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調査あれこれ

調査あれこれ 2023年12月25日 (月)

世帯年収の違いによるコロナ禍の影響の濃淡①~「新型コロナウイルス感染症に関する世論調査(第3回)」の結果から③~【研究員の視点】#520

世論調査部(社会調査)小林利行

国内で新型コロナウイルスの初感染が確認された2020年1月から4年近くたちました。
多くの人が亡くなりましたが、感染者の重症化率が低下してきたこともあり、2023年5月には法律上の扱いが2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられるなど、最近は落ち着きをみせつつあります。

とはいえ、今後も同じようなパンデミック(世界的大流行)が起こらないとも限りません。
日本学術会議が2023年9月、今後の感染症の大流行に対応するために、今回のコロナ禍に関する情報の収集と継承を提言するなど、社会全体としてデータを整理して今後に備えようという動きが進んでいます。
そこで今回は、NHK放送文化研究所が2022年11月に実施した世論調査※1の結果のうち、
コロナ禍の影響について「世帯年収の差」に注目して分析しました。
“コロナ禍が社会の格差を広げた”ともいわれていますが、実際のところを客観的なデータで考えてみました。

図①は、感染拡大をきっかけにした生活の変化が、その人にとってプラスの影響とマイナスの影響のどちらが大きかったかを尋ねた結果です。全体をみると、『マイナス(どちらかといえばを含む)』(74 %)が『プラス(どちらかといえばを含む)』(23%)を大きく上回っていることがわかります。
しかしあえて『プラス』に注目してみると、プラスの割合は年収が多いほど高くなる傾向がみられます。
特に「600~900万円」(24%)から「900万円以上」(35%)にかけては、10ポイント以上差が大きくなっています。

図①  生活変化はプラスかマイナスか(世帯年収別)20231225_zu1.JPG

『プラス』の理由はなんでしょうか。
図②は、『プラス』と答えた人にその理由を複数回答で尋ねた結果です。
「600~900万円」と「900万円以上」では「在宅勤務など柔軟な働き方ができるようになったから」が全体と比べて有意に高くなっています。特に「300万円未満」(3%)と「900万円以上」(24%)の間では20ポイント以上の差がついています。
この数字からは、テレワークができるようになるなど、デジタル化の恩恵を誰が受けているのかが浮かび上がってきます。

図② 生活変化が『プラス』の理由(世帯年収別)
【『プラス』と回答した人】
20231225_zu2.JPG

一方、図③は、『マイナス』と答えた人にその理由を複数回答で尋ねた結果です。
世帯年収別の差の大きなものをみると、「旅行やイベントや会食に行けなかったから」は年収が高くなるほど多くなっていて、「300万円未満」では17%なのに対して、「900万円以上」では30%となっています。
逆に「経済的に生活が苦しくなったから」は年収が低くなるほど多くなっていて、「900万円以上」では3%にとどまっているのに対して、「300万円未満」では15%と有意に高くなっています。

図③ 生活変化が『マイナス』の理由(世帯年収別)
【『マイナス』と回答した人】
20231225_zu3.JPG

実際の収入の変化はどうだったのでしょうか。
図④は、コロナ禍による収入の変化について尋ねた結果です。
『減った(大幅に+やや)』をみると、年収が低いほど多くなっていて、「900万円以上」が17%なのに対して、「300万円未満」では36%と20ポイント近い差がついています。

図④ 収入の変化(世帯年収別)20231225_zu4.JPG

実は、この『減った』という人を年層別に分けると、さらに年収差が広がるカテゴリーがあります。
図⑤をみてわかるように、どの年層も世帯年収の低い人ほど『減った』が多くなる傾向は変わりませんが、その中でも18~39歳と40・50代の「300万円未満」と「900万円以上」の差がどちらも30ポイント以上ついています。これは、コロナ禍の経済的なインパクトが、いわゆる“現役世代”の年収の少ない層に強く影響したことを示しているといえるでしょう。
なお、40・50代以下に比べて60歳以上で差が大きくないのは、年金で暮らしている人が含まれることが影響していると考えられます。

図⑤ 収入の変化(年層別に分けた世帯年収別)20231225_zu5.JPG

このように、コロナ禍の影響は、年収の差で大きく違うことがわかります。
しばしば指摘されてきたことですが、世論調査の客観的なデータによって可視化されたといえます。
この調査は2022年11月に実施したものなので、現在ではさまざまな業種の業績が回復するなどして状況は変わっているかもしれません。しかし、再び感染症が大流行する際は、政府や自治体などは、今回紹介した調査結果を参考に、低年収層への支援策などを検討してほしいと思います。

コロナ禍に関する世論調査は、2020年と2021年の秋にも実施していて、来年1月上旬公表の「放送研究と調査 2024年1月号」の論考の中では、時系列比較によって、年収の高い人ほど「生活満足度」の増加率が大きく、低年収層との差が年々広がっていることも明らかにしています。そしてその要因についても分析しています。

ぜひご覧ください。


※1 新型コロナウイルス感染症に関する世論調査(第3回)

【おすすめ記事】
①「放送研究と調査」 2023年7月号
新型コロナ感染拡大から3年 コロナ禍は人々や社会に何をもたらしたのか-NHK
②「放送研究と調査」 2023年5月号
コロナ国内初感染確認から3年 人々の暮らしや意識はどう変わったのか-NHK

【小林利行】
NHK放送文化研究所の世論調査部員として、これまで選挙調査から生活時間調査まで幅広い業務に携わり、
最近では「災害」「憲法」「コロナ禍」などの調査に取り組んでいる。

調査あれこれ 2023年12月22日 (金)

国内メディアによる「ファクトチェック」②(テレビ)【研究員の視点】#519

ファクトチェック研究班 渡辺健策/上杉慎一/斉藤孝信

 日本国内の新聞社と放送局を対象に行ったファクトチェックに関するアンケート(2023年3月実施)の際に、放送番組のなかでファクトチェック結果を明示する形で伝えていると回答したのは、日本テレビとNHKの2社だった。これまでの取り組み状況をそれぞれの担当者に聞いた。

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 日本テレビでは、2022年9月から10月にかけてニュース番組『news zero』で3回にわたりファクトチェック結果を伝えたのをはじめ、同年11月20日(日)には『THEファクトチェック』という60分の特番を放送した。また、翌2023年9月24日(日)にも、前年の番組を演出面等でブラッシュアップした『藤井貴彦のザ・ファクトチェック』(60分)を再び放送した。担当した井上幸昌チーフプロデューサーに聞いた。

ntv_inoue_W_edited.jpg日本テレビ 井上幸昌チーフプロデューサー

きっかけは報道のブランディング
 Q:どのような経緯でファクトチェックに取り組むように?
 2022年、最初にファクトチェックを始めたときに意識していたのは『news zero』のブランディングだった。当時、報道局長が年末のニュース解説でウクライナのゼレンスキー大統領の投降を呼びかける偽動画のことに触れていたことにも象徴されるが、情報の正確性に対する疑問が多くなる中で、報道の価値を見直す動きの一環としてファクトチェックを位置づけていた。
 『news zero』の当時のコンセプトは、ニュースをひと事でなく自分ごととして受けとめ、誰かのために行動したくなる、ということ。その前提として、真偽を見極める力をつけてもらおうという趣旨でファクトチェックを始めた。
 メディア不信が強まる中で、今はどの放送局も調査報道に力を入れているが、その調査報道のなかの一つのカテゴリーがファクトチェックだともいえる。
 その後、さまざまなファクトチェックを特集した番組『THEファクトチェック』を制作したのだが、その際に最も重視していたのは、取材過程を見せること。「カキの殻に口をつけなければ、鮮度の良くないカキでも当たらない(食中毒にならない)」という言説を対象にしたコーナーでは、Vで取材の過程を見せながら、「ミスリード」という結論につなげていく。その取材(=検証)のプロセスを見せることに意味がある。
 この番組は、日曜の14時台としては年間最高視聴率を取ることができた。
 (ファクトチェック団体「ファクトチェック・イニシアティブ」が選んだ「ファクトチェックアワード2023」の優秀賞にも選ばれた)

実施していくうえでの課題
Q:実際にファクトチェックを進めていく上で課題と感じていることは?
 課題の一つは、取材に時間がかかること。真偽の検証をするうえで欠かせない慎重な取材と突っ込んだ議論が続き、政治部や社会部とも相談しながらファクトを確認していく作業は、かなり労力がかかる。
 もう一つは、ネタ選び。これはデスクの力量による。通常のニュースの業務もある中で、専従でファクトチェックをやり続ける難しさがある。どう見せるかも含めて考えると、通常の取材より一つ先の発想が必要で、これは時間とのたたかいでもある。加えて、制作体制も十分とはいえない。だからといって、ファクトチェックをやりやすいものからネタを選んでしまうと偏りが生じるので、そうならないように気をつけている。

 伝え方の課題としては、ファクトチェックの判定結果を伝える際の7段階のラベリング。「難しくて、ついていけない」という反応があった。視聴者としては、ストレートに情報の真偽の中身を見たいのであって、細かい区分を知りたいわけではない。入り口は「うそか本当か」という分かりやすい導入にする必要があるし、判定結果も2023年9月の特番では、より分かりやすい5段階にした。

