文研ブログ

調査あれこれ 2021年01月25日 (月)

#295 「オンデマンド化」と「有意義な」時間へのニーズの高まり ~「新型コロナウイルス臨時休校・休園時と再開後の,子どもと保護者のメディア行動調査」から~

メディア研究部(番組研究) 宇治橋祐之


 このブログを書いている1月21日現在、11都府県で2回目の緊急事態宣言が出ています。今回は小中学校や高校などへの一斉休校の要請はありませんでしたが、学級や学年単位での休業や、感染リスクの高い部活動などの制限は行われています。大人の生活だけではなく、子どもたちの生活も大きく変わらざるを得なくなりました。学びたいのに学べない状況も生まれています。
 NHKでは現在「#学びたいのに いま、学びを守ろう」というキャンペーンを進めており、学びを守るために何が必要か、みなさんの声をもとに取材・放送した内容を特設サイトで紹介しています。

 子どもたちはいったいどんな状況にあり、どんなことを感じているのでしょうか。文研では、昨年4月の臨時休校・休園時と6~7月の再開後に緊急調査を行いました。
 限られた期間の調査だったこともあり、ウェブを使った全国調査をまず行い、さらにMROCという専用の掲示板を利用した調査を組み合わせました。ウェブの調査では、全国の幼稚園・保育園児から小学生、中学生、高校生までの子どもを持つ保護者と高校生に回答をお願いし、MROCでは小学生、中学生の保護者と中学生、高校生に協力を頂きました。

 調査では大きく「メディア行動の変化」と「生活の変化」についてと、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの機器で利用されるさまざまな「デジタル学習教材」について調べました。

 「メディア行動の変化」については、「休校・休園前の通常時」「4月の休校・休園時」と比べて「6~7月の再開時」にどう変わったかを尋ねました。その結果「テレビ」については、「6~7月の再開時」に「休校・休園前の通常時」と比べて利用時間が「増えた」子どもは「減った」子どもより多い傾向でした。また「4月の休校・休園時」との比較では「増えた」と「減った」が、ほぼ同じ程度でした。それに対して「スマートフォン」は、「休校・休園前の通常時」、「4月の休校・休園時」と比べると、いずれも「6~7月の再開時」に利用時間が「増えた」子どもが多いという結果でした。休校・休園期間を経て子どもたちの生活に「スマートフォン」がますます定着した様子がみられます。さらに分析を進めると、好きな時に自由に見られる「オンデマンド」という要素の重要性が高まっているようでした。
 この背景には「生活の変化」がありそうなこともみえてきました。「ストレス」に関する質問への回答からは、「ストレスが多重にかかる状況」が継続している様子がみられ、ストレスを感じている子どもほど、メディア接触時間が長いという傾向もありました。そしてオンライン掲示板のMROCの投稿内容の分析から「有意義へのニーズ」というキーワードがみえてきました。ただし求める有意義の意味は休校・休園時と再開後では少し異なります。休校・休園時は、家族で過ごす時間が長くなる中、テレビに対して「家族で楽しむことで、家族間のコミュニケーションをよくする効果」を感じている人が多いようでしたが、再開後は「貴重な少ない時間の中で、いかに有効・効率的にストレス解消をするか」にはスマートフォンで動画やゲームをするほうがよいと考える人が増えたようでした。

 「デジタル学習教材」についてみると、休校・休園期間を経て利用は広がったけれど、それは学校などからの指示によるためで、必ずしも興味をもつ子どもや保護者が増えたわけではないこともみえてきました。その一方で実際にデジタル学習教材を利用した結果、これまでみえなかった多様なニーズがわかってきました。その大きな方向性は、メディア接触の変化でみられた「オンデマンド化」と「有意義へのニーズ」と重なることが多く、自分のペースで学べることや、「楽しさ」だけでなく「わかりやすさ」を求める傾向がみられました。

 この先の状況はまだわかりませんが、臨時休校・休園というこれまでにない時間を経て、子どもたちにどんな変化があったのか、詳細な結果と、保護者や子どもたちのリアルな声は「放送研究と調査」2020年11月号12月号で紹介しています。これから先の子どもたちに何が必要かを考える際に、読んでいただけるとありがたいです。