりや価値観は、文研が昨夏実施した「中学生・高校生の生活と意識調査2022」の結果からかいま見ることができます。調査は、学校生活、SNSの利用、友だちや親との関係、心理状態、世界観などの幅広い領域について、中高生とその父母の双方の視点からみられるユニークな設計になっています。10年ぶりの調査からみえてきたのは、SNSを通じて友だち関係を拡大させ、明るい未来を思い描く一方で、自己肯定感が低かったり、「社会」よりも「自分」を優先させたりする姿です。

  文研フォーラム・プログラムA「コロナ禍のネット時代を生きる中高生」(3/1(水)10:40~)では、調査結果をふまえて、いまどきの中高生の生活や価値観、について考えます。

  パネリストは、
・公立中学校の校長として校則や定期テストの廃止といった学校改革に取り組まれた工藤勇一さん

Aguest1.png工藤勇一さん
(横浜創英中学・高等学校校長)

・文化社会学、ジェンダー論、家族社会学がご専門の水無田気流さん

Aguset2.png水無田気流さん
(國學院大学 経済学部教授)

・情報番組の司会や女性誌のモデルなど幅広く活躍中、2児のママでもあるタレントの優木まおみさんです。

Aguest3.png優木まおみさん
(タレント/モデル)

  進行は世論調査部のリードオフマン・中山準之助研究員、報告は村田ひろ子です。
  令和の時代の中高生たちが何を考え、どのような課題を抱えているのか。コロナ禍のストレスや悩み、ジェンダー意識などにも注目しながら、将来の日本社会を担う彼らの「いま」を知るための手がかりを探ります。多くの皆様のご参加をお待ちしています!

 

【申し込みはNHK放送文化研究所ホームページから】

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文研フォーラム 2023年02月15日 (水)

#454デジタル情報空間とメディア ~"信頼"のフレームワークをどう構築するか~

メディア研究部(メディア動向)村上圭子

 私は放送やメディアを巡る最新動向をウオッチし、俯瞰して分析したり、提言したりすることを主な業務としています。そのため、毎年3月に実施する「文研フォーラム」では、できるだけこの1年の動向を象徴するような、そして簡単には答えが見つからないようなテーマを設定して、建設的な議論の場を作ろうと試みています。ただ、年を追うごとに変化が激しくなり、政策の議論は複雑になり、関係する事業者も増えている気がします。毎年テーマ選びと登壇者選びにはとても苦戦していて、今回も悩みに悩んで、他のプログラムよりも遅れてシンポジウムの登壇者をようやく公表しました。遅くなって申し訳ありません!

Gprogram.png文研フォーラム プログラムGの詳細はこちら

テーマは「デジタル情報空間とメディア ~“信頼”のフレームワークをどう構築するか~」。なぜこのテーマを選んだのか、共有しておきたいと思います。

 本ブログでも繰り返し取り上げていますが、2021年秋から総務省では、「デジタル時代の放送制度の在り方に関する検討会(在り方検)」が続けられています。 私は地デジ化が終了した頃から、総務省で開催される放送やNHKの未来像に関する様々な検討会を傍聴、取材していますが、在り方検はこれまでの検討会と比べ、議論の組み立て方が大きく異なっていると感じています。
 在り方検以前の検討会では、前提とする問題意識は、通信と放送が融合していく時代に、放送がこれまでのような役割を果たしていくにはどのように通信を活用していけばいいのか、そのための制度改正をどのように進めていくか、でした。もちろん今回の在り方検でもそれは踏襲されていますが、議論を傍聴しているとそれにとどまらないものを感じます。議論では常に、ネット上で信頼できる情報を循環させる枠組みをどのように整備していくか、そしてその情報を確実に届けていく方法をどのように提供していけるかが問題意識の前提にあり、未来像の“主語”は放送ではなくデジタル情報空間そのものであるという印象を受けています。つまり、在り方検の議論の組み立て方は、増え続けるデジタル情報空間の課題に対して、放送は今後どのような役割を果たしていくべきか、それを推進していくためにどのような制度改正を行うべきか、であるといえると思います。
 ただ難しいのは、取材と編集機能を備えた信頼できる情報を提供する主体は放送だけではないということです。伝統メディアとしては新聞や雑誌、そしてネットメディアの中にも数多く存在し、日々取り組みを進めています。また、ネット上で情報を届けていくには、多くのユーザーが集うプラットフォームの存在を抜きには考えられません。プラットフォームの役割やメディアとの関係性については、グローバルなテーマとなっています。とはいえ、在り方検は国内の放送の未来像や放送制度改革を議論する場、つまり放送を“主語”とする議論にならざるを得ません。そのためしばしば議論は暗礁に乗り上げているようにもみえますが、それは、挑戦的で今日的な問題意識で既存の放送政策議論を超えようとしているが故のことなのだと私は受け止めています。今後も期待して傍聴、取材を続けたいと思います。

