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調査あれこれ 2022年09月20日 (火)

#423 総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」取りまとめ公表を受けて(3)「攻めの戦略」議論 本格化へ

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

 総務省で開催中の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会(在り方検) 1)」では、今秋、2つのワーキンググループ(WG)が発足する予定です 2)。1つはデジタル情報空間においてフェイクニュースやアテンションエコノミー等の課題が指摘される中、「誰もが安心して視聴できるという信頼を寄せることができる配信サービス 3)」に、人々がアクセスしやすくするための方策を検討するものです。検討の対象となるサービスとしては、地上放送の同時配信等が想定されています。もう1つは公共放送に関するもので、ネット時代における公共放送の役割や、現在は放送の補完業務であるNHKのネット活用業務の位置付け等について検討されます 4)。こちらは明日21日に第一回が開催されることになっています 5)

 上記はいずれも、放送コンテンツのネット配信を政策的にどのような姿で促進させていくのかを検討するもので、8月に公表された在り方検の取りまとめでは、今後の放送制度議論における「攻めの戦略」と位置づけられています。在り方検は去年11月から議論が行われていますが、これまでは、前回のブログでも紹介したような 6)、ハード機能のコスト負担の軽減という「守りの戦略」が主要な論点でした。いよいよ今秋から、この「攻めの戦略」の議論が本格化することになります。この議論は、ネット空間における“放送局の公共性”とは何かが問い直される本質的なテーマに通じると私は考えています。そのため本ブログでは、議論を前に在り方検の取りまとめやこれまでの議論等から、主要なポイントをまとめ、若干の問題提起をしておきたいと思います。

① 「放送に準じた公共的な取組を行う放送同時配信等を後押しする方策」

 上記のカギカッコに入った文言は、在り方検の取りまとめをそのまま転記したものです。これから検討される主要な「攻めの戦略」のうちの柱の1つで、この「放送に準じた公共的な取組を行う放送同時配信等」が、先に述べた「誰もが安心して視聴できるという信頼を寄せることができる配信サービス」にあたります。一読しただけでは意味を読み取りにくいので、文言を分解してみておきたいと思います。

〇「放送に準じた公共的な取組を行う」とは?

