文研ブログ

2023年4月14日

メディアの動き 2023年04月14日 (金)

【メディアの動き】英BBC スポーツ解説者の政府批判 きっかけに混乱,不偏不党の議論に

公共放送BBCは,人気サッカー解説者のギャリー・リネカー氏が3月7日,Twitterで政府を批判したことを受けて番組を降板させたが,政府の圧力に屈したなどとの批判が相次ぎ,混乱が広がった。

この問題は,英仏海峡をボートで渡るなどして不法入国した移民には亡命申請を認めないとする政府の法案について,リネカー氏が,ナチスドイツに例えて批判したことに端を発した。

政府や保守党の議員から批判の声が相次いだ。

BBCは,公共放送として不偏不党を守るため,報道番組などの職員・スタッフには,政治的な発言を控えるようSNSの利用のルールを定めている。
同局は,知名度が高いリネカー氏にも遵守を求めてきており,同月10日,「SNSの使い方について明確な合意ができるまで」同氏の番組への出演を差し止めるとした。

しかし,この方針に反発するほかのサッカー解説者や司会者が出演をボイコットする動きが広がり,BBCはリネカー氏が司会を務める看板番組を90分から20分に短縮したほか,テレビやラジオの複数の番組が再放送やポッドキャストで編成の空白を埋めることになった。

混乱を受けてBBCのデイビー会長は3月13日に声明を出し,視聴者に謝罪するとともに,リネカー氏の番組への復帰を表明した。

さらに「BBCにとって不偏不党は大事なものだ。また表現の自由も守るべきもので,そのバランスは難しい」としたうえで,SNSの利用のルールがより適切で明確なものになるよう見直す方針を示した。

一方,BBCの記者のインタビューに対し,デイビー会長は自らの辞任は否定した。

メディアの動き 2023年04月14日 (金)

【メディアの動き】イラク戦争開戦20年,報道の教訓は

アメリカが,存在しない大量破壊兵器を理由にイラク戦争を開始してから,3月20日で20年を迎えた。

Watson Instituteによると戦争による死者(2021年9月集計)はイラク市民を中心に30万人近くに達した。

米メディアの大半は当時のブッシュ政権幹部や亡命イラク人の情報を検証せずに報じて開戦への世論づくりを後押しし,その後,報道の誤りを認めたが,その教訓が十分に生かされているか,疑問もある。

開戦前,大手メディアでは唯一,イラクの大量破壊兵器保有を打ち消す報道を続けたKnight Ridder社のワシントン支局長だったジョン・ ウォルコット氏は『Foreign Affairs』誌への寄稿で,当時のみずからの経験を振り返った。

この中で同氏は,報道を誤らないためには,政治目的に沿った情報を求める権力者ではなく,現実を把握している現場に近い軍関係者や専門家の声を報じることが必要だったと強調。

2022年にアフガニスタンから米軍が撤退した際に,その後の政権崩壊や混乱を予期できていなかったことに当時の教訓が生かされていないことがうかがえると指摘した。

『Columbia Journalism Review』のメディア評論執筆者 ジョン・オルソップ氏も戦争や安全保障に関わる報道が,相変わらず,イラク戦争時に誤った情報を流した国防総省や情報機関の幹部に依存している問題を指摘した。

ロシアのウクライナ侵攻では米メディアの多くが現地取材に基づく独自の報道を続けているが,ロシアやロシアと接近する中国との対決姿勢を強める政権幹部の情報に依存せず,両国の現実を客観的に伝えることができているのかも問われている。

  

メディアの動き 2023年04月14日 (金)

【メディアの動き】東日本大震災から12年,「震災アーカイブ」閉鎖相次ぐ

東日本大震災から12年。各放送局とも3月11日午後2時46分の地震発生時刻にあわせて,特別番組を組んだ。

繰り返し強調されたのが「忘れず語り継ぐこと」。

しかし,そのための重要なコンテンツの1つ,「震災アーカイブ」の閉鎖が相次いでいる。

震災アーカイブは,地域ごとの被害や復興の様子を示す資料や情報をデジタル化しネット上で公開するもので,記録を劣化させず残すことができる。

震災後,自治体や大学などの研究機関,民間団体などが多数の震災アーカイブを設立。それを一元的に検索できるポータルサイト「ひなぎく」を国立国会図書館が整備した。

しかし,国立国会図書館の井上佐知子主任司書によると,「ひなぎく」で検索できた50以上の震災アーカイブのうち,これまでに7つが閉鎖・休止した。

原因については「権利処理の負担」や「新規に収集される資料の減少」などがあげられる。例えば資料を収集した時点で ネット上の公開までの許諾をとっていなかったり,追加される資料が時間の経過とともに減ったりすると,新たに公開される資料が少なくなりアクセス数が減少。

その結果,自治体などからの出資金が減るなどして運営が難しくなるという。

井上主任司書は「閉鎖によって地域の防災教育での利用や震災対応の検証,新たな資料の発掘などが進まなくなる。継続する方法を各地域で探るべきだ」と指摘している。

東日本大震災は,地域ごとに被災や復興の状況に違いがあるだけに,各地域で貴重な資料をどのように後世に引き継いでいくか,見つめ直す時期に来ている。