#371 「ジャーナリズムの危機をどう乗り越える」
メディア研究部(海外メディア) 税所玲子
『事実がなければ、真実には迫れず、真実がなければ信頼は生まれない。信頼がなければ、現実を共有できず、民主主義は失われる』
これは、2021年のノーベル平和賞を受賞者の1人、フィリピンのジャーナリストのマリア・レッサさんが授賞式で述べた言葉です。強権的なドゥテルテ政権を厳しく追及するレッサさんは、政権からの圧力に加えて、SNS上での誹謗中傷や偽情報にも苦しめられています。冒頭の言葉は、メディアが信じられなくなり、事実の重みが揺らぐ世界の行く末への警鐘が込められているようです。
「ジャーナリズムの危機」の現れ方は、国によって異なります。去年8月にはヨーロッパで記者が日常的な暴力にさらされている様子をこのブログで紹介しました。日本は、欧米のような状況に置かれているわけではありませんが、「メディアが伝えるニュースへの信頼」を尋ねた国際調査では、日本は、信頼が最も高かったフィンランドを20ポイント以上下回っています 1)。
「文研フォーラム」3月3日10:30からのプログラムDでは、この問題に日本でどう向き合えば良いのか、考えたいと思います。
議論の出発点として、海外の公共放送の信頼回復にむけた取り組みを取材しました。イギリスからは、BBCの報道局長から大学教授に転じたリチャード・サムブルックさん。アメリカからは、PBSのドキュメンタリー番組の編集長、レイニー・アロンソン・ラスさんに話を聞きました。そしてスタジオには、ノンフィクション作家で日本ペンクラブの元会長の吉岡忍さん、ジャーナリズムやメディア研究が専門の東京大学大学院情報学環教授の林香里さん、NHK制作局で「クローズアップ現代+」などの制作にあたる細田直樹チーフ・プロデューサーをお招きしています。
モデレーターは、トランプ前政権時代アメリカに駐在し、揺れるメディアの状況を取材した河野憲治解説委員長が務めます。
これからのメディアのあり方の糸口を、みなさんと一緒に探りたいと思います。
1) 英ロイター・ジャーナリズム研究所 ”Digital News Report 2021
https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2021
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