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2023年9月24日放送 日本テレビ 『藤井貴彦のザ・ファクトチェック』
 ファクトチェックを真正面から扱った意欲的な番組として注目される。2022年11月に放送した前作から検証結果を分かりやすい5段階にあらためたほか、演出面での工夫をさらに加えスタジオのゲストに検証結果を予想させるクイズ的な要素も盛り込むなど、視聴者を常に飽きさせない知的エンターテインメントとして番組を展開。受け手の関心を強く引きつけつつ、なぜ今ファクトチェックが必要なのか、情報リテラシーの啓もう効果も意識した内容だった。
 中国メディアが報じた「福島第一原発の処理水が放出から240日で中国近海に到達する」という内容を専門家の分析をまじえて検証し、トリチウム拡散のシミューション自体は正しいが、実は検出できないほどのごく低濃度である事実を伝えていないミスリードで、不正確と判定した。海外とはいえ、報道機関が他のマスメディアの報道内容を検証するという新たな領域に踏み込んだ点も特筆される。

マスメディアがファクトチェックすることの意味
Q:報道機関としてのマスメディアがファクトチェックを行うことの意義をどう捉える?
 いわゆる裏を取る作業は、普通のニュースとたがわず難しい。直近の番組で扱った「路上販売の桃は窃盗品」というSNSの投稿についても、YouTuberが「窃盗品」と決めつけるような発信をしていたケースもあったが、取材したら、実はそうじゃない(規格外の桃を正規に仕入れていた)というところに行き着いた。それを伝えることで、「そうか、絶対盗んでいると思っていた」という見方が変わると、他の情報に対する見方も変わってくるのではないか。報道機関としてやるべきことは、情報があふれる社会だからこそ、情報リテラシーの高いプロとして情報発信すること、本物の情報を見つける目を養ってもらうきっかけを提供することだと考える。ある意味、いろんなバイアスを取り除こうという社会的な流れの一つとしても考えられるかもしれない。

今後の課題
Q:今後の課題としては、どのようなことが挙げられるか?
 視聴者のニーズが僕らの出発点であるので、ファクトチェックを行うことにニーズがあるのか、というのが絶えずつきまとう。何があったのか、今何が起きているのを伝えるのが報道機関のあるべき姿だから、そこになるべく多くのリソースを割いて通常のニュースをきちんと伝えることで、視聴者に価値のある情報を伝えていく。そのなかで、真偽不明の情報があふれている社会の現状に何か一矢報いるみたいなファクトチェックの作業も報道の役割の一つとして必要かなと思う。でもそれは、あくまでも報道機関の一番の使命であるニュースを伝える責任を果たしたうえでのこと。
 僕らが真実を追い求める報道機関としての仕事をして、そこからこぼれたところをファクトチェック団体が検証していくという、ある意味、いいすみ分けができているかなと思う。
 将来的には、ファクトチェックを恒常的に行うなど次の段階に踏み出すことを考えたいが、その際にはファクトチェック団体との連携も考えなければと思っている。全部自分たちでファクトチェックをしていくとなるとやり切れないので、しっかりとしたファクトチェック団体と連携できたらと思っている。もちろん放送するものは、自分たちできちんと裏を取らないといけないが、ファクトチェック団体との連携は、ファクトチェック文化の定着にも結びつく可能性がある。

 一方、NHKでも、SNSなどで広がる偽情報への対策とマスメディアへの信頼回復を意識してフェイク対策に力を入れている。ネットワーク報道部の籔内潤也デスクに聞いた。

nhk_yabuuchi_W_edited.jpgNHKネットワーク報道部 籔内潤也デスク

震災・原発事故と新型コロナから学んだ教訓
Q: どのような思いや意識でファクトチェックに取り組んでいるのか?
 東日本大震災と原発事故のときには、SNSで身近で有益な情報が共有された一方、避難や放射線の影響などに関してさまざまな偽情報、根拠のない情報が広がった。当時も取材・制作現場では確認された情報を出すようにしていたが、それだけでは十分に偽情報に対処できず、広がる偽情報に翻弄される人々の姿を見てきた。
 また、ここ数年のコロナ禍においても新型コロナウイルスの病原性や対策、特にワクチンについて、明らかに誤った情報がSNSで広まり、コロナを見くびったり、ワクチンを忌避したりして重篤化したケースも多く見聞きしてきた。
 こうした経験から、報道機関が当初確認した情報を出すだけでなく、SNSなどで出回っている情報にも向き合う必要があり、フェイク対策を行うことで、生命財産への被害や社会の断絶を防ぎたいと考えている。
 また、SNSで多種多様な情報が出されるなかで、テレビや新聞などのマスメディア以外でも有用な情報が増えている。その一方で、マスメディアへの批判も目につくようになっていて、マスメディアへの信頼が揺らいでいる。SNSで拡散される情報の洪水の中で、民主主義の基本である事実や正しい情報に基づいて判断することがゆがめられていることも感じている。 
 そうした中にあって私たちとしても、情報の正確さ・深さを示しながら、フェイク対策を行うことで、「NHKを見ればどう判断するべきかが分かる」といった頼りにされる存在となり、メディアの信頼回復を進めたいと考えている。

手応えの一方で難しさも
Q: 実際にやってみて、手応えを感じた点、難しさを感じた点は?
 例えば「福島第一原発から放出される処理水に含まれるトリチウムは生物の体内で濃縮される」という、SNSで広がっている言説について検証したときは多くの反応があり、そのほとんどが『分からないことに分かりやすく答えてくれた』という反応だった。「どこまで分かっているのか、どこからは分かっていないのか」について正確な情報を出すことで、誤った情報を打ち消すことに役立ったと感じている。

20230909news_web.png2023年9月9日付け NHK『NEW SWEB』より

 また、真偽不明の情報は、不安があるとき、分からないことがあるときに広がるが、フェイク対策を行うことはそのような不安の解消にも役立つという手応えを感じた。
 フェイク情報が数多くあるなかで、検証する対象を選ぶことは難しく、試行錯誤しながら進めている。一般の人の関心を測りながら進めることが難しいと感じている。
 またNHKが偽情報だと伝えることで、かえって拡散してしまうのではという指摘を受けることもある。そうならないよう、すでに広がっている、または広がりつつある偽情報をチェックの対象にするように心がけているが、その判断は難しいのが現状だ。

 もう一つの課題は、フェイク情報の検証にあたる記者に求められる発想の転換だ。記者たちはこれまで自ら取材し事実と確認した情報をもとに記事を書いてきたが、フェイク対策ではすでに公開されている誤った情報をただすという仕事になり、対象の選び方や取材方法、記事の書き方まで、これまでと発想を変える必要がある。しかし、その必要性がまだ多くの記者には理解されておらず、理解の増進が課題だと感じている。

今後目指すべき姿とは
Q: 今後の方針・戦略は?
 NHKでは、イギリスのBBCなどとともに偽情報対策や信頼されるニュースに向けた取り組みを行うTNI(Trusted News Initiative)というメディアなどの連絡組織に加わっている。このネットワークを生かして海外での先進事例を学ぶとともに、NHKの取り組みも発信するなど、連携を強化していきたいと考えている。これまでにも「トルコ・シリア大地震で『津波が発生』『原発が爆発』などの偽情報が拡散」「リビア洪水で偽情報が拡散 SNSには日本の熱海の映像」といったニュースについて、ネットワークを生かして世界に向けてアラートを発信した。

20230207news_web.png2023年2月7日付け NHK『NEWS WEB』より

 どのような場合にNHKのニュースや番組でフェイク情報について取り上げるのか、偽情報・誤情報対策のガイドラインを作成し、基準を示すことを予定している。
 フェイク対策にNHKがニュースで本格的に取り組み始めてから日が浅いこともあり、記事の本数はまだ限られている。意識を浸透させて、本数を増やすとともに、ニュースだけでなく番組とも連携して対策を進めたいと考えている。
 一方で、ファクトチェック団体などが行っているような事実検証結果のラベル付けについては、私たちが「誤り」などとラベル付けして明確に示すことに「上から目線ではないか」と捉えられる懸念があり、信頼性を高めるために行うフェイク対策の目的に合致しない可能性があると考えている。自分たちで独自に検証した内容を放送のコンテンツとして発信することには、私たちの取材や制作についての透明性・信頼性が高まるメリットがあるという実感もある。

ファクトチェックにおけるマスメディアの役割
Q: マスメディアがファクトチェックを行うことの意義と課題は?
 デジタル時代で誰でも情報が発信できるようになっている中で、検証されていない情報があふれている。受け取る側は判断の基準を持たないこともあるので、マスメディアがファクトチェックを含むフェイク対策を行うことで、「信頼に足るメディア」、もしくは「情報の参照点」として生かしてもらえるようになるべきだと考えている。
 一方で、マスメディア側が間違った情報を出してしまった場合にはすみやかに訂正し、自己の報道内容を検証することも重要で、こうした取り組みを通じて、情報空間の健全性を担保することに役立っていきたい。

 これまでの歴史で培ってきた一定の信頼性と拡散力があるマスメディアがファクトチェックを行うことには、偽情報の拡散防止に一定の効果があると思う。
 一方でマスコミの出す情報を信じない、いわゆる「アンチマスコミ」ともいえる層に、どのように情報を届けるかは難しい課題だ。ただ、そうした層から影響を受ける、いわば「中間層」の人たちに正しい情報を届けるには、マスメディアによる発信は効果があると考えている。
 その一方で、フェイク対策やファクトチェックを記者が専従で行う体制にはなっておらず、通常の取材出稿業務を抱えているなかで、並行してフェイク対策にどれだけの労力をかけられるのかが課題となっている。


【あわせて読みたい】

2023年12月08日 新聞・テレビ各社の「ファクトチェック」実施状況アンケート【研究員の視点】#515
2023年12月15日 国内メディアによる「ファクトチェック」①(新聞)【研究員の視点】#517

調査あれこれ 2023年12月15日 (金)

