文研ブログ

調査あれこれ 2022年06月24日 (金)

#400 「あなたの印象に残った五輪競技は何ですか?」③ ~「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」~

世論調査部 (視聴者調査) 斉藤孝信

 今回のブログは3回シリーズで、文研が2016年から実施した「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」の結果をもとに、東京オリンピック(以下、五輪)で、どのような競技や式典が人々の印象に残ったのかをご紹介しています。
 まずはここまでのおさらいとして、大会前の第2回から第6回で尋ねた「見たい競技・式典」と、大会後の第7回で尋ねた「印象に残った競技・式典」を改めてご覧いただきます。
 saitou3-1.png <前回ブログまでのポイント>
 ①大会前は「体操競技」「陸上競技」「開会式」「競泳」が「見たい競技・式典」のトップ4を占め続けていた。
 ②大会後の「印象に残った競技」では、トップは「卓球」、2位「柔道」、3位「ソフトボール」となり、さらに、第6回まではトップ10に入らなかった「スケートボード」が8位、「バスケットボール」も10位と、日本勢のメダル獲得競技が多くの人の印象に残った。
 ③「印象に残った競技・式典」のランキングは性別や年代によって異なり、男性の40代以下と女性の50代以下では、「スケートボード」や「バスケットボール」がトップ5に入る年代もある。
 
 今回のブログは、性別や年代以外の切り口で、「印象に残った競技・式典」のランキングをさらに味わいたいと思います。
 世論調査では、ふだん、テレビやラジオ、インターネットなどでスポーツをどのくらい視聴するかも尋ねました。
 saitou3-2.png この回答によって、ふだんスポーツを『見る(聞く)』人と『見ない(聞かない)』人に分けて、「印象に残った競技・式典」のランキング表を作ってみました。すると……。
  saitou3-2-2.png ふだんスポーツを『見る(聞く)』人のトップ5は全体のランキングと同じ顔ぶれですが、『見ない(聞かない)』人では、全体ではトップ5に入らなかった「開会式」が2位、そして「スケートボード」が4位に入ります。
 「開会式」については、ふだんスポーツを視聴しない人たちでも、ある種のお祭り的なイベントとして興味があったのだろうし、印象にも残ったのだろうと推測できるのですが、なぜ「スケートボード」が、「ソフトボール」や「野球」「体操競技」よりも上位になるのだろうという疑問が湧きます。
 その謎を解くひとつの手がかりとして、次のデータを紹介したいと思います。調査では、競技名だけではなく、「東京五輪の競技でどんなことが印象に残ったか」も尋ねました。その結果を、先ほどの、ふだんのスポーツ視聴頻度別にみてみると……。
 saitou3-3.png ふだんスポーツを『見る(聞く)』人では、「日本が過去最多の金メダルを獲得したこと」が最も多かったのに対して、『見ない(聞かない)』人では、「10代など若い選手たちの活躍ぶり」が最も多かったのです。
 その点、スケートボードはまさに、13歳で日本史上最年少金メダリストとなった西矢椛選手や12歳銀メダリストの開心那選手など、若い選手たちが大活躍したのですから、きっと、ふだんスポーツを視聴しない人たちにも、鮮烈なインパクトを与えたのでしょう。
 どんな競技や式典が印象に残ったのか、さまざまな切り口で分析するのは非常に面白くて、とても今回のブログだけでは書き尽くせませんが、たとえば「閉会式」を挙げた人は全体では28%でしたが、1964年の前回の東京五輪のことを覚えている人では47%にのぼりました。前回の東京五輪の閉会式では、運営側の手違いでさまざまな国や地域の選手たちが一気に入場してしまうハプニングがあり、それがむしろ、世界中の人々が交流する平和の祭典を印象付ける演出であったかのように多くの人を魅了したという微笑ましいエピソードが有名ですね。今回の調査結果をみた私は、当時を覚えている皆さんはきっと、その光景を脳裏によみがえらせながら、今大会の閉会式もじっくりと味わったのだろうなあ、などと、思いを馳せていたのでした。
 連載にお付き合いくださり、ありがとうございました。
 改めて、あなたにとって、最も印象的だった東京五輪の競技・式典は何でしたか?

 『放送研究と調査』6月号では、7回にわたる世論調査の結果をもとに、“人々にとって、東京五輪・パラとは何だったのか”を考えます。ブログでご紹介した「印象に残った競技・式典」以外にも、人々はコロナ禍での開催をどのように感じていたのか。そうした状況で大会をどのように楽しんだのか。今大会は人々にとってどのような意義を持ち、東日本大震災からの“復興五輪”たりえたのか。そして、日本にどんなレガシーを遺したのかなど、さまざまな視点で考察しております。どうぞご一読ください!