文研ブログ

調査あれこれ 2020年03月17日 (火)

#242 メディア多様化時代の20代とテレビ

世論調査部(視聴者調査)斉藤孝信

いきなりで恐縮ですが、今回はまず読者の皆様に、ちょっとだけタイムスリップしていただこうと思います。

皆さんは20代の頃、どんなテレビ番組をご覧になっていましたか?


文研が実施している「全国個人視聴率調査」から、最新の2019年、その10年前の2009年、20年前の1999年「20代によく見られた番組」上位10番組をみてみましょう。

まずは20年前の20代から。

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当時斬新だったクロマキー技術を駆使し、ユニークな企画を連打した「電波少年」を筆頭に、警部補役の田村正和さんが毎回、犯人役の豪華ゲストと対峙し、田村さんのモノマネも流行った「古畑任三郎」、ダウンタウン司会の音楽番組「HEY!HEY!HEY!」やバラエティ「ガキの使いやあらへんで」など、懐かしい番組が並んでいます(いま40代の皆さんは「そうそう!よく見ていた!」という感じでは?…かく言う著者も同世代。まさに、若かりし日によく見た番組ばかりなわけですが)。

続きまして、10年前の20代はというと…。

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「SMAP×SMAP」のスペシャルを筆頭に、アニメ「ワンピース」、クイズバラエティ「ヘキサゴンⅡ」「ネプリーグ」、お昼の「笑っていいとも!」などがよく見られていました。


では、今の20代はどうなんでしょう。2019年の結果がこちらです!

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「水曜日のダウンタウン」、嵐の「嵐にしやがれ」「VS嵐」のほか、サッカー日本代表の試合もよく見られていました。

このように、20年前、10年前、現在の「よく見られた10番組」をみてみると、番組の顔ぶれが変わったことはもちろんですが、それ以外にもさまざまなことに気づかされます。
たとえば、各年の上位10番組の視聴率の数字だけを比較してみると…。

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20%前後の番組も多かった1999年から、
⇒2009年は15%前後が多くなり、
⇒2019年には10%を超える番組が1つもなくなって、

ずいぶんと数字が小さくなったことがわかります。

 

 

 




果たして、「20代はテレビをあまり見なくなってしまった」のでしょうか。


リアルタイム(放送と同時)のテレビ全体の「30分ごとの平均視聴率」を、20年前、10年前と比較してみます。
グラフは、横軸が時間…左端が朝5時、右端が25(翌日午前1)時、縦軸が視聴率です。

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朝と夜に大きな「視聴の山」があるのが特徴ですが、20年前・10年前と比べて「夜の山」が著しく低くなったことがわかります。特に20~23時台は、1999年には30%超、2009年も25%前後でしたが、2019年は一度も20%を超えることがありませんでした。

つまり、20代は、特に「夜のリアルタイム・テレビから離れている」ようです。


ここで再び、冒頭で紹介した「20代によく見られた番組」。
今度は放送時間に注目してみると…。

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特に黄色で塗った「平日の20時以降開始の番組」は1999年6本⇒2009年4本⇒2019年3本と明らかに本数が減っています。

20代はなぜ「夜のリアルタイム・テレビ」から離れてしまったのか?
リアルタイム・テレビから離れた20代は、夜、いったい何をしているのか?


『放送研究と調査』2月号では、今回ご紹介した「全国個人視聴率調査」をはじめとした文研のさまざまな世論調査結果を横断的に活用して、録画再生視聴や、スマートフォンなどを用いたインターネットでの動画視聴にも視野を広げて、この疑問に挑んでいます。ぜひご一読ください!