国内メディアによる「ファクトチェック」①(新聞)【研究員の視点】#517

ファクトチェック研究班 斉藤孝信/渡辺健策/上杉慎一

 国内のメディア(新聞社、テレビ局)によるファクトチェックの取り組みについて、シリーズで報告している。今回は、沖縄の2つの新聞社(琉球新報社と沖縄タイムス社)と北海道新聞社への取材結果である。

【琉球新報社】
 琉球新報社は、2018年から現在に至るまで、日常的にファクトチェックに取り組んでいる。検証対象は限定していないが、おもにSNSに流布された偽情報を取り上げることが多く、情報の根拠を取材・分析し、誤りや曖昧な点があれば指摘している。取材や検証の結果は、同社の紙面のほか、ホームページにもファクトチェック特集ページを設けて発信している。記事の数は、現在(2023年11月末)までに98本にのぼる。

ryukyushimpo_fc.png(琉球新報のファクトチェック特設ページ)

琉球新報統合編集局デジタル戦略統括(局長)の滝本匠さんに聞いた。

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いつから?目的は?手応えは?
Q:ファクトチェックに取り組むことになったきっかけは?
滝本さん:ファクトチェック・イニシアティブなどのファクトチェック団体の提唱する形で、検証結果とともに、検証の経緯も含めて発信し始めたのは、2018年9月の沖縄県知事選挙からだ。
 最初の記事は、「虚構のダブルスコア 沖縄県知事選、出回る『偽』世論調査」(2018年9月8日)である。知事選をめぐり、ネットに流布した「世論調査」の情報が偽(フェイク)であることを、出典元とされた在京新聞社や政党に取材し、報じた。
 その後は、「ファクトチェックの対象となりそうなことがあった場合に、その都度」(アンケート回答より)、取材と検証を行い、紙面とホームページで伝えている。
 ただし、2018年の沖縄県知事選以前にも、上記のような検証経緯まで明らかにする記事スタイルではなかったが、「沖縄ヘイト」と呼ばれる言論(言葉の投げ捨て)に対して、それを「正す報道」を展開してきた。

Q:3月に実施した文研のアンケートで、琉球新報は、ファクトチェックに取り組む目的として、「読者・視聴者の信頼を得たいから」「ブランディングに役立つから」「読者・視聴者のニーズがあるから」「報道機関の責任・使命だから」「他の地域や海外の事例を見て、取り組むべきだと判断したから」といった点を挙げている。取り組み開始から6年余りが経過したが、手応えはどうか?
滝本さん:ファクトチェックの取り組みや記事に対して、社外からは「早稲田ジャーナリズム大賞公共奉仕部門奨励賞(2019年)」のほか、「新聞労連大賞(2019年)」「平和・協同ジャーナリスト基金賞(2018年)」など、複数の賞が贈られている。
 また社内でも、「これまでの選挙報道や沖縄ヘイトに対抗するうえでも、新しい地平を拓いた」という評価が高く、反対の声や、慎重にすべきという声は一切ない。

政治・選挙関連の記事が多いのはなぜか?
Q:公開された記事をみると、「政治・選挙」に関するものが21本で最も多く、基地問題などの「社会」が7本、「コロナ」関連が4本だ。「まずは選挙に関する情報を、特に細かく見ていこう」というような意図や方針があるのか。
滝本さん:政策や政治の信頼に関わる分野の虚偽情報が、特に選挙のタイミングで流れると、有権者が誤った認識で投票するおそれがある。選挙は民主主義の根幹なので、健全な民主主義のプロセスを大きくゆがめる危険性がある。それを少しでも食い止めるのは報道機関として当然、挑まなくてはならない課題だと思っている。
 ただし、「特に選挙に関する情報を」と意識してウオッチしていたわけではない。「ファクトチェック」を冠した記事群が沖縄県知事選関連なので、それが目立ったところはあるかもしれないが、沖縄の場合、実際に拡散している誹謗(ひぼう)中傷やフェイクが、どうしても、政府の方針にあらがっている基地に関する問題に焦点が当てられやすく、おのずと政治的な言説がチェックされる対象に上がってくることが多かった。そのような言説の底流には、沖縄への差別意識が横たわっていて、いまある基地問題だけでなく、サンフランシスコ体制(注1)や天皇制の問題とも不可分なものにならざるを得ない、だからこそ、中央にあらがおうとすることに対する攻撃が顕著に表れてくる・・・・・・そうした背景があるのだと思っている。

取り組みに関して感じている課題は?
Q:3月に実施したアンケートでは、日頃ファクトチェックをするうえで課題に感じていることとして「人手が足りない」「知識・スキルのある人材の育成が進まない」という点を挙げていた。具体的にはどのような状況なのか?
滝本さん:琉球新報では、ファクトチェックに専門的に取り組む部署はない。ふだん、それぞれの担当分野で取材をしている記者が、検証が必要だと思われる情報があれば、自身で取材をして記事を書いている。
 自身の専門分野に関する知識を下敷きにして検証や取材に当たれるというメリットがあり、実際に100本近い記事を出稿するという実績を積み重ねられた。一方で、取り組みの開始から6年余りが経過した現在、「属人的になりがち」だという懸念も生じている。すなわち、「やろう、やりたい」と思った記者は書くが、そういう言説に触れた者でも「ファクトチェック記事は面倒・やり方がいまいち分からない」という記者は、そのままにして書かないという事態も出てくるのかもしれない。先々、ファクトチェック記事を担う記者が固定的になり、ほかの記者が「任せておけばいい、(自分は)ちょっと触れない」という空気になってしまうことを懸念している。
 すべての現場記者がそれぞれ、「自身もファクトチェック記事を書く」という意識でいられるのがベストではあるが、取り組みを持続させるという観点では、担当部署・専門部隊を置いておくのが理想なのかもしれない。

ファクトチェックの取り組みを広げる役割
Q:琉球新報の特設ページでは、ストレートなファクトチェック記事(ある疑わしい情報について、取材・検証し、真偽を伝える)ものだけでなく、取り組みそのものを詳しく解説したり、担当記者の思いを紹介したりする“関連記事”も多い。また、『琉球新報が挑んだファクトチェック・フェイク監視』琉球新報社編集局編(高文研)、『沖縄フェイクの見破り方琉球新報社編集局編(高文研)、『石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞記念講座2021民主主義は支えられることを求めている!』瀬川至朗編著(早稲田大学出版部)など、同社のファクトチェックの記事や、それに臨んできた姿勢などを記した記事や論文なども数多く発表されている。こうした積極的な情報発信には、どのような意図があるのか?
滝本さん:2018年の沖縄県知事選でのファクトチェック報道では、新聞労連大賞をいただいた2019年の授賞式で、私は「今回私たちの受賞でファクトチェックという取り組みが全国的に広がり、新聞の役割や面白さをさらに高める『ファクトチェック元年』になればうれしい」とあいさつした。その後、実際に、全国の新聞社の若手記者から「どのように実施したのか」「実現するのに苦労はなかったか」などと問い合わせを受け、ファクトチェック報道をしたいという熱意が全国に潜在しているのを実感した。啓発的な記事・コラムを発信しているのは、各社でファクトチェック報道が広がってほしいという期待によるものだ。

Q:これだけ熱心に発信を続け、社内外からも評価・応援する声が多いとのことだが、逆に、批判や攻撃の的にされるようなことはないのか。
滝本さん:ファクトチェック報道では、「琉球新報の記事こそファクトチェックしろよ」などといった中傷も頻繁に受けている。そもそも、ファクトチェック報道以前から、琉球新報の報道に対しては、沖縄ヘイトの一環ともいえるバッシングはずっと続いている。やはり特に基地問題や、往々にして政府の方針に対決する姿勢となりがちな論説や論評、記事に対して浴びせかけられるもので、記者がツイートすることに対しても攻撃の矛先は向けられている。

注1「サンフランシスコ体制」:1952年に、サンフランシスコ平和条約と日米安全保障条約が発効して成立した、日米安保体制のこと。これによって、日本の本土は連合国軍総司令部(GHQ)占領下から離れ、国際社会に復帰して主権を回復した。一方で、沖縄は、その後も1972年の「本土復帰」まで、アメリカの施政権下におかれた。

 

【沖縄タイムス社】
沖縄タイムスは、2018年の沖縄県知事選挙を機にファクトチェックの取り組みを開始し、以降、検証記事やコラムを、同社の紙面と特設ページで発信している。2023年11月末現在、特設ページで確認できる記事は18本である。

okinawatimes_fc.png (沖縄タイムスのファクトチェック特設ページ)

沖縄タイムス編集委員の阿部岳さんに聞いた。 takashi_abe.jpg

いつから?目的は?手応えは?
Q:ファクトチェックに取り組むことになったきっかけは?
阿部さん:沖縄タイムスとしては、2018年の沖縄県知事選でSNSにデマが出回ったのを機に取り組みを始めた(自分自身は、2021年、ファクトチェックに関するプラットフォーマーのプロジェクトに参加したのをきっかけに関わるようになった)。
 以降、「ファクトチェック・イニシアティブ」の基準に沿って、SNSから選挙ビラまで、あらゆる媒体を対象に実施している。選挙や基地など、特定の分野に限定せず、沖縄に関する疑わしい情報を検証し、紙面とウェブサイトで報じている。

Q:3月のアンケートでは、取り組みの目的として「読者・視聴者の信頼を得たいから」「読者・視聴者のニーズがあるから」「報道機関の責任・使命だから」「他の地域や海外の事例を見て、取り組むべきだと判断したから」といった項目を挙げていた。取り組み開始から6年余りが経過したが、手応えはどうか?
阿部さん:取り上げるテーマによるが、社外からは、SNSで肯定的に拡散されることも多い。ホームページの記事のアクセス数では、ファクトチェック記事はいつも上位になる。また、ファクトチェックで誤情報であることを検証し発信したことによって、検索サイトで該当のキーワードを検索した際に、それまでトップに出ていた誤情報よりも上位に、沖縄タイムスの打ち消し情報が掲載されるようになったケースもあり、手応えを感じている。社内でも肯定的に評価されている。