 こちらは、これまで放送局が放送制度の下で担ってきた様々な公共的役割を、ネット空間においても放送に“準じた”形で担っていくこと、と言い換えていいでしょう。取りまとめの中では、取り組みの具体的な内容として、災害情報や地域情報等の発信、視聴履歴の適切な取り扱い等があげられていました。
 このうち視聴履歴については、在り方検と並行して「放送分野の視聴データの活用とプライバシー保護の在り方に関する検討会(視聴データ検) 7)」で議論が行われてきました。「放送に準じた公共的な取組」としての“適切な取り扱い”として最も重要視されていたのは、視聴者の「安心安全の確保」でした。
 構成員の一人で、デジタル情報空間における課題に警鐘を鳴らし続ける慶應義塾大学教授の山本龍彦氏は、「放送の世界のように、過度なプロファイリングやパーソナライズが行われず、フィルターバブル、エコーチェンバー、フェイクニュース等が起きにくいような情報提供機能はこれからも残していく必要がある 8)」と述べています。確かに、放送波の技術的な特徴は一方向、いわゆる“送りっ放し”で、誰が視聴しているのかというデータを把握できないため、双方向が基本のネットサービスのような、視聴者の属性等に応じてコンテンツや広告を出し分けるようなサービスはできません。しかし、多くの人たちに同じ内容を一斉同報することこそが、放送メディアの最大の価値や役割でした。
 しかし、デジタル化によってテレビがネットに接続できるようになってから、テレビ放送の視聴においてもデータの収集が可能となりました。日本よりも早くテレビのネット接続が進んできたアメリカでは、視聴データを活用したターゲティング広告も行われるようになっています。日本でも、ここ数年はテレビのwi-fi接続の広がりもあり、全世帯の半分近くのテレビはネットに接続した状態、つまり、“コネクテッドTV(CTV)化”しています。現在、在京キー局を中心に各局が様々な形で視聴データを収集しており 9)、今後、そのデータをどのように活用していくかは、各局にとっても放送業界にとっても、重要な経営戦略の1つとなっています。ただし、データの取り扱いについては、これまで放送局が担ってきた公共的役割に鑑み、「放送受信者等の個人情報保護に関するガイドライン 10)(放送分野ガイドライン)」が設けられ、それに則って放送業界や専門家を交えた慎重な議論が進められています 11)
 視聴データ検の議論では、こうしたテレビ放送の視聴データだけでなく、放送局による配信サービスの視聴データも大きな論点となりました。構成員の一人、弁護士の森亮二氏は、「テレビのコンテンツを配信する際は、コンテンツは既に自主的な取組によって安全であるが、データにおいても安全だということは一定程度確保していただきたい 12)と述べました。つまり、放送局は放送法の下、自主自律的な取り組みの中で、視聴者にとって安全なコンテンツを制作してきているが、それと同じように、配信サービスにおける視聴データについても安全な取り扱いをする責務があるのではないか、という主張です。こうした要望は、8月に公表された自民党の「放送法の改正に関する小委員会(放送法小委)」第三次提言にも、「視聴履歴から視聴者の政治信条が察知され、政治的ターゲティング広告に悪用され、社会の分断を加速するようなことがあってはならない」という形で示されています。
 また、先出の山本氏も、放送局がネット上で配信サービスを行う際には、「データ利活用についてある程度の上乗せ規律もやむを得ない 13)という見解を述べています。この「上乗せ規律」とは、ネット上でサービスを行う事業者全てに適用される「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン 14)」に加えて、現在、放送局が“テレビ放送の視聴データの取り扱い”において適用されている「放送分野ガイドライン」を、“配信サービスの視聴データの取り扱い”においても適用する、つまり、“上乗せ”する、ということを意味しています。

〇「後押しする方策」とは?

 ネット上では現在、Google、Meta、Amazonに代表されるグローバルプラットフォームを中心にした事業者が、cookie情報等を使ってユーザーがどのサイトを閲覧したのかを追跡してユーザーの属性や嗜好を把握し、それに基づいたターゲティング広告やレコメンドで存在感を増しています。企業等の広告費は、一度に多くの人に“リーチ”できるメディアである放送から、個人やグループに対して“ターゲティング”できるネットサービスに流れており、その動きを止めることはもはや困難です。放送の広告費が目減りしていく分を、いかにネット上の配信サービスの広告費で補っていくかが、民放ビジネスにとっては大きな課題なのです 15)
 そのため、配信サービスに対しても放送分野ガイドラインの規制が上乗せされるということは、他のネット事業者よりもデータの取り扱いに対する説明責任の厳格化や限定的な活用が求められるため、民放のビジネスにとって足かせとなるおそれがあります。視聴データ検でも、他の事業者との間で公正な競争が確保されないのではないかとの指摘もなされました。民放連及び民放キー局関係者からは、放送分野ガイドラインの適用範囲はあくまでテレビ放送の視聴データを利用する場合のみであり、配信サービスにおいて上乗せすることについては消極的な姿勢が示されました。
 こうした中で視聴データ検が示した方向性は、放送局には一律に上乗せ規律を強制するのではなく、規律を受け入れるかどうか、つまりネット上で「公共的な取組」を担うかどうかは放送局自らの意思に委ねるべき、というものでした。その上で、「公共的な取組」を担う判断をした放送局については、政策的に何等かの“非対称措置”を検討すべきではないか、そして、「誰もが目を通すメディア」(プラットフォーム)に、放送コンテンツが提供されることが重要ではないか、という方向性が示されました。この非対称措置とは、事業者へのインセンティブ(優遇措置)という意味合いもありますが、それ以上に、安全な配信サービスへの視聴者のアクセスを支援し、視聴者保護を図る必要がある、という観点が強調されました。この非対称措置が、文言の最後に書かれている「後押しする方策」にあたります。

〇「放送同時配信等」とは?

