文研ブログ

調査あれこれ 2022年12月11日 (日)

#435 視聴率でみる"大河ドラマ平成史"

計画管理部(計画) 斉藤孝信

 今年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、いよいよ18日(日)に最終回! 皆さま、この1年、お楽しみいただけましたでしょうか!? 毎回、さすがは三谷幸喜さんの脚本だなぁと感嘆させられる予想もつかない展開で、インターネット上でも、視聴者の皆様が今後のストーリー予想などを繰り広げていらっしゃる様子もうかがえて嬉しいかぎりです!

鎌倉殿の13人

 もちろん、来年以降も楽しみな大河ドラマが皆さまをお待ちしております!来年(2023年)は松本潤さん主演の「どうする家康」、再来年(2024年)は吉高由里子さん主演で、大河ドラマ初の"平安文学モノ"である「光る君へ」です。両作品はいったいどんな盛り上がりを見せるのか!? ...こればかりは、始まってみなければわからないことではありますが、今回は、文研が蓄積した過去の調査データから、大河ドラマの"平成史"を振り返りながら、その"盛り上がり具合"を勝手に想像してみたいと思います!

 今回ご紹介するのは6月第1週に行っている「全国個人視聴率調査」の結果です*1
1年に渡って放送する大河ドラマのうち、たった1回、総合テレビの本放送のみ*2のデータですので、通年でどれだけご覧いただけたかを示すものではないことをご承知いただいたうえで、平成の30年間に放送された各ドラマの視聴率のお話をいたします。
 まず、平成元(1989)年「春日局」から平成30(2018年)「西郷どん」までの大河ドラマを、一覧表にして振り返りましょう。

平成の大河ドラマ一覧

この30作品について、視聴率のトップ10をお示しすると、ご覧のとおりです。

平成の大河ドラマ視聴率トップ10

 トップは平成8年「秀吉」の25.8%。じつに4人に1人もの人が、竹中直人さん演じる豊臣秀吉のサクセスストーリーをご覧になっていたのです。2位の平成元年「春日局」と3位の平成9年「毛利元就」も視聴率が20%を超えていました。
 一見すると、「人気作が平成"ひと桁"台に多く、平成後半はそこまで奮わなかった」ように見えるかもしれません。しかし、その平成後半は、続々と誕生したインターネット動画サービスを楽しむ人が増えたぶん、リアルタイムでテレビを見る人自体が徐々に減少した時代です(平成19年にYouTube日本語版、平成27年にTVerやAmazonプライム・ビデオ、NETFLIXなどがサービス開始)。また、今回は総合テレビの本放送のみのランキングですが、平成以降、BSでの放送や「NHKオンデマンド」「NHKプラス」など、大河ドラマ自体の視聴方法も多様化し、"何が何でも日曜夜8時に総合テレビを見なくちゃ!"という状況でもなくなりました。そうした様々な要素を踏まえて考えると、この本放送のリアルタイム視聴率トップ10に、平成20年「篤姫」や平成22年「龍馬伝」がランクインすること自体が"凄いこと"のようにも思えます。
 次に、各ドラマが描いた"時代"という視点で、平成の大河ドラマ30本を振り返ると、"戦国モノ"が13本、"幕末~維新モノ"が8本、それ以外の時代が9本という内訳です。

平成の大河ドラマが描いた時代

 これを頭に入れてから、男女年層別の視聴率トップ5をご覧いただくと......。

男女年層別 平成の大河ドラマ 視聴率トップ5 (6月第1週「全国個人視聴率調査」)

 多くの年代で、トップ5の半分以上を"戦国モノ"が占めています。中でも男性では「秀吉」が30代以上の各年代でトップ。「信長」も13~19歳でトップとなっています。
 来年の「どうする家康」は"戦国モノ"、しかも家康は、信長、秀吉と並んで"戦国3英傑"とも呼ばれていますので、特に男性の皆さんにはこのランキング表のトップに躍り出るほどにご覧いただけたら嬉しいなあ......と思います。

どうする家康

 一方の女性では、「春日局」が強いですね。誰もが一度は教科書で読んだことのある"戦国3英傑"ほどの知名度は(少なくともドラマ開始前には)なかったと思うのですが、戦国の動乱期を生き抜き、江戸幕府3代将軍徳川家光の乳母として武家社会で成功するまでの"女性の生きざま"を描いたドラマが、多くの女性を惹きつけたのでしょうか。
 そこで、さきほどと同じランキング表を、今度は、主人公が女性の作品(夫婦を含む)に色を付けてみてみます。すると......、

女年層別 平成の大河ドラマ 視聴率トップ5 (6月第1週「全国個人視聴率調査」)

 明らかに、女性のほうで、主人公が女性の作品が多くランクインしていることがわかります。「春日局」に加えて、平成6年「花の乱」(三田佳子さんが室町幕府8代将軍足利義政の正室日野富子を演じた)が60代で、平成14年「利家とまつ」(松嶋菜々子さんと唐沢寿明さんのW主演)が女性40代で、平成20年「篤姫」(宮﨑あおいさんが徳川13代将軍家定の正室天璋院の生涯を演じた)が女性20代・60代・70歳以上で、それぞれランクインしています。この3作品は男性の各年代ではトップ5圏外でした。
 再来年の「光る君へ」の主人公は、源氏物語の作者・紫式部(吉高由里子さん演じるドラマ中の名前は「まひろ」)です。この作品もきっと女性の皆さんが特に熱心にご覧くださるのではないかと、今から期待してしまいます。

光る君へ

 もちろん、「どうする家康」「光る君へ」のどちらも、老若男女問わず、多くの皆様にお楽しみいただけたら最高なのですが!
 今回は、文研が得意としている、長期スパンの視聴データ分析から考察してみました。なお、今年の「鎌倉殿の13人」については、2022年6月「全国個人視聴率調査」の結果として『放送研究と調査』10月号に掲載しております。そちらもぜひお読みください!


*1:「全国個人視聴率調査」は、原則6月の第1週、調査相手に5分刻みのマークシートで、視聴した時刻と局を記入してもらっています。2019年までは配付回収法(調査員がお宅を訪問する方法)でしたが、コロナ禍による2年の中断を経て、2021年からは「郵送法」に切り替えました。そのため今回は、同じ調査方法で比較可能な"平成"に限定してデータを紹介しています。
*2:大河ドラマは、今回ご紹介した総合テレビ日曜夜8時のほか、土曜午後1時5分(再放送)、BSプレミアムとBS4Kで日曜午後6時から放送しています。また「NHKプラス」「NHKオンデマンド」でもご覧いただけます。