取り組みに関して感じている課題は?
Q:3月のアンケートでは、「人手が足りない」という課題を挙げていた。具体的にどのような状況なのか?
阿部さん:ファクトチェックの専門部署はなく、必要な時に、やりたい人が随時、記事を出している。検証すべき情報を目にした際には、若手記者に「やってみないか?」と声をかけたり、逆に若手のほうから「こんな話があるが、チェックしたほうがいいですよね」と提案してくれたりする。必要性は社内の皆で共有できている。
 一方で、ファクトチェックは、通常の記事よりも格段に手間がかかる。例えば最近の事例では、著名人が動画サイトで発信した偽情報について、ファクトチェックを実施したが、偽情報の発信者は、根拠もなく“でまかせ”的に発信しており、それをチェックするとなると、そもそもどんな機関のどんなデータを調べればよいのかというところからスタートしなければならない。そのために1日半くらいは通常の取材業務がストップする。

新聞社が取り組む意義は?
Q:負担の大きなファクトチェックに、あえて取り組み続けているのはなぜか。
阿部さん:これだけ偽情報・誤情報が飛び交い、一般市民がだまされたり被害にあったりしてしまう状況がある限り、ファクトチェックは報道機関の責務であると思う。
 ポジティブな意味でも、日常的に物事を調べることに慣れていて、多様な発信の媒体と影響力を持っているという点で、報道機関の得意分野であるとも感じる。その得意分野を生かして、デマを打ち消し、正しい情報を人々に届けるという社会貢献をしていくべきだと考えているし、この取り組みがより多くのメディアに伝播(ぱ)してほしい。

 

【北海道新聞社】
 沖縄の2紙のようにファクトチェックの結果を他の記事と独立させて特設ページなどに掲載する取り組みとは別に、日常の記事を書く際に、情報の真偽を確認するプロセスにファクトチェックの手法を取り入れていると回答した社もあった。
 北海道新聞では、政策や法律案などに関する政治家などの発言や政府の説明が本当に正しいのか、日常の取材の中で真偽を検証する形でファクトチェックを行っていると回答した。専用ページは立ち上げず、「ファクトチェック」という言葉も紙面上使わないが、事実か否かの検証結果を記事の中で詳しく言及している。この方針について社内では、読者の「知る権利」への奉仕、権力への監視といった報道機関の基本的な役割を果たす仕事として重要だと認識を共有しているという。東京支社編集局・報道センター部次長の森貴子さんに聞いた。

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いつごろから?目的は?
Q:北海道新聞としてファクトチェックを始めたのはいつごろからで、なぜ始めたのですか?
森さん:政治家などの発言や政府の説明内容に対する真偽の検証は、古くは2013年の秘密保護法案、2017年共謀罪をめぐる報道などでも行っていた。特に共謀罪の時は、法案の内容を細かく分析・検証していくと、例えば放火事件でいえば、共謀罪は、予備罪よりもっと手前の計画段階で処罰する際の法律なのに、予備罪の量刑より重いケースがあって、なぜか逆転していることが分かり、記事で伝えた。おそらく改正対象の罪名が200以上あるので、法務省のチェックが行き届いていなかったのだろう。他の法律との整合性がとれていない点もあり、とても雑な条文だった。

20220727_dousin.jpg2022年7月27日付け 北海道新聞 朝刊より

また2022年には、防衛費の対GDP比の算定方法について、米軍側に払う経費とかいろんな経費が上積みされていることが見えなくなっていることを伝えた。「日本の防衛費のGDP比は、G7諸国で最も低い」と政府は説明してきたが、NATO(北大西洋条約機構)加盟国の算定方法に比べ、退役軍人年金(旧日本軍関係者の恩給費に相当)や沿岸警備隊(海上保安庁に相当)の経費などが含まれておらず、これらを加えると、日本の防衛費は当時すでにGDP比1.24パーセントに膨らんでいることを記事で伝えた。
 政策や法律について、政府が曖昧にしていること、正しくない説明をしていることを、きちんと確証をもって指摘していくのが目的だ。

正しくはどうなの?とセットで
Q:情報の真偽を確認して伝えるうえで気をつけていることはありますか?
森さん:最近の例でいうと、LGBT法案の国会審議の時に、「この法律が成立したら女性のふりした男が女子トイレに入ってきて性的ないたずらをしかねない」という言説が広がったが、それを紙面で否定するのが大変だった。そもそもLGBT法はそういう趣旨の法律ではないのに、"トランスジェンダーの人たちは危ない"というのは、あえて間違った方向に誇大に書かれた悪質な言説だ。そこで、デジタルの『イチから解説』というコーナーに、Q&Aの形で性的少数者に対する性差別を禁止した海外の事例や法律家の説明を紹介し、この言説は誤りだということを伝えた。

20230711_dousin.jpg2023年7月11日付け 北海道新聞WEBより

これはおかしい、間違っているということだけでは、情報の受け手は満足しない。本当に正しいのは何なのか、間違った情報がなぜ広まったのか、どう考えればいいのか示さないと受け手も消化不良になる。法律にしても政治にしても、彼らの言っていることは間違っているという批判だけでなく、正しい姿を上書きするような記事を書くように気をつけている。

市民の発信を打ち消す正当性とは
Q:ファクトチェックを行ううえで課題と感じていることはどのようなことでしょうか?
森さん:一番悩ましいのは、間違った事実を述べたヘイトスピーチを記事の中でどう打ち消すか。第三者、例えば法務省などがこれは間違っていてこの発言はヘイトだと認めてくれる場合もあるが、概してお墨付きを与えてくれるところがない中で"間違っている"ということを、確かにおかしいと皆に思ってもらえるだけの論理をもって伝えなければならない。特に一市民が発している言葉にマスコミがそれに対抗していくのは、マスコミの方が権力を持っている以上、慎重でなければいけないし、覚悟がいる。
特に北海道はアイヌ民族へのヘイトがある。彼らの言っていることは間違いで、正しくはこうだと、アイヌ民族をめぐる歴史的な経緯とかをきちんと知ってもらうことと併せて行わないと意味がない。

ファクトチェックをめぐるマスメディアの役割とは
Q:健全な情報空間の必要性が指摘されるいま、みずからの役割をどう意識していますか?
森さん:正しい情報に飢えたような社会にどんどんなっていく中で、事実か誤りかの検証は、マスコミが担っていく役割の一つであると個人的には思う。それができる、ノウハウは多少なりとも私たちにあることを考えれば、どうやってマスコミが生き残っていくのかという意味においても、その可能性はあると思う。
特にうちはデジタルに力を入れ始めたばかりで、まだデジタルの怖さ、何が起こるかというのが実感としてあまりない。いずれネットならではの壁もあるだろうし、強いバッシングとか経験していくだろう。そう考えた時に署名記事や写真をさらすのも怖いし、でもそれが信頼性を担保するともいえるし、すごく難しい。どうやってバッシングや誹謗(ひぼう)中傷から記者を守るかということを同時に作っていかないといけない。それと併せて、「なぜこのファクトをチェックするのか」ということをどう説明するかを考えながらやっていくしかないと思う。

調査あれこれ 2023年12月13日 (水)

糾弾される岸田自民党 ~パーティー券裏金問題で政治情勢流動化~【研究員の視点】#516

NHK放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

 久しぶりに「糾弾」という言葉を思い出しました。「罪をおかした人や不正をした人に対して、その行いを問いただし、強くせめること」というのが一般的な意味です。世の中にはさまざまな問題が存在していますが、圧倒的多数の人がけしからんと感じる出来事でないと使わない言葉でしょう。

 自民党の最大派閥安倍派「清和政策研究会」が政治資金集めのために1枚2万円のパーティー券を大量に販売。今の政治資金規正法では、その正確な収支を報告書に記載して総務省に提出していれば不正にはなりません。つまり、派閥が政治資金を集める手段として一定のルールのもとに合法化されてきています。

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 しかし安倍派は所属議員やその事務所が一定のノルマを超えて販売したパーティー券の収入を報告書に記載せず、幹部を中心とする議員側に「キックバック」して裏金収入としてきたのです。つまり派閥のパーティーというイベントを集団的な裏金還流装置に仕立て上げていたということです。

 政党や政治家個人、そして派閥という政治団体が集め、政治資金収支報告書で公開している収入については所得税がかかりません。政治資金は「議会制民主主義を育てる財源」として課税されないという特典を与えられているのです。

 さらに各政党に対しては、総額で年間300億円あまりの政党助成金が、それぞれの所属議員数に応じて国から配分されています。共産党だけは、この制度に反対して受け取っていません。

 この政党助成金収入にも税金はかかりません。政党助成金を受け取った政党は所属議員にも配分していますので、納税者である国民から見れば「そういう税金からの公費支給も受けていながら裏金作りを行うのは言語道断」ということになります。

 この安倍派を中心とするパーティー券裏金問題に関する報道が続く中、12月8日(金)から10日(日)にかけてNHKの月例電話世論調査が行われました。岸田内閣の支持率は発足以降最低を更新し、不支持率は最高を更新しました。

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☆あなたは岸田内閣を支持しますか。それとも支持しませんか。

  支持する   23%(対前月-6ポイント)
  支持しない   58%(対前月+6ポイント)

この内閣支持率23%というのは、自民党が2012年12月に政権に復帰し、第2次安倍内閣が発足した後の11年間で最も低い数字です。今と同じ自公政権では、2009年に政権交代に追い込まれた麻生内閣の末期以来の低い数字です。