 さて、肝心の文研フォーラムの内容に戻ります。文研はNHKの組織であり放送文化に寄与することを目的としていますが、総務省の在り方検ほど議論に制約があるわけではありません。ですので、今回はあえて放送を主語には据えず、デジタル情報空間を主語に、放送、新聞、ネットメディア、プラットフォームという“事業者横断”で、“信頼”のフレームワークの構築について考えてみたいと思います。在り方検の問題意識も意識しつつ、それを越える議論もできればと思っています。
 そして、登壇者についてですが、今回は全て、現場で格闘し続けている方々にお願いしました。このテーマは研究者や啓発活動等の様々な取り組みを行う実務家も多い領域なのですが、どのような枠組みを検討したとしても、事業者の主体的な意思がなければそれが実装されることはないと思い、あえて“現場縛り”にしています。様々な事情や制約の中で抱いている課題意識や取り組みを、業界を越えて共有し議論していくことで、事業者自身によるリアルな競争や協創のあり方を探っていきたいと思います。
3月3日15時半から120分。真剣勝負の徹底議論を行う予定です。皆様のご意見もどんどん議論に反映させていきたいと思っています。ぜひ奮ってお申し込みください。お待ちしています!

【申し込みはNHK放送文化研究所ホームページから】
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文研フォーラム 2023年02月13日 (月)

#452 Z世代と「テレビ」?

世論調査部(視聴者調査)保髙隆之

「ワールドカップ(W杯)の日本戦ですか? テレビ画面で見ていましたよ。…ABEMAの中継で」

大学生が当然のように答えたとき、私は軽いショックを受けました。

もちろん、ABEMAのサッカーW杯中継が多くの方に見られたことは報道で知っていました(実際の規模感については諸説ありますが)。しかしながら勝手にスマホでの視聴だと思い込んでいたのです。かつてのワンセグによる日韓共催のW杯中継のように。

この違いは非常に大きいです。つまり、放送も同時に行われていたのに、あえて「テレビ」という箱の中で動画サービスによる中継が選択されたのです。ときどき、「テレビ離れ」は「コンテンツ離れ」ではないから大丈夫、という放送業界の方がいらっしゃいますが、これは放送局にとっては言い訳ができない、まさに存在意義を問われるような事態です。
この大学生にとっては、「テレビ」という「機器」は既に「放送」を前提にしたものではありません。

では、彼や彼女たちにとっての「テレビ」とは何なのでしょう?

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今年のNHK文研フォーラムのプログラムB「Z世代とテレビ」(3月1日(水)午後2時~)では、デジタルネイティブの先駆けであるZ世代の大学生たちと、いまのテレビとのリアルな距離感、そしてこれからのテレビに期待することを語り合います。ゲストはメディア研究の第一人者である渡邊久哲さん(上智大学教授)とZ世代と未来を考えるプロジェクトを進める小々馬敦さん(産業能率大学教授)。文研からは「メディア利用の生活時間調査」など視聴者行動の分析が専門の舟越雅研究員が最新の調査結果を報告、保髙が進行を担当します。

pb_01.jpgのサムネイル画像上智大学文学部 渡邊教授

 

pb_02.jpgのサムネイル画像産業能率大学 小々馬教授

現在は本番に向けて大学生たちに鋭意取材中。その繊細な感性や合理的な考え方に驚かされたり、教えられたりする毎日です。ぜひ、当日の議論の行方をお楽しみに!

文研フォーラム 2023年02月08日 (水)

#450 3月2日(木)14:30 放送アーカイブの『公共利用』を一緒に考えよう!

