文研ブログ

調査あれこれ 2022年09月15日 (木)

#422 いまの沖縄の人たちの思いとは? ~「復帰50年の沖縄に関する意識調査」結果から~

世論調査部(社会調査) 中山準之助

 あなたは、沖縄と聞いて、どんなことをイメージしますか?青い海にサンゴ礁、マングローブに、さとうきび畑。そうした自然以外にも、アメリカ軍基地を挙げる人もいると思います。
 沖縄は今年、アメリカから日本に返還された「本土復帰」から50年を迎えました。そこで、沖縄の人たちが日本への復帰をどう評価し、今の沖縄をどう見ているのか。今後の沖縄はどこへ向かい、どんな姿になっていくのかを探るため、世論調査部では、全国世論調査を実施し、沖縄と全国の回答を比較して、それぞれの意識の分析を試みました。その結果の一部は、文研ブログ#411 「沖縄局以外のNHK地域放送局が伝えた 沖縄本土復帰50年」(2022年8月5日)でも紹介されている通り、沖縄の人たちの意識と、全国の人たちとで、異なる点がいくつか見えてきたのです。

 ひとつ紹介しますと、沖縄の人たちに「沖縄の誇り」を(図1)、全国の人たちには「沖縄の魅力」を(図2)同じ選択肢で尋ねた結果です。

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 どちらも「豊かな自然」が最も多く挙げられています。沖縄の自然は“誇り”であり、“魅力”でもあるのです。ところが、「観光リゾート地」は、全国の人たちの65%が「沖縄の魅力」に挙げて2番目に多いのに対し、沖縄の人たちの「誇り」では34%にとどまり,選択肢の中でも下位です。全国の人たちが「魅力」と思うほど、沖縄の人たちは「誇り」とは思っていないと言えます。
 一方で、全国の人たちが感じている以上に、沖縄では、「沖縄の音楽や芸能」、「家族や親戚を大切にしていること」、「食文化」、「助け合いの気持ちが強いこと」などが6割前後で上位に並んでいます。沖縄の人たちは、“家族の絆”や“人との関係”を大事にしていることが見てとれます。

 沖縄と全国との違いでさらに注目されるのが、これからの沖縄にとって特に重要な課題は何かを尋ねた質問(図3)です。
 沖縄では、「貧困や格差の解消」が77%で最も多く、次いで「経済の自立・産業の振興」が68%、「子どもの学力向上」が64%、そして「アメリカ軍基地の整理・縮小」と「自然環境の保護」がそれぞれ61%などとなりました。一方、全国では「自然環境の保護」が64%、「アメリカ軍基地の整理・縮小」が61%と並んで多く、次いで「経済の自立・産業の振興」が50%、「沖縄の歴史の継承」が49%となっています。
 沖縄で最も多い「貧困や格差の解消」は、全国では25%と少なく、「子どもの学力向上」も全国では18%と少ないなど、課題の認識に差がみられました。

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 全国の人たちが、環境保護や基地の整理・縮小など、社会全体に及ぶ課題を挙げたのに対し、沖縄の人たちは、貧困や経済の自立、子どもの学力向上など生活に直結した身近な課題をより多く挙げている点は、今後の沖縄を考える際に、非常に大事な視点になってくるでしょう。

 今回の調査では、「本土復帰の評価」や、「米軍基地」についても、詳しく聞いています。その結果の一部をご紹介します。

▽沖縄の本土復帰は『よかった』という人が、沖縄では84%、全国では93%。
▽復帰して『よかった』と思う理由の1番は「沖縄は日本であることが望ましいから」。
 よくなかった』と思う理由は、沖縄では「沖縄の意向が尊重されていないから」が44%。

▽日米安全保障条約は『役立っている』が沖縄では約6割、全国では8割超。
▽復帰後も残るアメリカ軍基地について、沖縄では「やむを得ない」が51%、「必要だ」が11%。
▽在日アメリカ軍専用施設の約7割が沖縄に集中していることについて、沖縄では「おかしいと思う」が56%で、どちらかといえばを含めると8割超。全国でも合計は79%に達するが、このうち「どちらかといえばおかしいと思う」が55%と多い。

 このほかにも、「本土復帰の日」「慰霊の日」の認知、「50年間の印象的な出来事」のほか、「沖縄の経済」、「沖縄戦の継承」などについても尋ねました。
 詳細については、「放送研究と調査2022年8月号」で、1970年代から継続して実施してきた沖縄に関する世論調査結果も交えても紹介しています。是非、ご一読ください。
 復帰50年、沖縄の人々の思いを知る一助になることを心より願っております。