 岸田内閣を支持すると答えた人を与党支持者、野党支持者、無党派の別に詳しく見ると、こうなります。

  与党支持者   51% (対前月-2ポイント)
  野党支持者   10% (対前月-2ポイント)
  無党派     9% (対前月-3ポイント)

 いずれでも支持すると答えた人の割合は前月より低下していて、パーティー券裏金問題が岸田内閣の最近の不人気に拍車をかけていることは疑いようもありません。

 今回の問題は安倍派にとどまらず、二階派、さらには岸田派の政治団体でも同様の収入と支出の不記載や不備が指摘されています。(注:12月12日時点)大小様々の病巣が自民党内のあちこちにありそうな気配です。

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☆今、あなたは何党を支持していますか。支持している政党名を一つだけおっしゃってください。

  自民党 29.5%
  立憲民主党 7.4%
  日本維新の会 4.0%
  公明党 3.2%
  共産党 2.6%
  国民民主党 2.1%
  れいわ新選組 1.7%
  社民党 0.3%
  みんなでつくる党   0.1%
  参政党 0.4%
  支持する政党なし  43.3%


自民党は前の月より8.5ポイント下がっていて、30%を割ったのは2012年12月に政権に復帰した後では初めてです。岸田内閣の支持率と同様に、歴史の1ページに残る凋落(ちょうらく)ぶりです。

 それもこれも、東京地検特捜部が政治資金規正法違反で詳細に事実関係を調べ上げているのに、指摘されている自民党関係者のだれ一人として進んで自ら非を認めようとしていない点に問題があります。「捜査が続いているので話せない」という逃げ口上を繰り返すだけでは、特捜部に立件されなければ問題はないと言っているに等しい反省のなさが浮かび上がってくるだけです。

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☆あなたは政治資金をめぐるルールを厳しくすべきだと思いますか。今のままでよいと思いますか。

  厳しくすべきだ   81%
  今のままでよい     9%

厳しくすべきだという回答を詳しく見ると、与党支持者で79%、野党支持者で90%、無党派で80%となっていて、立場による大きな違いは表れていません。大多数の国民の目に、「けしからん問題」「糾弾すべき問題」と映っているということです。

 政治資金規正法が今の形に大きく改正されたのは、30年以上前のリクルート事件をきっかけにして盛り上がった政治改革論議の帰結でした。それまでは自民党一党支配と呼ばれる政治構造のもとで企業献金を大量に集め、それが国民の反発を買うに至ったからです。

 その時の改正で政治家個人は自分の政治団体で企業からの献金を受け取ることができなくなり、パーティー券の販売収入を政治資金に充てる方法が広がったという経緯があります。派閥のパーティー券販売はそれを大規模に行うもので、派閥から所属議員に渡される活動資金の原資調達方法として温存されてきました。

 今回、自民党内でも特に安倍派が矢面に立たされているのには理由があります。安倍長期政権の下で、パーティー券をまとめて購入する企業などの側に、官公庁などへの影響力の強い安倍派と関係を太くしておくのが得策だという判断があったと証言する関係者は少なくありません。

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 それによって所属議員ごとのノルマを超えるパーティー券が大量に売れるようになり、キックバックされた資金はいわば販売成績に応じた御褒美として裏金化されたという構造です。

 岸田総理は臨時国会が閉幕した後、年末恒例の来年度予算の編成作業前に安倍派の閣僚を交代させる方針です。しかし、そんなことで問題解決の道が開かれるわけではありません。

 野党各党が政治資金規正法の改正案を提出、あるいは準備して、新たな政治改革を進めるべきだと訴えています。国民の目に触れることのない金の流れを排除すべきは当然です。

 岸田自民党は、強い危機感をもって新たな政治改革に乗り出す必要があります。それがいつまでたっても前に進まないならば、政権そのものが国民にそっぽを向かれ空中分解しかねないというのが客観情勢です。崖っぷちに立っていることを強く自覚すべきです。

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島田敏男
1981年NHKに入局。政治部記者として中曽根総理番を手始めに政治取材に入り、法務省、外務省、防衛省、与野党などを担当する。
小渕内閣当時に首相官邸キャップを務め、政治部デスクを経て解説委員。
2006年より12年間にわたって「日曜討論」キャスターを担当。
2020年7月から放送文化研究所・研究主幹に。長年の政治取材をベースにした記事を執筆。

 

 

調査あれこれ 2023年12月08日 (金)

新聞・テレビ各社の「ファクトチェック」実施状況アンケート【研究員の視点】#515

ファクトチェック研究班 斉藤孝信/上杉慎一/渡辺健策

 デジタル情報空間が拡大し続ける中、インターネット上での誤情報・偽情報の氾濫が深刻な社会課題になっている。人々に正しい情報を届けるためには、そうした真偽が疑わしい情報を検証し、その検証経過や結果を伝えるファクトチェックの取り組みが不可欠である。
 日本国内では、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)や日本ファクトチェックセンター(JFC)といった非営利の団体・組織が活発にファクトチェックをおこなっている。一方で、そうしたファクトチェック団体などからは、日本ではマスメディアによる取り組みが遅れていると指摘されてきた。
 そこで文研では、この問題に関する研究プロジェクトを立ち上げた。今後、シリーズで、国内の新聞・テレビ各社に対して行ったアンケートや取材の結果を報告する。
 初回は、メディアによるファクトチェックの実施状況を把握するために、全国の主な新聞社と、東京・大阪・名古屋のテレビ局(民放・NHK)、74社を対象に実施したアンケート結果を紹介する。調査期間は2023年3月7日(火)から27日(月)で、22社から回答があった。この調査におけるファクトチェックの定義については、ファクトチェック団体が提唱している「チェックの結果を、専用のサイトで、検証経過や根拠も含めて個別に公表すること」とする旨を、協力依頼の段階で伝えた。なお、今回は調査時点の各社の回答を尊重し、その後の取り組みの変化や、各社の詳細な取り組みの実態や思いなどについては、次回以降のブログで報告したい。


ファクトチェック「日常的におこなっている」のは少数派
 まず、日常的にファクトチェックをおこなっているか否かを尋ねたところ、22社中、8社(新聞5社、テレビ3社)が「おこなっている」と答えた(図1)。
1208_factcheck_zu1.png どのような媒体や情報をチェックの対象にしているのかについて、「おこなっている」社の回答は以下のとおりであった。
・「チェックの対象は決めていないが、SNSを中心に、偽情報とみられる情報の根拠を分析し、誤りや曖昧な点を取材して指摘している」(琉球新報)
・「ファクトチェック・イニシアティブの基準に沿って、SNSから選挙ビラまで、あらゆる媒体を対象に実施している」(沖縄タイムス)
・「政治家の発言などを対象に、ファクトチェック・イニシアティブの判断基準をもとに報じている」(朝日新聞)
・「投稿者について、過去の投稿、広がりやつながり、投稿日時に矛盾はないかを含むヒアリング、住所、氏名の確認をおこなっている」(フジテレビ)


報道機関の使命として
 チェックを「おこなっている」8社に対し、取り組む動機を複数回答で尋ねた(表1)。 最も多かったのは「報道機関の責任・使命だから」で、8社すべてが挙げた。うち4社は「他の地域や海外の事例を見て、取り組むべきだと判断したから」とも答えている。一方で、「当事者・被害者からの要望があったから」は1社にとどまった。
 注目したいのは、読者や視聴者の存在を意識した「読者・視聴者の信頼を得たいから」(6社)、「読者・視聴者のニーズがあるから」(5社)を挙げた社の多さである。
 アンケートでは、実際に読者や視聴者からどのような反響があったのかも尋ねた。その結果、「ネットで肯定的に拡散されることも多い」(沖縄タイムス)、「継続的に調査・報道・ファクトチェックしていただけるよう希望しますなどという声が寄せられる」(朝日新聞)、「2022年11月20日に放送した特番『ザ・ファクトチェック』では、視聴者から好意的な反応が多く来た」(日本テレビ)などおおむね好評のようで、「読者から一定の支持が得られていると認識している」(北海道新聞)と手応えを感じている社が多い。
 個別の記事への評価にとどまらず、その社全体の「ブランディングに役立つ」と考える社も2社あった。一方で、「購読者数や視聴率が伸びるから」取り組むという社は1つもなかった。
 このように、現時点でファクトチェックを「おこなっている」メディアは、まずは“果たすべき責任である”という使命感で取り組み、読者増や視聴率向上につながるとは考えていないことがわかった。 1208_factcheck_hyou1.JPG


人手不足と見極めの難しさ
 では、実際にファクトチェックに取り組む中で、どのような課題を感じているのだろうか。
引き続き、「おこなっている」8社に複数回答で尋ねた結果を紹介したい(表2)。
 最も多かったのは「人手が足りない」の5社であった。また「知識・スキルのある人材の育成が進まない」と答えた社も2つある。チェック自体の難しさを挙げる社もあり、「情報の真偽の見極めが難しい」が4社、「チェックの対象選びが難しい」も3社となった。
 なお、「専門部署がある」と答えたのは1社のみであった。つまり、ほとんどの社では、特にファクトチェックを専門としているわけではない記者が、日頃の取材や記事執筆のかたわら、対象の選定や真偽の見極めに苦労しながら、ファクトチェック記事“も”書いているのである。