メディア研究部(メディア動向) 大髙崇

先月のブログでもお伝えしたように、文研の調査によって、地域の博物館や図書館では、過去の放送番組(放送アーカイブ)を利活用したいというニーズが高いことがわかりました。

放送局は、自局のアーカイブを活用して新たなコンテンツ制作は盛んに行っていますが、地域の公共施設などの求めに応じて放送局がアーカイブを提供し、施設などが主体的に利活用するケースは極めて少ないのが現状です。地域の人々から、このような「公共利用」を促すための放送局の取り組みへの期待が示されたのです。

アーカイブを、ただジーッと放送局の倉庫(は、昔の話で今はサーバー)に眠らせているよりは、そりゃあみなさんがいつでも見られるように公開していたり、申し込めばすぐ視聴できたりした方が良いでしょう、とはいうものの・・・

「著作権や肖像権は問題ないのか?」
「どうやって使いたい番組を探せばいいの?」
「料金は幾らくらいが妥当?」

などなど、考えるべき課題はたくさんあります。
現在、他局の番組やCMでの利用に対する有償販売など、主に「商用」を想定したアーカイブ提供のための一定のルールはありますが、営利を目的としない、公共性の高い利用への放送アーカイブ提供のルールはほとんど手つかずの状態です。

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そこで、文研フォーラムのプログラムD 放送アーカイブの『公共利用』では、調査結果の報告とともに、放送アーカイブが公共空間で利活用される意義、それを困難にしている課題と、その解決策を討論します。

ゲストパネラーは以下の3名です!

●福井健策さん(弁護士・デジタルアーカイブ学会法制度部会長)

福井健策さん

文化審議会の委員を歴任する福井さんは、デジタルネットワーク化が急速に進む中、著作物の利活用促進と権利者保護とのバランスが取れた新たなルール作りと、デジタルアーカイブ社会実現に向けた取り組みを精力的に行っています。

●岡室美奈子さん(早稲田大学教授/早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 館長)

岡室美奈子さん

フジテレビの番組審議会副委員長で、NHK・民放の過去番組を保存・活用する放送番組センターの理事でもある岡室さんは、放送アーカイブの公共利用が進むことに、放送の新たな社会的役割が見いだせる、といいます。

●坂下雅子さん(学芸員/石川県小松市立博物館参事)

坂下雅子さん

今回、放送アーカイブの公共利用に関する調査に回答いただいたお一人である坂下さんは、長年キュレーターとして地域の人々に文化を紹介してきた現場担当者の視点から、放送アーカイブの利活用によって、博物館と地域の新たなつながりを感じています。

放送開始100年(2025年)も間近。放送局の新たな社会的使命を探る熱い討論となるはずです。お申し込みとご参加、そしてご意見をお待ちしております!

『放送研究と調査』2022年12月号に「放送アーカイブ×地域」と題して、地域公共文化施設等での放送アーカイブニーズ調査の結果を論文にまとめて掲載しています。併せてご覧ください。

文研フォーラム 2022年07月22日 (金)

#405 『デジタル化でニュースやメディアはどう変わる?』

メディア研究部(海外メディア)税所玲子

  「日本人は、なぜツイッターでこんなに匿名が多いのか?」
2015年、英オックスフォード大学にあるロイタージャーナリズム研究所のフェローとなった私が、初日のセミナーで投げかけられた質問でした。

「え・・・?ツイッターって匿名が普通じゃなかったの・・・?」
実は日本人の匿名率は75.1%。アメリカの35.7%、韓国の31.5%に比べてかなり高い水準 だったことを私は知らなかったのです。

saisho1.jpg 日本では当たり前のことが、外国ではそうでないという、実に当たり前のことを実感する。
そのことで他者を知り、自分を知る。国際比較のだいご味はまさにそこにあります。

saiso2.jpg ロイタージャーナリズム研究所は、デジタル化の波にもまれ新たな活路を見出そうと模索するメディアの姿を、世界の国々のデータの中から読み解き「デジタルニュースリポート」にまとめています。2022年はNHK放送文化研究所が日本についてのデータの分析を試みました。

「日本人のエンゲージメントは低い?」

「インフルエンサーは過大評価されている?」

 こうした疑問を2022年7月28日の文研フォーラム、『「ニュース」「メディア」はどう変わる?』で、3人の経験豊富なジャーナリストにぶつけてみます。

saisho3.jpg 参加いただくのは、元共同通信の記者で、現在は専修大学でジャーナリズムの講義を担当する澤康臣さん、信濃毎日新聞のメディア局長の井上裕子さん、NHK報道局でSNSを駆使して情報取材を手がける足立義則さんです。

 皆さんからの質問にもお答えいただき、議論の中から日本のメディアの現在地と、未来に向けてのヒントを探りたいと思います。
ぜひ、ご参加ください!

総務省 平成26年情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc143120.html

    お申込みはこちらから ↓
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文研フォーラム 2022年07月20日 (水)

#403 テレビに写る人の顔の「ぼかし」問題、語り合います!

