文研ブログ

文研フォーラム 2021年02月05日 (金)

#303 メディアのダイバーシティー推進をどうする?

メディア研究部(海外メディア) 小笠原晶子


 国内外でダイバーシティー&インクルージョンへの機運が高まっています。
ダイバーシティーとは多様性、インクルージョンは包摂するという意味で、性別や人種などにかかわらず、社会を構成する多様な人々を、その違いを尊重してともに生きていく社会を目指すものです。日本の産業界、そしてメディアでは主に経営的側面からダイバーシティー推進が語られ、女性の活躍推進に焦点があてられてきました。
 それに対し、欧米メディアでは、採用や人事といった職場に関わること(Off Screen)だけでなく、出演者(On Screen)についても、ダイバーシティー推進が進められています。“テレビに映っている”出演者にも多様性を反映し、社会を反映することがメディアの使命と位置付けられているのです。いま欧米では、2016年のイギリスEU離脱国民投票、2018年のフランス黄色いベスト運動など、社会の分断を象徴する動きが続いています。こうした事態を防ぎ、民主主義を守るため、メディアが社会の多様性を反映して多様な意見、視点を反映しないと、その存在意義を失うという危機感があります。また去年世界に広がった黒人の人権尊重を求めるBlack Lives Matter運動も、ダイバーシティー推進を加速させる要因になりました。
 それでは、何をもって多様性としているのか?例えば欧米メディアは、男女や人種、障害者、LGBTなど、カテゴリー別に職場や出演者の比率を調べています。それを労働人口を比較し、社会を反映しているか監視しています。客観的データに基づいて問題提起し、改善策を講じています。
 日本には、まだ定期的に出演者のダイバーシティーについて量的な調査は行われていません。もちろんダイバーシティー推進は、数字だけで全て語れるものではありませんが、フォーラムでは、欧米の事例を参考に、日本でどのような指標、手法を用いて、メディアのダイバーシティー推進を進めるべきか、考えていきます。特に本来は構成比が1:1となるべき男女のジェンダーバランスに焦点を当てながら、その現状、課題を取り上げます。欧米のメディアはジェンダーバランスの実現に向けて、それなりの成果を上げています。そしてジェンダーバランス推進の考え方、手法を、人種や障害者、LGBTといった対象に展開しようという動きもあります。ダイバーシティー推進にメディアが果たすべきことについて、まずは、欧米で進んでいるジェンダーの観点から掘り下げていきたいと思います。

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