 では、ネット上の展開を“後押し”していく放送局のサービスやビジネスとは具体的にどのようなものなのか。それを示しているのが「放送同時配信等」です。余談になりますが、役所の資料の文言には、このように頻繁に“等”が使われますが、時に“等”の方に比重があることも少なくないので注意が必要です。
 「放送同時配信等」という言葉は今回が初出ではなく、去年、著作権法改正の議論の際、同時配信、追っかけ配信(番組途中から視聴した場合、冒頭までさかのぼって視聴できる)、一定期間の見逃し配信を含んだ総称として用いられました。現行の改正著作権法上、これらが放送に準ずる位置づけとなっています 16)。そのため今回の後押しの施策の対象も、「NHKプラス」の同時配信、「TVer」で4月からスタートした民放キー5局系のゴールデン・プライムタイムのリアルタイム配信という狭い範囲に留まることなく、議論は進んでいくのではないかと思われます。

② 「非対称措置」と「プロミネンス・ルール」

〇非対称措置の具体策とは?

 今秋から開始されるWGでは、非対称措置の具体的な内容に関する議論が行われると思われます。視聴データ検が4月に公表した「配信サービスに対するガイドラインの適用に関する基本的考え方 17)」や在り方検の取りまとめを読むと、以下のような内容が検討項目にあがってくると思われます。

  • CTV上における措置として、放送局によるネット配信を簡便に視聴できるようにすること
    (TVerやNHKプラスが上乗せ規律に準じた準則を採用する場合にテレビ上ですぐ起動するようにする等)
  • 動画共有サイトや動画配信プラットフォーム上における措置として、放送コンテンツの充実・強化や、
    その他のコンテンツと区別できる形で提供されるようにすること

 私は先に発行された「放送研究と調査」6月号の「これからの“放送”はどこに向かうのか?Vol.7 18)」で、この非対称措置 19)について、「意欲的な論点であるものの、放送政策として具体的にどのような振興策があるのか、筆者にはイメージがわかない」と述べました。この措置のパートナーとなるテレビメーカーやプラットフォーム事業者のメリットや、施策の持続可能性について見通せないと感じたからです。今もその認識はあまり変わっていませんが、本ブログでは、6月号を記した際に紙面の都合で触れられなかった内容も記した上で、もう少し深く、私の認識を示しておきたいと思います。

〇「プロミネンス・ルール」とは?

 安全な配信サービスへの視聴者のアクセスを支援し、視聴者保護を図るために、放送に準じた公共的な取組を行う放送同時配信等を後押しするという今回の議論には、イギリスの情報通信政策における「プロミネンス・ルール」が参考にされたのではないかと私は推察しています 20)。このルールについては、在り方検の構成員であるマルチメディア振興センターの飯塚留美氏が第3回会合で短く紹介しましたが 21)、初めて聞くという方も少なくないと思います。正直、私も当時、詳細については知りませんでした。
 プロミネンスには、目立たせること、突出させること、という意味があります。イギリスには、BBCだけでなく、ニュースの不偏不党やローカル番組制作、コンテンツ産業発展のための一定の制作外注化等が放送免許の要件となっている、商業放送も含めた6局が「公共サービス放送(PSB) 22)」として存在しています。このPSBを“目立たせる”のが、このルールとなります。では、どこの場で目立たせるのかですが、飯塚氏が在り方検で紹介した、去年のOfcom(イギリスにおける放送通信分野の独立規制機関)の政府への提言には、以下のような内容がありましたので、飯塚氏の資料から転記させてもらいます。

  • CTVにおけるプロミネンスの確保
    ライブでもオンデマンドでも、全ての主要なテレビプラットフォーム上で公共サービスコンテンツのプロミネンスを確保する
  • プラットフォームに、PSM 23)コンテンツにプロミネンスの付与を義務付ける

