文研ブログ

調査あれこれ 2020年10月02日 (金)

#274 パソコン?スマホ?家庭における学習で利用されているメディアとは?

メディア研究部(番組研究) 渡辺誓司


 
いまだ終息の気配がみえない新型コロナウイルスの感染拡大は、教育の分野にも大きな変化をもたらしました。例えば、オンライン授業や動画教材を配信するなど、児童・生徒が登校しなくても、家庭でインターネットを利用して学習できるような対応を進めている学校もみられます。

 文研では、家庭における学習でどのようなメディアが利用されているのかを探るウェブ調査を、昨日から開始しました。昨年に続き2度目になります。調査の対象は、中学2年生と3年生、高校1年生です。学年の区切りがちょっと中途半端なのは、この調査には、昨年10月、つまりコロナ禍前に実施した同じ調査に協力してもらった当時の中学生たちに、今回も協力をお願いしているからです。調査対象を同一にすることで、コロナ禍前と今との変化を、正確に把握することを目指しています。

 オンライン授業の配信などを考えると、今回の調査は、家庭学習で、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などのデジタル機器が利用される割合が高くなることが予想されます。しかし、そもそもコロナ禍前の家庭学習ではどのような機器が利用されていたのでしょうか。次の図は、昨年10月の調査の結果から抜粋したものです。

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 ウェブ調査の対象の中学生(1,168名)のうち、家庭で、「英語、国語、数学、理科、社会、総合的な学習の時間」の6教科のうちいずれかの教科の学習を行っている中学生(1,055名)に、家庭学習で利用している機器を尋ねました。結果は、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、電子辞書の利用が多く、ほかの機器の利用は少ないというもので、学年による差はほとんどみられませんでした。
 注目されるのは、図に示したいずれかの機器を家庭学習に利用していた割合は57%で、4割を超える中学生がこれらの機器を利用せずに学習していたことです。この中学生たちの家庭のうち、スマートフォンは73%、パソコンは63%、タブレット端末は46%の家庭で、彼らがそれらを自由に利用できる環境にあったことから、機器を利用できるからといっても、必ずしもそれらが家庭学習に利用されていたわけではないことがわかりました。一方で、教科書や参考書、問題集、塾の教材などの紙媒体を家庭学習の教材として使っていた割合は9割と高く、機器を使えても紙媒体だけで学習している中学生の存在もありました。コロナ禍の前に行った調査の結果が、コロナ禍の真っただ中にある今回の調査ではどのように変化するのか、家庭学習における機器の利用は増えるのかどうか、結果がまとまり次第改めて『放送研究と調査』で報告します。 

 ここでご紹介したデータを含め、昨年実施した調査の結果の詳細は、『放送研究と調査』8月号に掲載しています。また、この調査では、調査対象の中学生の母親にも同時にウェブ調査を行っており、論考では、母親の家庭学習におけるデジタル機器の利用観や、家庭学習からみた親子関係の分析も取り上げています。コロナ禍前の実態を把握したものとして、ぜひご一読ください。