文研ブログ

2020年12月 4日

調査あれこれ 2020年12月04日 (金)

#288 日本は世界で何番目? 文研が担う国際比較調査「ISSP」

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子


突然ですが、下のグラフ、なんの結果だかわかりますか? 日本は57%で過半数ですが、それでも最下位です。

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 答えは、「仕事に満足している」男性の割合です。日本の結果だけをみれば、仕事に満足している人は6割近くいて、それなりに多いようにもみえますが、諸外国と比べると、かなり少ないことがわかります。
 このように、調査データの国際比較を行うことで、国内の調査だけでは把握できない、日本の国際的な立ち位置を知ることができます。
 冒頭で紹介したグラフは、国際比較調査グループISSPInternational Social Survey Programme)が2015年に実施した「仕事と生活(職業意識)」調査の結果です。
 ISSP1984年に発足し、約40の国と地域の研究機関が加盟して、毎年、共通のテーマで世論調査を実施しています。

12042.png                  ISSPに加盟している国・地域(202011月現在)

 日本の調査は、NHK放送文化研究所が担当していて、1993年以降、毎年欠かさず調査を実施しています。これまでに、「政府の役割」「家庭と男女の役割」「環境」「宗教」など多岐に渡るテーマで調査を行ってきました。そうした調査からは、政治や社会、家庭生活、働き方などに対する日本と世界の人々の意識の違いをみることができます。
 ISSPのデータは、各国の研究者に高く評価されています。世界中で様々な調査が行われているなかで、ISSPが評価されるのはなぜでしょう。理由の 1つには、ISSPの加盟国が、科学的な手法に基づいて国民を代表するサンプル(調査相手)を選び、精度の高い調査を実施していることが挙げられます。また、毎年1つのテーマで調査を行い、特定の領域に対する人々の意識を詳細に把握できることや、10年ごとに同じテーマの調査を繰り返し実施することで、10年前、20年前の結果と比較した時系列の変化をとらえることもできます。

 そんなISSPも新型コロナウイルスの世界的な流行により、大きな影響を受けています。今年4月下旬にアイスランドで開催される予定だった年に一度の総会は、ISSPの発足以来、初めて中止されました。しかし、各国間のやりとりは、メールやオンライン会議で活発に行われ、来年(2021年)実施する調査には、コロナ関連の質問を盛り込むことになりました。人類が直面している課題について、世界規模での世論調査を実施し、各国の人々が感染症の脅威にどう立ち向かっているのかを把握することの意義は大きいと言えるでしょう。

 「放送研究と調査」2020年11月号では、英文を翻訳して3年がかりでつくる調査票作成の裏話など、担当者しか知らないISSP調査の舞台裏を惜しみなく(?)紹介しています。ぜひご一読ください!!