 この内容を見ると、先に紹介した日本の在り方検で想定されている非対称措置の案と、かなり似通ったものであることがおわかりいただけると思います。これが、私がイギリスのプロミネンス・ルールを参考にしているのではないかと推察した理由です。
 ただ、もう少し詳しくこの提言の中身を見てみると、「プロミネンスに係るルールをアップデートする必要がある」となっており 24)、イギリスにおけるプロミネンス・ルールは去年いきなり登場してきたものではないということがわかります。イギリスは日本と大きく異なり、地上放送が50チャンネル以上あるため、プロミネンスはこれまで、電子番組ガイド(EPG)の中、つまり、“地上放送の場における”ルールでした。それが、去年のOfcomの提言では、YouTubeやNetflix、Amazon等のグローバルな配信サービスがひしめく“プラットフォームという場にも拡張”してこのルールを適用する、という提言となったのです。
 Ofcomの提言を受け、イギリス政府は2022年4月、「放送白書 25)」を公表し、正式にこのルールをプラットフォームにも適用できるよう改正しました。そしてOfcomに対しては、PSBとプラットフォームの交渉に介入する権利を与えています 26)。今後、PSBとプラットフォーム、そしてOfcomの間でどのような議論が進んでいくのか、注目していきたいと思います。また、このルールから少し話はそれますが、同時にこの白書では、これまで放送サービスに適用していた番組コード(番組内容に関する規律)を、Netflix等、ネットでのみコンテンツサービスを展開するOTT事業者に対してもテレビ同様の内容を適用することを提言しました。実効性のある規制になっていくのか、こちらも要注目です。いずれにしてもイギリスでは、存在感を増しているプラットフォームに対して、PSBのプロミネンスとコンテンツ規制という2つの側面から視聴者を保護していこうという強い姿勢がうかがえます。

〇今後の議論への期待

 ここまで、日本の非対称措置とイギリスのプロミネンス・ルールの類似点を指摘してきました。逆に異なっているのは、先に触れたように、日本では非対称措置の対象とする条件として、視聴データの適切な取り扱いという側面が強調されているという点です。確かに、ネット上におけるインフォメーション・ヘルスの確保という、これまで在り方検が掲げてきた最も大きな問題意識と、放送局の視聴データの適切な取り扱いは密接不可分であり、それをベースに議論が進んできた経緯は理解できます。しかし、プラットフォーム上で“目立たせる後押し”をする施策の対象を決める判断として、そのことが強調されすぎることについては正直、違和感があります。視聴者の安心安全だけでなく、社会における民主主義を下支えするという観点も含めて考えていくならば、“どういうルールを守る”事業者を後押しするかだけでなく、“どういう理念を持って社会に向き合い、どういうサービスを提供している”事業者を後押しするのかという視点も必要ではないかと思うからです。また、対象となるのが放送局による配信サービスという前提がある以上、例えば同時配信等のサービスを実施していないローカル局のコンテンツはどうするのかという課題もあります。政策的に後押しすべきコンテンツが、仮に地域情報を発信するローカル局のコンテンツであるとするならば、そうしたコンテンツをいかに配信サービスに載せられるかということを、施策の優先順位として考えてもいいはずです。
 イギリスは、多チャンネル時代におけるPSBとは何か、その後、プラットフォーム時代におけるPSMとは何かという形で、BBCだけでなく商業放送も含めて、メディアにおける「公共」の定義をアップデートし続け、その上でプロミネンス・ルールを位置付けています。日本の場合は、電波の希少性や社会的影響力、あるいは「一定の規律を受ける放送と、自由な活字メディア、インターネットとの組み合わせで全体最適を図る 27)」部分規制論という形で、「放送の公共性」が論じられてきました。ただ、それは常にNHKと民放の二元体制が前提であり、民放だけを切り出してメディアとしての「公共」を論じるということは、あまり活発になされてこなかったように思います。放送制度の議論が、放送という閉じた世界からネットに拡張していく今こそ、この論点に逃げずに向き合っていく必要があるように思います。その際の議論を、視聴データの適切な取り扱いという狭いところに押し込めず、もうすこし幅広に議論していくきっかけにはできないでしょうか。
 また、話は更に大きくなりますが、もう一点指摘しておきたいと思います。“目立たせる後押し”の施策がCTVの場合、そもそもテレビですので、後押しする事業者が放送局に限定されるということは、ある程度は納得感もあると思います。しかし、ネット上のプラットフォームの場合はどうでしょうか。ラジオ、新聞や雑誌等の活字メディア、ネットコンテンツ等、あまた存在するメディアの中で、公共を標榜し、それを実践してユーザーから信頼を得ている事業者は少なくありません。なぜ放送局、それも地上放送局のみが、他のコンテンツと区別されて後押しされることになるのでしょうか。放送法によって規律されているという根拠は、多メディア時代においてどこまでユーザーに通用するのか、地上放送が今後もどこまで信頼に足るメディアとして存在し続けられる保証があるのか、そのために目に見える形で努力が続けられているのか、このあたりは大きく問われてくるのではないかと思います。
 つまり、デジタル情報空間における日本版プロミネンス・ルールをどう考えるかというテーマは、これまでの部分規制論を超えた、新たな公共メディアサービスの姿を考えていくという議論にもつながってくると思うのです 28)。テレビメーカーやプラットフォーム事業者、地上放送以外のメディア、そして何よりユーザーにとって、納得感のある議論をどこまで積み上げていくことができるのか、今後始まる議論に注目しています。