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 実施している8社が挙げた課題は、ファクトチェックを「おこなっていない」14社が、取り組みに踏み出せない原因にもなっている。
 表3は「おこなっていない」社に、なぜ実施しないのかを複数回答で尋ねた結果である。
 「要員が確保できないから」が10社と大半を占めた。次いで「専門的な知識・スキルがないから」も7社にのぼる。
 「おこなっていない」14社からは、「必要性を感じているが、体制がまだ取れていないのが現状。検討する考えはあるが、時期は未定」(地方新聞社)、「実施すべきと思うが、そのための人員や予算がないのが実情。また放送での発言をチェックして後日放送するにしても、そのための放送枠を作るのも難しい」(在阪テレビ局)など、ファクトチェックの意義には賛同するものの、人手や予算、アウトプットの場の確保など、現実的な困難さのせいで踏み出せないといった声が多かった。また、「地方紙単独で実施するには、あらゆる面でリソース不足だ。地方紙連携などで、調査期間を設け、テーマを定めて行うなど、メディア全体で取り組む環境が必要だ」(地方新聞社)という意見も聞かれた。

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ファクトチェックの“現在地”~自由記述の回答から~
 最後に、全社に対して「フェイクニュースやファクトチェックに関して、どのような問題意識をお持ちですか?」と尋ね、自由に答えてもらった結果を抜粋して紹介したい。

○報道機関の“使命感”~政治・選挙に関するファクトチェック~
 報道機関の使命だと捉えている社が多かったことは述べたとおりだが、中でも政治や選挙における偽・誤情報を防ぐことに強い使命感を抱いているという意見が多くみられた。
 「虚偽情報が政策や政治の信頼に関わる分野で流れると、有権者が誤った認識で投票し、 健全な民主主義のプロセスが大きくゆがめられる危険性がある。それを食い止めるのは、 報道機関として当然、挑まなくてはならない課題である」(地方新聞社)
 「選挙期間中の報道はとりわけ政治的公平性が求められるが、真偽不明の情報が飛び交い、有権者の投票行動に影響を及ぼしかねないのであれば、報道機関として取材を尽くし正しい情報を伝える使命は感じている」(在阪テレビ局)

○ファクトチェック記事は、読者・視聴者に届くのか?
 ファクトチェックをおこなっている社が、読者増や視聴率向上のためではなく、使命感で取り組んでいる旨はすでに紹介したとおりだが、そうして発信したところで、本当に読者や視聴者に届けることができるのかという不安や、波及力の限界に関する声もあった。
 「視聴者、ユーザーがまず知りたいのは、社会で起きている事象そのものであり、その先にある『何が起きたのか』『ナゼ起きたのか』だろうから、ファクトチェックの営みは、直接的に視聴者、ユーザーのニーズを満たしづらいのではないか」(在京テレビ局)
 「フェイクニュースの拡散は、個人・企業を問わず大きな問題だが、拡散された誤情報を打ち消すのは、象徴的な出来事がない限り不可能だ」(地方新聞社)

○マスメディア自体の信頼は?
 ファクトチェックをおこなうには、まずメディア自身の信頼を高めることが先決だろうという自戒の念についても、複数の社が言及している。
 「既存のマスメディアも自らの記事をチェックしなければ『ご都合主義的』と見られかねない懸念がある。紙媒体と放送、ネットメディアなどで、『紙の新聞は正確』『ネットは不確か』などとレッテルを貼り合っていては話が進まない。全媒体がチェックを受ける覚悟を持つべきだ」(地方新聞社)
 「SNS上のフェイクニュースを正そうとする前に、信頼されるメディアという存在意義を見つめ直し、再構築すべきだ」(地方新聞社)

○ファクトチェックの定義は? 責任は誰に?
 ファクトチェックを誰が実施すべきか、その責任の所在について、疑問を投げかける声も多くあった。また、今回のアンケートでは、ファクトチェックの定義について、ファクトチェック団体が提唱している「チェックの結果を、専用のサイトで、検証経過や根拠も含めて個別に公表すること」としたが、回答した社に取材したところ、「自社の記事やコンテンツの中で誤情報を出すことがないよう日常的に行っている事実確認」も、広い意味でのファクトチェックなのではないか、と捉えているところもあった。
 こうした意見からは、デジタル情報空間の急拡大とそこで生まれる偽・誤情報対策という新たな難題にどう向き合うべきなのか、メディア自身の課題整理が追いついていない現状が浮かび上がってくる。
 「ファクトチェックという言葉の定義が曖昧。社会的な認知度や理解度が、マスコミを含め、 不足している。ファクトチェックのプロセス(何を対象に、どのような確認検証をしたのか)を読者、視聴者、有権者にできる限り知らせ、自ら確認できる透明性を確保する必要がある」(地方新聞社)
 「フェイクニュースは淘汰(とうた)されるべき存在であるのは当然だが、自社メディアが報じたわけでもない情報を、当事者でもない我々がチェックするのは疑問だ。偽情報の氾濫はプラットフォーマーやネット自体の信頼性を著しく低下させるものであり、インターネット事業者側の責任においてチェックするのが自然ではないか」(在名新聞社)
 「表現の自由との兼ね合いもあるが、情報発信者やプラットフォーム事業者の責任を明確にする必要がある。情報リテラシー教育をさらに推進する必要もある」(地方新聞社)

  次回以降のブログでは、研究班が、各メディアを取材した結果を報告していきたい。

調査あれこれ 2023年11月22日 (水)

まもなくCOP28がスタート!日本人は気候変動についてどう思ってる? ~ISSP国際比較調査「環境」から~【研究員の視点】#512

世論調査部(社会調査)村田ひろ子

 2023年11月末からUAE=アラブ首長国連邦で開かれる国連の気候変動対策の会議「COP28」では、国連の気候変動枠組条約に加盟するおよそ200か国が、地球温暖化など世界的な気候変動による影響や対策について議論を行う予定です。会議は、各国が自主的に設けた温室効果ガスの削減目標がどの程度達成されているのかを確認する場にもなるわけですが、日本については、2021年に「2030年度までに温室効果ガスの排出量を13年度比で46%削減する」という方針を打ち出しています。
 この目標を達成するためには、ひとりひとりの意識が重要なことは言うまでもありませんが、果たして日本人は環境問題や気候変動についてどのように考えているのでしょうか?2020年に実施し、2023年8月末にリリースされた国際比較調査※1の結果からみていきます。この国際比較調査、日本からはNHK放送文化研究所が参加しています。

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 『環境問題について心配している』※2という人は、日本で8割近くにのぼり、比較データのある28の国や地域の中で3番目に多くなっています。また、気候変動による世界的な気温の上昇が『危険だと思う(極めて+かなり)』という人も8割近くで、各国の中で上から5番目になっています。

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 各国と比べて、多くの日本人が環境問題や気候変動について不安に思っている様子がうかがえます。
 それでは、環境保護に対する意識も高いのでしょうか。『環境を守るためなら、今の生活水準を落とすつもりがある(すすんで落とす+ある程度は落としてもよい)』と回答した人の割合をみると、日本では約3割にとどまり、各国の中ではやや少ないほうです。さらに、20代以下の若い人に限ってみると、日本では2割に届かず、下から数えて4番目に位置付けています。
 日本人の多くが環境や気候変動について心配しているわりには、環境を守るためであっても、自分の生活を犠牲にしたくないと考えているようです。

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 もう一つ、気になる結果をみてみましょう。『私だけが環境のために何かをしても、他の人も同じことをしなければ無意味だと思う』かどうかを尋ねた結果です。『無意味だと思う(どちらかといえばを含む)』※3と答えた人は、日本で61%を占め、各国の中で4番目に多くなっています。さらに20代以下に限ってみると、日本では73%にのぼり、1番多くなります。日本では、市民が「メディアを通じて気候変動に関する政治・経済動向についてはよく知っている一方で、それらが自分の生活や活動に関連した問題としてはとらえにくく、自分の行動によって社会を変えられるとの感覚を持てない」という指摘※4があります。
 個人1人では、環境問題はとうてい解決できない、という無力感が日本の若い世代にまん延しているとしたら、とても気がかりです。

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 まもなく始まる「COP28」で、世界的な気候変動による影響や対策が話し合われる予定ですが、日本でも脱炭素社会のあり方についての議論が高まるのかどうか、引き続き注目したいと思います。


※1 ISSP国際比較調査「環境」
ISSP Research Group (2023). International Social Survey Programme: Environment IV - ISSP 2020. GESIS, Cologne. ZA7650 Data file Version 2.0.0, https://doi.org/10.4232/1.14153.

