文研ブログ

調査あれこれ 2023年01月19日 (木)

#442 幼児のネット動画視聴が急増。調査からみえたテレビとの使い分けの実態は? ~2022年「幼児視聴率調査」から~

世論調査部 (視聴者調査) 舟越雅

文研ではこれまで、年に一回のペースで幼児を対象にした視聴率調査を行ってきましたが、この調査は「視聴率」と銘打ちながら、実は録画番組やインターネット動画の利用状況についても把握することができます。
テレビのリアルタイム放送の視聴だけでは、多様化する幼児のメディア利用を正確につかめないことから、調査項目に加えているのですが、最近はその存在感が以前より増してきており、2022年に行われた最新の調査でも、勢いが裏付けられました。

2~6歳の幼児「リアルタイムのテレビ・録画番組やDVDの再生・インターネット動画」の週間接触者率

こちらのグラフは2~6歳の幼児の、「リアルタイムのテレビ」、「録画番組やDVDの再生」、「インターネット動画」の週間接触者率(調査期間の1週間で15分以上利用した割合)です。今年を入れて3回分の調査結果です。(2020年はコロナ感染拡大により実施せず)
2019年から2022年にかけて、リアルタイムと録画+DVDは減少しているのに対して、インターネット動画は2019年の4割弱から今年は67.8%と、大きく増加しました。2019年の時点では、リアルタイムとインターネット動画のボリュームはまだまだ差がありましたが、次第に肩を並べつつあります。

そんなインターネット動画ですが、ではどのような形で利用されているのでしょうか。
「幼児がインターネット動画をどんな機器で見ているのか」について尋ねた結果(複数回答)では、今年は「テレビ」が73%、ついでタブレット端末が44%、スマートフォン(携帯電話)が38%でした。昨年はテレビ65%、タブレット44%、スマートフォン39%でしたので、テレビで視聴する子どもが増加しています。
昨年の調査結果をご紹介したブログでも、「インターネット動画視聴にテレビ画面が最も利用されているのは幼児の特徴」と書きましたが、今年はその特徴がより強まっていることが分かります。

また、テレビやインターネット動画などを視聴する「場面」について聞いた結果をみると、それぞれがシーンによって微妙に使い分けられていることもみえてきます。

テレビを利用する場面(付帯質問・複数回答) インターネット動画を利用する場面(付帯質問・複数回答)

こちらはテレビが視聴される場面について、テレビとインターネット動画それぞれで分けたグラフです。
テレビでは「保護者が家事や仕事などで手が離せない時」(50 %)や「子どもが番組を見たがる時」(46 %)、「家族で番組を楽しみたい時」(35 %)などが上位に来ます。物理的な理由や子どもの主体性、そして周囲の家族との団らんなど、さまざまな場面でテレビが選択されていることがわかります。
ではインターネット動画はどうでしょう。「子どもがコンテンツを見たがる時」が69%と、かなり多く、「保護者が家事や仕事などで手が離せない時」(51%)が続きます。テレビとの違いに注目すると、「手が離せない時」はいずも5割強でいずれも同程度ですが、「コンテンツを見たがる時」はインターネット動画の方が、「家族で楽しみたい時」はテレビの方が、それぞれ高くなっています。
保護者の手が離せない時は様々な場面があり、テレビもインターネット動画も選択されますが、子どもが「自分が見たい」と思う内容を選択できたり、見たい時間帯に都合の良いコンテンツが見られるかといった側面では、ネット動画の使い勝手が良いのかもしれません。一方で、家族と一緒に番組を楽しむなどその場でのコミュニケーションを重視したい時には、テレビが選ばれる場面もあるようです。

テレビとインターネット動画のボリュームは拮抗しつつあり、いずれもテレビの大画面で見ている子どもたちが多いようですが、実際に見ているシーンやその背景をみていくと使い分けがされているのは興味深いですね。
ではこの傾向は、果たして幼児全体に言えるものなのか、あるいは年齢が増すにつれて強まるものなのでしょうか。そしてテレビとネット動画を利用している時間帯や、見ているコンテンツなどもまた異なっているのでしょうか。このあたりの詳しい結果は「放送研究と調査」12月号に掲載しています。気になった方は、ぜひそちらをご覧ください!