③ 公共放送WGの論点

 在り方検の「攻めの戦略」である、放送コンテンツのネット配信を政策的にどのような姿で促進させていくのか、そのもう1つの柱がネット時代における公共放送の役割に関する検討です。
 NHKは今年4月から5月にかけて、テレビを全く、あるいはほとんど見ない約3000人を中心に、公共メディアとして番組や情報をネットで届ける意義や役割について検証する社会実証(第一期)を行いました。情報を正しく・偏りなく理解することを支援する機能や、 偏ったレコメンドを避ける機能等7項目を用意し、アンケート形式で、その機能が社会にとって、もしくは自分にとって有用かどうかを尋ねました。第一期の結果報告 29)については既に実施済みで、今秋にはUIやUX等の使い勝手について検証する第二期の実証を行うことになっています。先出の自民党の放送法小委の第三次提言では、「NHKによる社会実証の結果も踏まえ、インターネット活用業務を、放送の補完ではなく、NHKの本来業務とすべきかどうか、本来業務とする場合にはその範囲をどのように設定するのかも含めて検討すること」とされています。
 今月13日に行われた寺田総務相の閣議後会見 30)では、公共放送WG発足に際し、記者から次のような質問が出されました。「ユーザーである国民としては、いわゆるネット受信料を導入されるのではないかということが関心事(中略)。本来業務化によってネット受信料を導入することが自然な流れになりうるのか、あくまで別個の議論として慎重に考えるべきか」。この問いかけに対し、総務相は、今後の受信料のあり方についても含めて公共放送WGで議論していくと答えています。明日の初回のWGで論点とスケジュールが提示されると思いますので、改めてブログで議論の内容をまとめていきたいと思います。
また、会長の常設諮問機関である「NHK受信料制度等検討委員会」におかれた「次世代NHKに関する専門小委員会(第2次)」の議論にも注目していきたいと思っています。そこでは、イギリスを始め、欧州各国でPSM(公共サービスメディア)のデジタル戦略についての議論が開始されていることを受け、日本でも国内のPSM像をどのように考えていくべきかを議論すべき、という問題提起が行われています。そして、日本版PSM像を考えていくにあたっては、NHKが公共メディアとしてどうあるべきかだけでなく、民放との関係性や、新聞等の伝統メディアをどう位置付けるのかといった視点も持たなければならないのでは、という議論が始まっています 31)。この議論はまさに、在り方検の「攻めの戦略」の2つのWGをつなぐものだと感じています。