※2 「まったく心配していない」を「1」、「非常に心配している」を「5」として、1~5までの中から選んでもらい、「4」と「5」を合算して『心配している』とした。また、各国の回答傾向を把握しやすくするため、「わからない」や無回答を除外して集計している。

※3 「賛成」と「どちらかといえば、賛成」を合算した結果。

※4 ジェフリー・ブロードベント、佐藤圭一(2016)「世界のなかの日本—気候変動対策の政策過程」、長谷川公一・品田知美編、『気候変動政策の社会学—日本は変われるのか』、昭和堂


○おすすめ記事
脱炭素時代の環境意識 ~ISSP国際比較調査「環境」・日本の結果から~
#334 予想外?予想どおり? 日本人の環境意識

【村田ひろ子】
2010年からNHK放送文化研究所で社会調査の企画や分析に従事。これまで、「中学生・高校生の生活と意識」「生命倫理」「食生活」に関する世論調査やISSP国際比較調査などを担当。

調査あれこれ 2023年10月20日 (金)

部活にまつわるエトセトラ ~「中学生・高校生の生活と意識調査2022」から~【研究員の視点】#508

世論調査部(社会調査)村田ひろ子

 猛暑の夏が終わり、ようやく秋らしくなってきましたね。近所の商店街で、テニスラケットを持った中高生たちがたい焼きをおいしそうにほおばっているのを見かけて、「秋といえば、スポーツ、それからなんといっても食欲だよね」と一人納得したのでした。もちろん芸術の秋も楽しみたいですよね。

 話は少しそれますが、中高生にとって、スポーツや芸術といえば、部活動ではないでしょうか。イマドキの中高生たちは、どのように部活動に取り組んでいるのか、気になりませんか?NHK放送文化研究所が昨夏、全国の中高生を対象に実施した世論調査※1の結果を確認してみましょう。

 学校で、部活動をしているかどうかを尋ねた結果、中学生では、「体育系(運動部)にだけ入っている」という人が6割以上を占めています。高校生では4割近くで、中学生より少なくなっています。また、部活動に『入っている(体育系+文化系+両方)』人は、中学生が8割、高校生が7割で、多くの中高生たちが部活動に入っていることがわかります。

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 それでは、中高生たちは自分が入っている部活動にどのくらい満足しているのでしょうか? 中高ともに『満足している(とても+まあ)』が9割近くにのぼります。部活動の内容別にみると、「体育系(運動部)にだけ入っている」人も、「文化系にだけ入っている」人も、『満足している』が9割近くで、差はありません。

部活動に満足しているか(分母:部活動に入っていると回答した人)1020_2_manzokudo.png

 中高生の多くが、部活動に満足しているのはなぜでしょうか?部活動に入っている理由を複数回答で尋ねた結果をみると、中高ともに「自分がやりたかったから」が他の選択肢を引き離して最も多く、中学生が72%、高校生が76%にのぼります。「自分がやりたかったから」を選んだ人の部活動の満足度は9割を超えていて、それ以外の回答を選んだ人の満足度(約7割)と比べてかなり高くなっています。やりたいことが選べて満足できている人が多いようです。一方で、学校で必ず入ることになっているという回答が1割程度あります。学校の方針なのでしょうが、納得できていればいいのですけど、少し心配もしてしまいます。

部活動に入っている理由(複数回答、分母:部活動に入っていると回答した人)1020_3_riyuu.png

 さて、中高生は、部活動を通じて多くの人と知り合い、交流を深めていると考えられますが、部活動と友だちづきあいの間には関連がみられるでしょうか? 高校生では、「ちょっとした悩みごとを相談できる友だち」や「深刻な悩みごとを相談できる友だち」がいる人は、部活動への参加の有無では差がありません。一方、中学生では、部活動に入っている人のほうが、いずれの場合についても、割合が高くなっています。高校生と比べて行動範囲が限定され、おのずと学校内の友人関係が中心になるなか、部活動に入っている子のほうがクラス以外の交友範囲が広がって、深い関係の友だちのいる割合が高くなっているのかもしれませんね。

友だちがいる人の割合(部活動への参加の有無・中高別)1020_4_yuujinnsuu.png

 中高生について調べた世論調査の結果は、他にもたくさん!SNS利用やジェンダー意識、親子関係、学校生活など、イマドキの中高生の意識、ぜひ、こちらからチェックしてみてください!
今どきの中高生たち~第6回「中学生・高校生の生活と意識調査2022」単純集計結果~

※1 第6回「中学生・高校生の生活と意識調査2022」

○おすすめ記事
コロナ禍の不安やストレス,ネット社会の中高生~「中学生・高校生の生活と意識調査2022 」から①~
ジェンダーをめぐる中高生と親の意識~「中学生・高校生の生活と意識調査2022」から②~

【村田ひろ子】
2010年からNHK放送文化研究所で社会調査の企画や分析に従事。これまで、「中学生・高校生の生活と意識」「生命倫理」「食生活」に関する世論調査やISSP国際比較調査などを担当。

調査あれこれ 2023年10月12日 (木)

経済対策は国民の心に届くのか?~内閣改造も政権浮揚につながらず~【研究員の視点】#507

NHK放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

 9月13日に行われた内閣改造は、上川陽子外務大臣をはじめ5人の女性閣僚の起用で注目されました。ところが2日後に決まった副大臣と政務官は全員が男性。思わず「艶消し」という言葉を思い浮かべた人もいれば、与党の女性議員の層が薄いと感じた人もいたことでしょう。

 この改造人事の後、最初のNHK電話世論調査が、10月7日(土)から9日(月・祝)にかけて行われました。

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☆あなたは岸田内閣を支持しますか。それとも支持しませんか。

  支持する   36%(対前月±0ポイント)
  支持しない   44%(対前月+1ポイント)

改造前と比べてほぼ横ばいでした。岸田総理の周辺は、人事によって自民党内での求心力を高め、政策遂行の力を強化するのだと力説していました。しかし、国民の側の評価は冷ややかで、いわゆるご祝儀は舞い込んでこなかったということです。

 岸田内閣の発足は2021年10月4日。新型コロナウイルスの感染拡大が社会を覆っていた時期でしたが、その後は徐々に収束の方向に向かいはじめ、永田町界わいでは「岸田総理はついている」とも言われました。

 ただ、2022年2月にはロシアがウクライナに軍事侵攻を開始し、食糧や資源の流通が滞ったりして世界規模で経済活動に影響が及び、国際社会の秩序も動揺が続いています。

☆岸田内閣の発足から2年がたちました。あなたは、この2年間の岸田内閣の取り組みを評価しますか。

  評価する   40%
  評価しない   54%

これを与党支持者、野党支持者、無党派の別に見てみると、「評価する」は与党支持者65%、野党支持者27%、無党派25%となっています。与党支持者で何とか3分の2を占めていますが、野党支持者と無党派では4分の1にすぎません。野党支持者と無党派では、「評価しない」が7割に上っています。

 この2年間、岸田総理は「新しい資本主義」「異次元の少子化対策」「安全保障の対処力強化」とスローガンを並べ立ててきました。しかしながら国民の目には具体的な優先政策が何で、自分たちに求められる新たな負担は何なのかといった点が腹に落ちていないように感じます。

 とりわけ物価高への対応を柱とする経済対策には厳しい目が向けられています。

keizaitaisaku1012_2__W_edited.jpg9月25日

 内閣改造後の9月25日に岸田総理は官邸で、「近年の税収増加を経済対策で国民に還元する」と強調しました。確かに2021年以降、所得税、法人税、消費税の基幹3税を中心に、財務省の当初の見積もりよりも結果として税収が多くなる「上振れ」が続いているのは事実です。

 ただ、これについては物価高騰で原材料費や人件費が上がった分、製品やサービスの価格に転嫁されたために税収増となっているだけで、経済の実勢が上向いているわけではないというエコノミストの分析も出ています。

☆政府は、物価高対策などを盛り込んだ新たな経済対策を、10月末をめどにまとめる方針です。あなたは、対策の効果に期待していますか。期待していませんか。

  期待している   38%
  期待していない   57%

期待していないが全体の6割近くを占めています。この設問でも、野党支持者と無党派で「期待していない」という否定的な回答が7割に達しています。

 税収が増えた分を国民に還元するということは、国民の不満や不安を解消するために、まず目先の支出、金配りを優先するということでしょう。そうなると、国が抱える多額の借金の返済に充てる財政健全化の取り組みは後回しになる懸念も生じます。

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☆政府は、新たな経済対策を早期に実施する方針です。一方で、防衛費の増額や、少子化対策強化のための財源の確保も課題となっています。あなたは国の財政状況に不安を感じていますか。感じていませんか。

  感じている   75%
  感じていない   19%

この設問に対しては、与党支持者で「感じている」が8割、野党支持者と無党派で7割超という結果になっています。岸田政権の足元を支える与党支持者の方が中長期的な財政状況の悪化を懸念しているのは少し驚きです。

 これまで国会の予算委員会で岸田総理と議論を戦わせた野党幹部に感想を聞くと、こんな答えが返ってきました。「彼は延命と自己保身にはたけているが、目指している国のあり方や国家像を感じたことはない」つまり、岸田総理は足元の出来事への対応に終始しているだけだという痛烈な批判です。

 岸田内閣の支持率が一進一退を続ける背景には、総理大臣から発せられるメッセージに耳を傾けても、近い将来のことさえなかなか見通すことができないという、一種の「もやもや感」が国民の間にあるように感じます。

 10月20日には政府の経済対策などを巡って議論する臨時国会が召集される予定で、その直後の22日には衆議院長崎4区と参議院徳島・高知合区の補欠選挙が行われます。

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 岸田総理は新たな経済対策をてこにして2つの補欠選挙で与党の2勝を目指していますが、どちらの選挙も野党候補が1本化されています。限られた地域の選挙ではありますが、岸田政権2年への評価が示される側面も否定できませんので与野党対決の結果に注目です。

 そして、この選挙結果のいかんに関わらず、物価高に苦しみ、先行きに対する不安をぬぐえない国民に、しっかりした政治のメッセージが届くことに期待せずにはいられません。

 通常国会の閉会から4か月もたっています。臨時国会での久しぶりの本格論戦が、目先のことだけでなく、多くの国民が自分たちの将来について思いをいたすことができるものになるよう、政府・与党にも野党にも期待したいと思います。

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島田敏男
1981年NHKに入局。政治部記者として中曽根総理番を手始めに政治取材に入り、法務省、外務省、防衛省、与野党などを担当する。
小渕内閣当時に首相官邸キャップを務め、政治部デスクを経て解説委員。
2006年より12年間にわたって「日曜討論」キャスターを担当。
2020年7月から放送文化研究所・研究主幹に。長年の政治取材をベースにした記事を執筆。

調査あれこれ 2023年10月03日 (火)