メディア研究部 (メディア動向) 大髙 崇

  7月28日(木)開催の「文研フォーラム2022夏」プログラムBは、テレビ「ぼかし」対策会議です。
「ぼかし」とは、テレビに写った人などに対してモザイク加工をするなどして、特定できないようにする映像処理を指します。
 ootaka1a.jpg 実は2014年に、BPO(放送倫理・番組向上機構)の「放送と人権等権利に関する委員会」の当時の委員長・三宅弘弁護士が「顔なしインタビュー等についての要望」と題し、ぼかし(顔なし)についての意見を公表しました。特に顔を見せないようにする理由が見当たらないにも関わらず「ぼかし」をしている映像が目立つことに苦言を呈し、テレビでのインタビューなどは顔出しを原則とすべきだとして、次のように指摘しています。

 「安易に顔なし映像を用いることは、テレビ媒体への信頼低下をテレビ自らが追認しているかのようで、残念な光景である。」

 一方で三宅氏は、プライバシー保護が特に必要な場合などは本人が特定されないように配慮が必要だとして、放送局が議論し、ルール作りを進めるよう求めました。
 
 この、三宅氏の意見公表から月日は流れて早8年。

 むしろ「ぼかし」は増えているんじゃないの!? と思いつつ、テレビに写る人の顔や姿に関する権利、すなわち「肖像権」について研究をしています。
(NHK放送文化研究所年報2022に掲載された論文もぜひご参照ください)

 テレビの「ぼかし」、みなさんはどうお感じになっていますか?

 この「ぼかし」について大いに語り合おうというのが、今回のプログラムの目的です。
テレビに写りたくない人を守るためには「ぼかす」べき? しかし、「ぼかし」てばかりだと真実性が疑われるんじゃないの? ルール作りはできるのか?

 ゲストの登壇者、各界で活躍する3名をご紹介します。

  鎮目 博道さん
  ootaka2.jpg テレビ朝日で「報道ステーション」などを手がけ、ABEMA TVでもご活躍のプロデューサー。さまざまな媒体でテレビの課題を論じています。一方では「顔ハメパネル愛好家」という不思議な肩書も・・・
 
  久保 友香さん
 ootaka3.jpg プリクラ、スマホなどで容姿を自在に変える若者の「盛り」の文化と、それを支える技術を研究するメディア環境学者。テクノロジーが進歩し、美意識とライフスタイルが変化する中で、改めて顔とは何か……。久保さんには、テレビ関係者とは違った角度から、「ぼかし」問題にアプローチしていただきます。
 
  数藤 雅彦さん
 ootaka4.jpg 上記のNHK放送文化研究所年報2022は、弁護士である数藤さんと私の共著です。数藤さんは、所属するデジタルアーカイブ学会が2021年4月に正式版を公表した「肖像権ガイドライン」の策定リーダー。今回のプログラムでも、このガイドラインが議論の軸になります。

 そして、NHKの制作陣からは、NHK総合で放送中「チコちゃんに叱られる!」の制作統括・西ヶ谷力哉プロデューサーが登壇します。

 どんな議論になるでしょうか。テレビの未来をぼかさず、明るくクリアにする内容を目指します!

 たくさんの方のご参加、お待ちしています!
 
 お申込みはこちらから。

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文研フォーラム 2022年07月11日 (月)

#402 NHK文研フォーラム2022夏 本日申し込み開始

文研フォーラム事務局

 fo-ramu1.jpg 7月28日(木)に開催する 3.jpgの申し込みを、本日開始しました。
 今年3月に開催し、多くの方に参加して頂いた「文研フォーラム」。文研の調査結果をタイムリーにご紹介するために、今年は夏にも開催します。
 プログラムの詳細や、申し込みはこちらから。
 https://www.nhk.or.jp/bunken/forum/2022_natu/index.html

申し込みは、7月24日(日)までです。
奮ってご参加ください。



文研フォーラム 2022年02月22日 (火)

#372 テレビのジェンダーバランス ~3月4日の文研フォーラムでテレビの現状を報告し、その意味するところを考えます

メディア研究部(海外メディア) 青木紀美子


皆さんはテレビの放送に登場する人物で一番多いのはどの年代だと思いますか?