 今回のブログでは、在り方検の取りまとめを受けて、私なりに少し大きな論点を提示してみました。まだ調査や取材が至らない点も多いので、引き続き学びながら、できるだけわかりやすく発信していきたいと思っています。


1) https://www.soumu.go.jp/main_content/000828826.pdf
2) https://www.soumu.go.jp/main_content/000832589.pdf p17
3) このキーワードは、「放送分野の視聴データの活用とプライバシー保護の在り方に関する検討会」第7回で示された「配信サービスに対するガイドラインの適用関係の検討の方向性」の中で示されている
4) 9月13日の総務相の閣議後会見 https://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02001169.html
5)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/digital_hososeido/02ryutsu07_04000322.html
6) 「守りの戦略」についての整理は、8月25日の文研ブログを参照
7) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/viewership_data/index.html
8) 視聴データ検 第4回会合議事要旨より
9) データ放送の画面を経由して、視聴したチャンネルや日時、IPアドレス等の個人に関連する情報、「非特定視聴履歴」を収集。ユーザーが同意しない場合には収集をストップすることができる、"オプトアウト形式"で実施中。これとは別に、それぞれの局が、名前(ニックネーム)・年齢・メールアドレス・住所等、個人を特定できる情報、「特定視聴履歴」も収集。こちらは、ユーザーの同意を必要とする"オプトイン形式"で実施され、民放の場合は、TVerのIDとの連携などが行われている
10) https://www.soumu.go.jp/main_content/000797516.pdf
11) データ検では、このガイドライン改訂を巡り、放送局としてデータを活用してどんなサービスを行うべきか、行うべきではないのか、各局のデータを共有するために提案された仕組み「共通NVRAM」にはどんな要件が必要なのかについて、視聴者の安心安全が確保されるのかという観点から厳しい議論が行われていた。こちらについては、後日「放送研究と調査」でしっかり触れていきたい
12) 視聴データ検 第6回議事要旨より
13) 視聴データ検 第4回議事要旨より
14) https://www.soumu.go.jp/main_content/000805614.pdf
15) 放送局におけるネットでの動画広告収入は年率150%を超える伸びを記録しているものの、放送局の広告費全体に占める割合は約5%にすぎない
16) 放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム報告書「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について」
17) https://www.soumu.go.jp/main_content/000811235.pdf
18) https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/pdf/20220701_7.pdf
19) なお、原稿執筆の際に確認していた視聴データ検の議事要旨では、講じる施策について、「非対称措置」ではなく「インセンティブ」と呼称されていた
20) 非対称措置について議論された視聴データ検では、このプロミネンス・ルールについての議論は行われておらず、在り方検で少し触れられていただけであるため、私の推察とした
21) https://www.soumu.go.jp/main_content/000782843.pdf
また飯塚氏は、『ジュリスト』(2022年9月号)の「通信・放送・メディアの在り方」という座談会の中でも、このルールについて詳細に発言している
22) チャンネル4、ウェールズ語放送(S4C)、民放大手(ITVとチャンネル5)、スコットランドの民放(STV)
23) 公共サービスメディア(PSM)のこと。Ofcomは去年、政府に対し、公共サービス放送(PSB)から公共サービスメディア(PSM)への移行を支援するよう、PSMの目的を定めることを提言している
24) https://minpo.online/article/-ofcom.html
25) Up next - the government's vision for the broadcasting sector - GOV.UK (www.gov.uk)
26) https://minpo.online/article/it.html
27) https://www.soumu.go.jp/main_content/000536353.pdf P13
28) こうした観点で、私が興味深く感じた論考を『ジュリスト』(2022年8月号)から2本紹介しておきたい
  長谷部恭男「デジタル情報空間における放送と放送法制」
  水谷瑛嗣郎「放送法制から見たデジタル情報空間」
29) https://www.nhk.or.jp/net-info/data/document/social_proof/social_proof_1st_results.pdf
30) https://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02001169.html
31) https://www.nhk.or.jp/info/pr/kento/assets/pdf/sub_committee_2_04.pdf