メディアは社会の多様性を反映しているか~2022年度調査から② ~テレビニュースでは「名前がない」女性たち~【研究員の視点】#506

メディア研究部(多様性調査チーム) 青木紀美子 小笠原晶子 熊谷百合子 渡辺誓司

テレビの多様性調査の結果を紹介する前のブログ(#505)では、テレビの世界は番組全般をみてもニュース番組をみても「若い女性と中高年の男性」が中心で、人口推計では高齢になるほど女性が多い日本の現実とかなり違いがあることをお伝えしました。それでは年齢以外の側面からみると、女性と男性の取り上げられ方には、どのような特徴があるのでしょうか。

今回は、2022年度に私たちが行った調査のうち、夜のニュース報道番組の登場人物についての分析結果から、女性と男性の取り上げられ方をみてみます。調査の対象としたのは2022年6月と11月のある1週間、平日(月~金)の夜9~11時台のニュース報道番組で話をした、あるいは話が引用された人たちです。なお性別で集計した際に、女性・男性にあてはまらない性自認や性表象の人たちは数がとても少なかったため、今回も女性と男性に絞って比べてみます。

ニュースでは、番組が登場人物を一定の重みをもって取り上げているかどうかをみる材料として、字幕表記などによって名前がわかる立場で登場しているかどうかが1つの指標になると考えました。「名前あり」「名前なし」に分類し、人数を女性と男性に分けて比べてみた結果が下の図です。

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「名前あり」は圧倒的に男性が多く、女性の5倍近くになります。また、男性に絞ってみると、「名前あり」が「名前なし」の2倍以上でした。一方、「名前なし」では女性と男性の差がかなり小さくなりました。そして、女性に絞ってみると、「名前あり」よりも「名前なし」が多いという結果が出ています。

それでは女性と男性はどのような立場で登場しているのか。これをみるために登場人物を職業・肩書別に分類したのが下の図です。女性と男性の人数の偏りが少ない指標を左から順に並べました。

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偏りが小さく、女性の人数が比較的に多いのは「親、家族」「雇員、従業員」「市民、住民、通行人」などです。一方、偏りが大きく、女性の人数が少ないのは「メディア・マスコミ関係者」「学識者、研究者、専門家」「スポーツ関係者」「政治家」「中小企業主、個人事業主」「財界人、企業経営者、役員」などでした。

ここまでの情報をあわせてみると、夜のニュース報道番組に出てくる女性は、いわば「名もなき」市民や雇員として取り上げられる人が多く、これに対して男性は、名前はもちろん社会的権威や決定権がある立場で登場することが多いことがわかります。こうした格差があるのは、なぜなのでしょうか。

これについては、日本では女性の社会進出が遅れているという現実があり、それがメディアに反映されているという側面もあるかもしれません。そこで社会の実態に比べてみるとどうか、格差が大きい職業・肩書の指標と比較可能なデータを探して比べてみたのが以下です。

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3つのグラフそれぞれ一番左側の数字が夜のニュース報道番組に登場した女性の割合、そのほかのデータは総務省などのデータをもとにしています。こうして比べてみると、テレビの世界に登場する「政治家」「学識者、研究者、専門家」「医師」における女性の割合は、社会の実態よりもさらに少ないようです。これは限られた日数のサンプル調査ではありますが、名前の有無、職業・肩書という側面からみても、テレビの世界が社会の多様性を反映しているとは、なかなか言いがたいことを示唆しています。

2回のブログでみたテレビのジェンダーバランスの偏りは何を意味しているのか、また背景には何があるのか。文研フォーラム2023秋 10月4日(水)13時~ 「メディアの中の多様性を問う~ ジェンダー課題を中心に」では、メディアにおける多様性の課題をパネリストとともに考えます。

文研フォーラムの事前申し込みは既に締め切りましたが、その後も多くの方から視聴のご要望を頂いているため、10月4日のフォーラム開催当日にも申し込みも受け付けることにしました。ご関心ある方は、当日、下記リンクからお申し込みください。受け付け後に視聴用URLを送付します。
https://www.nhk.or.jp/bunken/forum/2023_aki/index.html
上記リンクでは、10月10日(火)~12月24日(日)に見逃し配信も予定しています。

2022年度調査結果全体については、「放送研究と調査」10月号で詳しく報告しています。
https://www.nhk.or.jp/bunken/book/monthly/index.html?p=202310

また、これまでの多様性調査チームの調査報告も以下からご覧いただけます。

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか① 調査報告 テレビのジェンダーバランス
『放送研究と調査』2022年5月号 掲載

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか② 研究発表「テレビのジェンダーバランス」ディスカッションから
『放送研究と調査』2022年8月号

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか③ 将来に向けた危機感を問うアメリカの事例と専門家の提言
『放送研究と調査』2023年1月号

放送研究リポート
テレビ出演者のジェンダーバランス~トライアル調査から
『放送研究と調査』2021年10月号

調査研究ノート 海外公共放送とダイバーシティー戦略 "多様性"の指標とは
『放送研究と調査』2021年2月号

調査あれこれ 2023年10月02日 (月)

メディアは社会の多様性を反映しているか~2022年度調査から ①~テレビの世界は「中高年の男性と若い女性」~【研究員の視点】#505

メディア研究部 (多様性調査チーム) 青木紀美子 小笠原晶子 熊谷百合子 渡辺誓司

 誰もが生きやすい、多様な人々が力を発揮できる社会をつくっていくためには多様性の尊重と、公平性、包摂性の実現が欠かせないという認識が広がってきました。では、社会を映す鏡であると同時に、社会のあるべき姿を示す役割も持つメディアは多様性をどう反映しているのでしょうか?それを把握する一つの方法として、私たちは、テレビ番組に登場するジェンダーバランス、まずは女性と男性を中心に調べてみました。

 その前に、総務省の人口推計によると、日本の人口に占める女性と男性の割合は、女性は男性より多く、2022年時点で総人口の51.4%を占めています。

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 一方、テレビに登場している女性と男性の比率は、2022年度の文研の調査では、番組全般で、女性は半分に満たない約4割でした。これは、番組について放送日時や内容、登場人物などを記録したメタデータを使い、6月の1週間、NHKと民放キー局計7チャンネルで放送された全ての番組(映画、アニメ、再放送を除く)を対象に調査したものです。なお番組全般は、エム・データ社の性別分類で分析しています。

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 さらに、NHKと民放キー5局の夜ニュース報道番組(夜9時~夜11時台に放送)にしぼり、6月と11月のそれぞれ5日間(月~金)で、登場した人物を調べてみると、登場する女性の割合は、番組全般の出演者よりも1割程度少なく、約3割を下回りました。

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 次に年代別にみてみます。日本の人口統計では、50代まで男性が女性を上回っていますが、60代以降は女性が男性より多くなっています。

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 しかし、メタデータをもとに分析した番組全般出演者でみると、女性は20代が最も多く、30代以降は減少します。男性は40代がピークで50代以降は減少しますが、60代、70代とも女性より圧倒的に多くなっています。

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 夜のニュース報道番組でも同じような傾向がみられました。女性は19-39歳で最も多く、40歳以降は減少します。男性は40-64歳が最大で、65歳以降は減少しますが、40代以降、女性よりはるかに多くの男性が登場しています。

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 テレビ番組やニュースに登場する人たちは全体として男性に偏っていることがわかりましたが、ある分野では、女性の方が多い、あるいは女性と男性が半々に近い状況がありました。それが、番組の司会者やリポーターです。番組全般では「アナウンサー・キャスター・リポーター」、夜のニュース報道番組では「レギュラー出演者」という指標に分類して数えています。テレビ番組全般、夜のニュース報道番組とも、登場する数は、男女半々に近く、バランスが取れているようにみえます。

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 ところが、番組全般の「アナウンサー・キャスター・リポーター」や夜のニュース報道番組の「レギュラー出演者」も、年代別、年層別にみると、女性と男性の現れ方の違いがみえてきます。
 番組全般、夜のニュース報道番組とも、女性は20代、30代に大きく偏っています。調査からは、明らかに「中高年の男性と若い女性」という構図がみえてきました。

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 私たちは、2021年度からこの調査を行っていますが、2021年度と22年度、ほぼ同じ傾向でした。22年度は、このようなジェンダーバランスのほか、障害の有無や人種的多様性についても、テレビの登場人物をみる分析指標に加えています。調査結果全体については、「放送研究と調査」10月号で詳しく報告しています。ぜひご覧ください。
https://www.nhk.or.jp/bunken/book/monthly/index.html?p=202310

 また、文研フォーラム2023秋 10月4日(水)13時~ 「メディアの中の多様性を問う~ ジェンダー課題を中心に」では、こうした調査データもご紹介しながら、メディアが社会の多様性推進に向けて、果たすべき役割について、パネリストとともに広く考えます。
すでに事前申し込みは締め切りましたが、その後も多くの方から視聴のご要望をいただいておりますので、今回は当日申し込みも受け付けることにいたしました。当日になりましたら、ぜひ下記リンクからお申し込みください。受付後に視聴用URLを送付します。
https://www.nhk.or.jp/bunken/forum/2023_aki/index.html

なお、同時配信を見逃された方は、10月10日(火)~12月24日(日)まで、上記HPで見逃し配信を予定しています。

 

これまでの多様性調査チームの調査報告は以下からご覧いただけます。

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか① 調査報告 テレビのジェンダーバランス
『放送研究と調査』2022年5月号

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか② 研究発表「テレビのジェンダーバランス」ディスカッションから
『放送研究と調査』2022年8月号

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか③ 将来に向けた危機感を問うアメリカの事例と専門家の提言
『放送研究と調査』2023年1月号

放送研究リポート テレビ出演者のジェンダーバランス~トライアル調査から
『放送研究と調査』2021年10月号

調査研究ノート 海外公共放送とダイバーシティー戦略 "多様性"の指標とは
『放送研究と調査』2021年2月号