文研ブログ

ことばのはなし 2016年04月01日 (金)

#20 きょうは「エイプリルフール」

メディア研究部 (放送用語・表現)  山下洋子

きょうは4月1日です。新年度の始まりです。
そして、いよいよ新しい『NHKアクセント辞典』が発行されました。みなさん、ご覧くださいましたか。

  kotoba.jpg


・・・と、お伝えしたかった。
ごめんなさい。きょうは、エイプリルフールということで、「そうだったらいいな」という気持ちもこめた「ウソ」をついてしまいました。

気を取り直して、ここからはホントの話。
文研・用語班では、新しい『NHKアクセント辞典』の発行に向けて、最終チェックを行っている段階です。タイトルは『NHK日本語発音アクセント新辞典』5月末には、桜色の新しい『アクセント辞典』をみなさんにご覧いただけると思います。そのときには、このブログでもお知らせいたしますので、もう少しお待ちください。

ん?
私、もうひとつ、違うことを書いてしまいました。ウソではありません。「違う」こと。なんだかおわかりになりましたか?

エイプリルフール」という書き方です。
「April fool」をカタカナ表記する場合、みなさんはどう書きますか?NHKの放送では、「エープリルフール」と表記することを原則にしています。

「エイプリル」が間違いというわけではありません。NHKの表記のルールとは異なる表記ということです。
一般的には「エイプリルフール」と書かれるのを見ることも多いですよね。「エープリルフール」と「エイプリルフール」をGoogleで検索してみました。


 エイプリルフール:59万4000件
 エープリルフール: 8万  200件



それでは、発音はどうでしょう。
「エイプリルフール」「エープリルフール」の2つの音声を流して、「どちらを聞いたことがあるか」「自分で発音した場合はどちらか」をたずねる調査をしました(平成18年調査)。
0401-2-2.jpg
図に示したとおり、「エープリルフール」と「エイプリルフール」で、答えが割れています。

この結果だと、2とおりの発音・表記を認めることも考えられそうです。
『アクセント新辞典』に掲載する語を決める際にも、どのように掲載するか、議論しました。もともと、cake[kéik]のようにもとの語に[ei]が含まれている場合、外来語としては、「ケーキ」のようにのばして発音することが多いとされています。そのため、このAprilのように“発音が2とおりに割れている”状態であれば、原則の「エー」を優先させたほうがいいということになりました。
また、表記は「エイプリルフール」で、発音と別に考えればいいようにも思えます。しかし、外来語は“発音に合わせた表記”をするのが原則です。「エイ」と「エー」では発音が異なってしまいます。こうしたことから、NHKでは「エープリルフール」を使っています。

「4月」以外では、「5月」の「May」はどうでしょうか。
「May」にも[ei]の発音が入っています。「メーデー」は、発音でも表記でも「ー」が使われます。「メイデー」って、なんだか違うことばみたいです。

では「day」はどうでしょう?
語によって「デー」の場合と、「デイ」の場合とがあります。「デーゲーム」「メーデー」と「デー」がほとんどですが、「デイサービス」となると「デーサービス」という表記はあまり見ないような気がします。語の順番がかわって「サービスデー」になると、「サービスデイ」のほうをあまり見ません。
同じ[ei]が含まれていても、「ー」で書かれることが一般的になっている語と、そうでない語があるのです。

放送で使う外来語の発音・表記については、文研で出している『NHKことばのハンドブック第2版』にくわしく載っています。『放送研究と調査』(月報)の「放送用語委員会報告」や文研ホームページの「放送現場の疑問・視聴者の疑問」にも外来語について書いたものがあります。こちらもあわせてご覧ください。

リンク:
NHKことばのハンドブック第2版(最新の刷りが、3月10日に発行されました。「14刷」です)
放送用語委員会報告(外来語の発音・表記について)
現場の疑問・視聴者の疑問(ropewayの表記)