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調査あれこれ 2023年05月17日 (水)

中高生もYES! 5月17日は何の日?~第6回「中学生・高校生の生活と意識調査」から~【研究員の視点】#479

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子

 皆さんは、5月17日が何の日だかご存じですか?

 5月17日は、「多様な性にYESの日」※1。国際的な記念日として、世界各国で性的マイノリティーへの理解を呼びかけるキャンペーンが展開されています。日本でも、各地で啓発イベントや展示会が開催されたり、多様性を象徴するレインボーカラーに建造物をライトアップしたりする取り組みが行われています。

 多様性への関心が高まるなか、学校教育の場でも、教科書でジェンダーをめぐる問題が取り上げられるようになったり、制服のジェンダーレス化が進んだりしています。当の子どもたちは、多様性についてどのような考えを持っているのでしょうか?

 文研が昨夏、全国の中高生を対象に実施した世論調査※2の結果を確認してみましょう。仲のよい友だちから、「『からだの性』と『こころの性』が一致しない」と打ち明けられたとしたら、『理解できる(とても+まあ)』と答えたのは、中学生が69%、高校生が80%にのぼります。「よくわからない」という人も中学生で19%、高校生で12%いましたが、多くの中高生がLGBTQについて理解できると答えています。中高生も多様な性に「YES」が多いというわけです。

友人から、からだの性とこころの性が一致しないと打ち明けられたら、理解できるか(中高別)

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 男女中高別にみると、『理解できる』は、中高ともに男子よりも女子のほうが多く、女子中学生で77%、女子高校生では88%を占めています。

友人から、からだの性とこころの性が一致しないと打ち明けられたら、理解できるか(男女中高別)

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 父母に対しては、子どもと、同性愛や性同一性障害などの性的マイノリティー(LGBTQ)について、話をすることがあるかどうかを聞いています。父親では『ない(まったく+あまり)』は86%※3にのぼり、『ある(よく+ときどき)』の12%を大きく上回っています。母親でも、『ない』が65%で、『ある』の34%を上回っています。父母ともに子どもとLGBTQについて話をする人は多くはありません。家庭の中で性的マイノリティーについて話すことにためらいを感じる親が多い様子がうかがえます。

父母 子どもとLGBTQについて話をすることがあるか

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親が子どもとLGBTQについて話をするかどうかで、子どもの多様性への寛容度に差はあるのでしょうか。子どもが性的マイノリティーを『理解できる』と回答した割合をみると、子どもとLGBTQについて話をすることが『ある』親子のほうが、『ない』親子よりも、子どもが『理解できる』と回答した割合が高くなっています。家庭内でLGBTQについて話をすることで、性的マイノリティーへの理解が高まる可能性がありそうですね。もちろん逆に、理解のある家庭だからこそ、話をする機会があるのかもしれませんけど。

友人から、からだの性とこころの性が一致しないと打ち明けられたら、『理解できる』と答えた中高生の割合
(LGBTQについて親子で話すことがあるかないか別)

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 父母には、学校の授業でLGBTQについて教えることの賛否も尋ねてみました。『賛成(どちらかといえばを含む)』という人は、父親が83%、母親が92%と圧倒的多数を占めています。家庭の中では、性的マイノリティーについて話さないぶん、学校の授業で学んでほしい、という親の気持ちが表れているのかもしれません。

父母 学校でLGBTQについて教えることの賛否

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「放送研究と調査」6月号では、中高生と親のジェンダーをめぐる意識について、世論調査の結果から読み解きます。進学意向の男女差はあるのか、家庭内での教育方針に子どもの性別による差はあるのかなど、気になる調査結果が盛りだくさん!発行は6月1日です。ぜひご一読ください!
中学生・高校生の生活と意識調査2022の結果は、こちらから!↓↓↓
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/20221216_1.html


※1 LGBTQ嫌悪に反対する国際デーIDAHO(International Day Against Homophobia, Transphobia, and Biphobia)

※2 第6回「中学生・高校生の生活と意識調査2022」

※3 複数の選択肢をまとめる場合は、実数を足し上げて%を計算しているため、単純に%を足し上げた数字と一致しないことがある(以下同)。

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【村田 ひろ子】
2010年からNHK放送文化研究所で社会調査の企画や分析に従事。
これまで、「中学生・高校生の生活と意識」「生命倫理」「食生活」に関する世論調査やISSP国際比較調査などを担当。

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