文研ブログ

2022年2月14日

文研フォーラム 2022年02月14日 (月)

#367 ニューノーマルの種を蒔く~東京2020パラリンピック放送のレガシーを考える~

文研パラリンピック放送研究プロジェクト 中村美子


 NHK 総合テレビで170時間。東京2020パラリンピック大会は、史上最大の放送規模となりました。1日当たりの放送時間数でみると、オリンピックとパラリンピックはほぼ同じです。大会期間中、研究者の立場を忘れ、一人の視聴者として連日パラリンピックの選手の活躍とそれを伝える放送に夢中になりました。

 文研のパラリンピック放送研究プロジェクトでは現在、放送の送り手研究、受け手研究を行う4人でインクルーシブな社会の構築に向けて放送の役割を調査研究しています。文研フォーラムでパラリンピック放送に関するシンポジウムを行うのは、2017年、2019年に続き3回目です。過去2回は、2012年ロンドン大会を契機にパラリンピック大会の放送が革新的に変化したイギリスの事例を取り上げながら、放送の役割を議論しました。
 今回は、日本に焦点を絞ります。シンポジウムの企画当初から、“放送はかくあるべき”という結論を求めるのではなく、放送の送り手がパラリンピック大会にどうアプローチしたのか、何を伝えたかったのかを知ることを目的にしました。

 シンポジウムの登壇者を紹介しましょう。

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まず、NHKからは樋口昌之2020東京オリンピック・パラリンピック実施本部副本部長です。2013年には早くも東京大会の放送の準備プロジェクト座長となり、2016リオデジャネイロ大会と2020東京大会のNHKのパラリンピック放送を指揮しました。




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次に、衛星有料放送のWOWOWの制作現場から太田慎也チーフプロデューサーです。WOWOWは大会期間中の中継放送を行いませんでしたが、世界のパラリンピアンを取り上げたドキュメンタリー・シリーズ『WHO I AM』を2016年から放送し、テレビ業界やスポーツ社会学の研究者などの間で幅広く注目されました。



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3人目は、30代若手作家の岸田奈美さんです。岸田さんは、NHKのパラリンピック中継放送にゲストとして出演しました。岸田さんの著作を読むと、これまでスポーツとの接点はあまりなかったようです。岸田さんのユニークな視点と発言が期待されます。




そして、今回パラリンピック放送を初めて行った地上民放キー局の皆さんには、事前にアンケート調査にご協力いただきました。シンポジウムの中で、民放のパラリンピック大会への姿勢をご紹介する予定です。


 シンポジウムの前半では、中核的な放送を行ったNHKの取り組みとリオ大会以後の変化を中心としたパラリンピック放送の全体像を、後半では放送にかかわった送り手がパラリンピック放送活動を通じて見出したこと、それを私たちは放送のレガシーととらえ、それぞれの意見や思いを語ってもらいます。

 東京2020大会は、新型コロナによるパンデミック禍というネガティブな状況にあっても、社会の多様性を推進していくポジティブな意味合いを持っていました。どちらにも共通するキーワードは、ニューノーマルです。自国開催となったパラリンピック大会を契機に、放送はこれまでの常識を破り、新しい常識を作ることができるでしょうか。シンポジウムを進めながら、皆さんと考えてみたいと思います。


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