私たちが行ったテレビ番組に登場する人物の男女比を調べるトライアル調査では30代が最も多く、次が40代でした。

これはテレビ番組の放送日時や内容、登場人物などを記録したデータ、メタデータを使い、2021年6月の1週間、NHK総合と教育、民放の在京キー局のあわせて7チャンネルの早朝から深夜に放送された番組(ドラマ、映画、再放送は除く)の登場人物の性別や年代などを調べたものです。

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では女性と男性に分けてみると、どうでしょうか。こちらは登場人物のうち、男性を年代別にみたグラフです。40代が最も多くなっています。

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一方、女性の登場人物を年代別にみると、20代が最も多いことがわかりました。

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それでは女性、男性の登場人物の数を年代別に比べてみると?

20代では女性が男性よりも多いけれども、30代以降では逆転して男性の方が多くなります。それも40代、50代では実に3倍以上と、かなりの差が開くことがわかりました。これはある1週間の限られた情報に基づくものですが、大きな傾向をつかむ手がかりにはなると考えています。

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ちなみに日本の総人口を男女別、年代別にグラフに表すと以下のようになります。日本社会の現実と、テレビの放送が映し出す世界と、2つの間にはかなりの違いがあるようです。

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この違いは何を意味するのでしょうか。

文研フォーラム、3月4日、午前10時半からのプログラムEでは、どんな番組ジャンルや話題で、また、どんな職業分野や肩書で、女性、男性の登場の仕方が違うのか、より詳しい調査の結果を報告します。そして、この差をどう見たらよいのか、2人のゲストに話を伺います。

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メディア文化論、フェミニズム研究が専門で大妻女子大学文学部教授の田中東子さん、メディア論を中心に政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じている社会調査支援機構チキラボ代表の荻上チキさんです。

前回のブログでは「メディアは社会の多様性を反映しているか?」という問いかけが、世界の潮流にもなりつつあることに触れました。その中で、全米公共ラジオNPRが、幅広いメディアが活用できる多様な取材対象のデータベースを作成して公開していることを取り上げました。今回の文研フォーラムでは、そのNPRのダイバーシティー推進責任者のキース・ウッズさんの話も紹介します。

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2021年11月に実施したテレビの女性や男性、多様なジェンダーの取り上げ方をどう見るか、視聴者に聞くアンケート調査の自由記述に寄せられた意見も詳しくお伝えする予定です。テレビのジェンダーバランスの今とこれからを考える機会にできればと考えています。ぜひご参加ください。


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文研フォーラム 2022年02月21日 (月)

#371 「ジャーナリズムの危機をどう乗り越える」

メディア研究部(海外メディア) 税所玲子


『事実がなければ、真実には迫れず、真実がなければ信頼は生まれない。信頼がなければ、現実を共有できず、民主主義は失われる』

 これは、2021年のノーベル平和賞を受賞者の1人、フィリピンのジャーナリストのマリア・レッサさんが授賞式で述べた言葉です。強権的なドゥテルテ政権を厳しく追及するレッサさんは、政権からの圧力に加えて、SNS上での誹謗中傷や偽情報にも苦しめられています。冒頭の言葉は、メディアが信じられなくなり、事実の重みが揺らぐ世界の行く末への警鐘が込められているようです。
 「ジャーナリズムの危機」の現れ方は、国によって異なります。去年8月にはヨーロッパで記者が日常的な暴力にさらされている様子をこのブログで紹介しました。日本は、欧米のような状況に置かれているわけではありませんが、「メディアが伝えるニュースへの信頼」を尋ねた国際調査では、日本は、信頼が最も高かったフィンランドを20ポイント以上下回っています 1)

 「文研フォーラム」3月3日10:30からのプログラムDでは、この問題に日本でどう向き合えば良いのか、考えたいと思います。

 議論の出発点として、海外の公共放送の信頼回復にむけた取り組みを取材しました。イギリスからは、BBCの報道局長から大学教授に転じたリチャード・サムブルックさん。アメリカからは、PBSのドキュメンタリー番組の編集長、レイニー・アロンソン・ラスさんに話を聞きました。

220222-1.pngそしてスタジオには、ノンフィクション作家で日本ペンクラブの元会長の吉岡忍さん、ジャーナリズムやメディア研究が専門の東京大学大学院情報学環教授の林香里さん、NHK制作局で「クローズアップ現代+」などの制作にあたる細田直樹チーフ・プロデューサーをお招きしています。

220222-2.pngモデレーターは、トランプ前政権時代アメリカに駐在し、揺れるメディアの状況を取材した河野憲治解説委員長が務めます。

 これからのメディアのあり方の糸口を、みなさんと一緒に探りたいと思います。


1) 英ロイター・ジャーナリズム研究所 ”Digital News Report 2021
https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2021


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